約 969,040 件
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/5748.html
531 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/06(日) 13 23 57.63 ID 3UgQHP65o [1/3] ――――須賀京太郎君。 元々女子高の新道寺高校が生徒数確保のために共学となったのが今年から。 その第一期として、最初の男子麻雀部員。 元々、我が校は女子高校。 それに麻雀部での強豪であるということを売りにしている高校だ。 そこに所属する男子部員ということで皆の視線を良く集めた。 そんな子だった、というのが当初、私が抱いた素直な感想だ。 彼は麻雀が強い、というほどじゃない。 むしろ弱い、素人のようなものだった。 聞けば、中学3年の春休みから触れたばっかりだそうだ。 基本的にネット麻雀漬けで、まだ完全に役などは完全に理解してない。 それでも前向きに学ぶ姿勢は彼と同じ一年生や指導に当たる二年生たちからは好意的に捉えられている。 それに、力仕事なんか率先してやってくれる面倒見の良さに目を向けている3年生も多い。 そんな中で、やっぱり目に入るのは彼と皆の姿だ。 ……何時の間にか、仁美のドリンクがもう飲み終わってるのを察知して次のを準備してたり。 部長に付き添って牌譜を運んでたり。 それは先輩に付き従う後輩以上のものじゃない。 そう。 ・ ・ ・ ・ 私の敵は、あいつらだけだ。 姫子「やーん京たろ、ぶちょーに怒られてもーたー!」 京太郎「どわぁ!?」 須賀君の悲鳴。 ああまたか、と部員たちはその光景を見る。 姫子は、部長……白水哩との関係が悪くなるとすぐに泣きついてくる。 ああして、抱きつくようにだ。 からかうのが好きな、明るい少女だと皆は知っている。 だからその行為にも疑問はないだろう。 でも、知っている。 あの困り顔の下は、勝ち誇るような笑みを浮かべている。 独占欲の塊みたいな、一人目の敵。 532 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/06(日) 13 24 26.30 ID 3UgQHP65o [2/3] 煌「鶴田さん、今は指導中なのですが。これは実にすばらくないですよー」 京太郎「ということですので、後で俺が仲介に立ちますから背中に張り付くのは……」 そしてその姫子を窘めるような声。 花田煌は、中学時代にインタージュニアへと出場した高校の部長をしていた。 それ故に指導というのは非常に向いていて、一年生を任せることが多い子。 何時も崩さない笑み。 挫けない、へこまない、諦めない。 それを教えるには最高だと、監督も太鼓判を押している。 だから、だ。 あの子は静かに笑っている。 どんなに苦しかろうと、痛みがあろうと。 笑っていれば、それでいいと。 気づけば爆発してしまう、そんな子だった。 須賀君に向ける好意は、全員同じ。 ただそれが、独占欲なのか。 それとも自虐のためなのか。 それとも……… 【次回に続く】 573 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/01/07(月) 17 09 32.91 ID dVVYrGS5o [1/23] 夢を見た。 そこでは俺は小さな麻雀部の部員。 仲間たちと笑いあって過ごした毎日があった。 県大会を突破。 自分が実際に出場するわけじゃないけど喜び、祝福し、祝い合う。 あの人は、笑っていた。 最後の最後で夢を見てみたい、と。 俺もです。 そう、俺は微笑んでいた。 全国大会優勝。 それに沸くメンバーたち。 俺はあの人に近づく。 あの人は笑った。 俺は笑えなかった。 この部の絆を壊しかねない、秘密が俺とあの人にはあって。 それが怖くて、とても怖くて。 俺は笑うことができないでいた。 俺は麻雀部をやめた。 あの人が学校を去り、翌年には新入部員が大勢入った。 雑用も一年生がやってしまって、何もない。 まるでそれが自分のアイディンティであったように、それをしなくなると居場所が無くなった。 俺は気づけば、あの人の下に居る。 あの人は、優しく俺を抱きしめていた。 大丈夫、と。 私が君の居場所になってあげる、と。 俺は小さく、笑った。 あの人も、大きく笑っていた。 ――――そんな、夢を見た。 588 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/07(月) 19 12 46.25 ID dVVYrGS5o [4/23] 夢から目が覚めると、ふと思うことがある。 俺のどんな記憶がこんな夢を見せているんだろうか、と。 それに対しての答えはない。 一つだけ言えるのは、その夢は何処か怖くもあり、幸福でもある。 そんな、感性によって左右される程度の優しい夢だった。 それだけは、事実だ。 ……まぁ、訳分からなさではどうにもならないのだけれど。 京太郎「うっし、今日も頑張ろう!」 そこまでで、俺は思考を改める。 今、俺は東京に居る。 俺の通う学校、新道寺高校の女子が福岡県代表として全国大会に出場しているのだ。 そんな中に俺が居るのは、まぁ雑用なんだけど。 【8月14日:朝】 新道寺高校麻雀部ご一行様。 そう書かれた札が下がるこのホテル。 朝食、昼食、夕食とを取ることが出来るレストランは最上階にあり、それなりに見晴らしはよい。 その一箇所。 四人用の席に、俺たちは居た。 右を見る。 美子「ん、須賀君、どげんしよっと?」 京太郎「あ、いえ何でもありません」 俺から見て右手には、安河内先輩。 即応性が高く、堅実な手で和了する変幻自在のスタイルを持つ人だ。 続いて、左を見る。 煌「いやー、朝から実に豪勢なことですねー」スバラッ 京太郎「花田先輩は朝からお元気っすね、いや本当に」 俺から見て左に居るこの人は花田先輩。 昔は長野に住んでたらしく、俺も途中まで長野に住んでたこともあり、話は中々に会うフレンドリーな人。 続いて、対面。 姫子「んー?京たろ、どげんしたと?」 この人は、鶴田先輩。 高火力を売りにする白水部長との強力タッグを組む人だ。 その全員が、何でか俺の席に迷わず集まっている。 ……俺の気のせいじゃなければ、相当に空気が悪い。 それに何でだ、という疑問が上がるが、今は朝食の時間。 何もないとは、思うんだけど………。 姫子「んふふ……」 美子「………」 煌「………」 京太郎(く、空気が重てぇ……!) 息が詰まる! 何でこんな晴天なのにここだけどんよりしてるんだよ! 俺なんかしたか? 何もしてないよな!? そう思いながら、バイキングスタイルの朝食を片付けようと箸を伸ばす。 畜生、調子に乗ってこんなに盛るんじゃなかった、とか嘆きたいが今はそんな場合じゃない。 俺が漬物を一つ、口に放り込む。 うん、ほどよい塩気がいい。 これとご飯の甘みが実に合うのだ。 日本人ってやっぱり米だよな。 京太郎「………ん?」 そこで、違和感。 足に何かぶつかったのが分かる。 それは誰かの足。 多分、鶴田先輩の足だ。 その足は俺の足の間に差し込まれ、ちょっとずつ上に……ってえええええええええ!? 京太郎「(え、いやこれは何をッ!?)」 姫子「んー?―――どげんしたと、京たろ?」 くふふ、と笑う鶴田先輩。 その小悪魔のような笑みには悦が入っているのが俺には分かった。 そうである。この人、こうして何かと俺をからかうのだ。 ぶっちゃけた話、この人と部長の“仲”は部内公認のようなものだ。 だからこの人にその気は無いと分かるからこそ、こういった行為がからかいだと俺は断言している。 いやまぁ、ぶっちゃけた話こんな可愛い先輩にいじられるとか何それご褒美なんですけどね!? 京太郎「ごッ、ごちそうさまっす!!」ダッ 姫子「あ、逃げたー」 花田煌:レベル3(病み度1/3、従順度2/6) 安河内美子:レベル3(病み度1/3、従順度2/6) 江崎仁美:レベル1(病み度0/3、従順度0/6) 白水哩:レベル1(病み度0/3、従順度1/6) 鶴田姫子レベル3(病み度0/3、従順度2/6) に変化しました。 623 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/07(月) 20 13 44.39 ID dVVYrGS5o [9/23] 【8月14日:昼】 針の筵から少し時間が過ぎた。 今日は試合が無いため、特訓や休息といった風にそれぞれが分かれている中、俺も手持ち無沙汰だ。 さて、どうしようか……。 京太郎「ん?」 何をするかと思いながら俺がホテルのロビーへ向かう。 そこで目に映ったのは、見覚えのある髪型だ。 二つに分けたおさげ髪。 あそこに居るのは白水部長だ。 部長、それにおさげ。 何故かズキンと頭が痛むが、それを振り払って俺は声をかけた。 京太郎「部長、お疲れさまです」 哩「ん、須賀か」 京太郎「ちょっと散歩で出てきますね」 足を組み、一人ティーカップを傾けている部長に挨拶をする。 少し外に出よう。 そう思ったから告げておいたが、手の先で「こっちに来い」をされる。 それに従い、俺は部長の対面へ。 カップを置き、腕を組む部長の顔は何処か渋かった。 哩「……姫子んこつでちょこっと話ばあっけん」 京太郎「は、はあ……」 聞けば、俺に対する行為はどうにも止まりそうにない、とか。 悪意は無いと思うから相手してやってくれ、とか。 相談あれば乗るくらいは何時でもしてくれる、とか。 お茶を一杯ご馳走になりつつ、俺は結構真摯に聞く。 当然である。 あの人に対抗するには白水部長の力が一番だと俺は知っているのだ。 むしろ学ばなきゃいけなかったにすぎない。 江崎先輩は「何もかんも須賀が悪い」としか言ってくれないし。 安河内先輩はたまに俺をじっと見てくる。 花田先輩は頼りになるけど、あの人の言うこと聞くとは思えないし……。 京太郎「いや本当に、部長は頼りになりますよ……」 哩「……褒めてもなんもいげなかぞ」 ちっくしょ、クールだなこの人。 哩「………」 京太郎「………」 少し、無言が続く。 俺と部長、それぞれが茶を啜る音と店内のBGMだろう静かなピアノジャズ。 そんな空間の中で小さく。 小さく部長が、俺を見た。 視線にあるのは、なんだろうか。 俺を見ている……というより、何か同じものを見るような目だ。 その意味までは分からない。 というより、俺はそんな訓練してないから読めなくて当然だ。 ……はて、何でだろうか? 何で俺は、部長と自分が似ている、というような意味合いの思考をしたんだろうか? 京太郎「むむむ……?」 |. . . .. . | . . . . . ' . . . . . . . ノ. . . .. 哩「………ッ」 |. . . .. . | __/i.. . . ./ |. . . .. . | 圦 - - /〔 . . i| . / ヽ_, |i . . .. .| 八 ` .. イ\. ... . リ . / ___ ヽ(_/ |i . . .. .|__\ . > ├─\_/'´ /〉 ) ( |i . . .. .||//// 〕ニ{´ 〕_斤 y∧// }_.] // ノ (`. 八. . .. .|∨// / . .ト /|/ / \/ ト //{ ´⌒\ ビビクンッ ′ \ . | V_/'. . .Ⅴ_ゝ _/ `ト |  ̄. Ν_ -‐= ´ / へ ノ =‐- _・白水哩のレベルが1から2に上昇しました。 676 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/07(月) 22 12 55.10 ID dVVYrGS5o [14/23] 【8月14日:夜】 京太郎「東京はぁ~雨降り~」 なんとやら。 昔、親父が聞いていた歌にそんな歌詞のものがあったような気がする。 夜になって雨が降り出した中、俺はふと視線を外に向けている。 試合は、明日。 俺に出来ることは何かあるだろうか、ということだ。 全国大会一回戦は一位通過が規定。 負ければ、即終了だ。 部長も、鶴田先輩も、安河内先輩も、江崎先輩、花田先輩も。 今はきっと明日に備えているだろう。 なら俺もさっさと寝ようか。 そうも思ったが、その前にコンビニに行こうと俺は思う。 特に江崎先輩なんかは飲み物の消費が激しいから、前もって仕入れておくのも手だ。 そうと決まれば、俺は傘を掴んでホテルを出る。 歩いて数分。 傘が無かったらずぶ濡れになるな、と思いつつ、傘を閉じる。 そこで見えたのは、また特徴的な髪型。 何処か困ったような、そんな顔をした…… 京太郎「は、花田先輩!?」 煌「すばらぁ!?」 いや、それ驚愕の声なんですか? 689 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/07(月) 22 49 37.30 ID dVVYrGS5o [16/23] 花田「いやー助かりましたよー須賀君。あいにく、散歩していたらタイミング悪く雨に会ってしまいまして」 京太郎「いえいえ、濡れなくて良かったです」 俺は片手に買い物袋、片手に傘を持って花田先輩と並んで歩く。 相合傘、という形で俺と先輩が歩く。 距離も近いし、俺の傘は男物で大きいサイズだ。 ビニール傘買うのは勿体ないと俺が薦めたのだが、やっぱり少しは面積が足りない。 まぁ、選手である先輩を濡らす訳にもいかないので俺は少し肩を濡らすことになっているのだが。 それは必要な行動だと、納得して貰うとしよう。 京太郎「………」 煌「……」 雨音が強い。 もうすぐホテルが見えてくるころだろう。 俺はふと、先輩を見てみる。 ちょこん、と。 まるで小動物のように俺の隣にぴったりと居る姿が目に入る。 なんというか、この人はそういう姿が似合うと思う。 ホテルの前につく。 俺は傘を閉じて、水気を払う。 先輩は申し訳なさそうに、俺を見て口を開いた。 煌「ああ、濡れてしまいましたか?」 京太郎「ああ、大丈夫ですって。これくらいじゃ何もありませんよ」 煌「そう、ですか……須賀君、ありがとうございます。とてもすばらな行為でしたよ」 そう、小さく笑む。 俺はそれに頭をぽりぽりと掻き、頷く。 賞賛の言葉は素直に受け取っておくべきだろう。 俺が頭を下げると、では、と花田先輩が歩きだす。 その背中に、俺は、とっさに声を出す。 京太郎「先輩!」 煌「!」 京太郎「明日!頑張ってください!!あと濡れたのは全然気にしないで平気ですから!」 煌「………!」 俺のかけた声。 何かを受けたのか、先輩は少し俯く。 きゅっと結ばれた唇。 それがゆっくりと、何時もの笑みに。 きゅぴーん、という音と共に、先輩が笑った。 煌「その声援、すばらです!見事、見せ付けてあげましょう!」 先輩が答える。 自信に満ちた、そんな声で。 俺はそれに、サムズアップで返事を返した。 夜が、深くなっていく。 【8月14日:終了】 花田煌:レベル3(病み度1/3、従順度3/6) 安河内美子:レベル3(病み度1/3、従順度2/6) 江崎仁美:レベル1(病み度0/3、従順度0/6) 白水哩:レベル2(病み度0/3、従順度1/6) 鶴田姫子レベル3(病み度0/3、従順度2/6) に変化しました。 706 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/07(月) 23 21 41.07 ID dVVYrGS5o [19/23] 【8月15日:朝】 今日、大会が開幕する。 正確には、俺たち新道寺高校の試合が、だ。 それぞれ、先輩たちは全員が落ち着いてる。 花田先輩なんかはもうやる気満々、という風ですらある。 少なくとも、ここで負けるような先輩たちじゃない。 俺は一歩、前へと行く先輩の背中を見送っていく。 770 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 19 01 30.52 ID YninyfmJo [3/37] 日常生活で、一度見たことがある、という経験はないだろうか。 例えばテレビ番組。 例えば日常の出来事。 例えば初めて会ったはずの人。 そういった物事に接した時、感じる違和感。 霞んだ記憶の中で、確実に知っている。 そういう記憶。 それが既視感だ。 大会会場。 パンフレット片手に会場内を歩く俺にとって、この光景は初めて見る世界だ。 少し顔を強張らせた子、余裕ある笑みを浮かべた人。 負けてしまったのか、涙を流す子。 こういった光景に俺は既視感はありえない。 ただ、不意に。 俺は何かの風を感じた。 誰かとすれ違った時に起こる、風。 それはとても弱いけど、俺に認識させるだけの力があった。 久「……!」 京太郎「……!」 振り返る。 相手も、振り返る。 目と目が合う。 自然と、お互いの顔が合った。 目に有るのは、驚き。 いや、これは…… 771 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/01/08(火) 19 03 45.42 ID YninyfmJo [4/37] ゙l ゙l ゙l ゙l ゙l ゙l ゙l ゙l ゙l ; ゙l ゙l ゙l i ゙l ゙| ゙l `、 イ i ゙l l| ゙| ヽ. ,,、 / ゙l lll ゙l `、ヽ、 / ヽ | || ト `、 `ヽ、 / `、 | |ト | `、 `-、 / `、 | | | `、 ヽ、 `ヽ、..._ ,, 爪 ヽ | / ` 、_  ゙̄`'ー‐‐---------ゥ-‐'' / / ;/, ;;;;;;`、;;ノノ `、 `ー--、......____,,,....,、、‐'' ,/ / / /二,,,、、_z `、 ,,,/ ク // ゙l |ト ハ `、 ,,,// ;" ;;/ / 人 ハ `、 ヽ ,,,,,,,, ∠ニニ=== _ク/ Y \ `、 `ヽ、,,,,,,,, ,,,,,,/ / ハ / 775 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 19 10 28.22 ID YninyfmJo [5/37] 京太郎「―――――ッッッ!!!」 その時、一瞬。 一瞬、誰かの笑みが見えた。 誰の。 目の前の、名前も知らない人の。 見ていたことがある。 そういう認識と共に。 後ずさりする。 自然と、足が動いた。 逃げなきゃ。 この人から、逃げなきゃいけない。 何でだ? 初対面だぞ? 久「―――ねぇ、君……」 京太郎「………は、い……」 一歩、近づく。 “部長”が近づく。 近づいて、俺の顔を覗き込んでいた。 久「―――もしかして君、男子部の出場者かしら?」 京太郎「…………はい?」 久「え、違うの?何か見覚えあるからテレビか何かで見たんじゃないかと思ったんだけど……」 違うのならごめんね。 そう言って去っていく。 俺は小さく息を吐く。 ……あれ、何でこんなに汗をかいてるんだろうか? 778 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 19 25 20.24 ID YninyfmJo [6/37] 【8月15日:昼】 姫子「勝っちきたばい!」 京太郎「お疲れさまです!」 わーい。 そんな感じで部長や俺とハイタッチをするテンション高めな鶴田先輩。 一回戦を見事に突破して皆が少しの余裕を取り戻していた。 そんな空気の中、手を打ち鳴らす部長。 視線が集まると、部長は口を開いた。 哩「今日はよーやった、次も今日のごたぁに行こう」 全員が「はい!」と答える。 さてさて、撤収撤収。 接触対象指定↓2 788 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 19 49 08.04 ID YninyfmJo [7/37] 撤収準備を終え、それぞれが移動を開始する。 部長はこの後の試合を見に、それには鶴田先輩も付いていっている。 江崎先輩、安河内先輩も何時の間にか居ない。 さっき、「何もかんも飲みすぎが悪い」と青い顔してたから、もしかすると先に帰ったのかも知れない。 安河内先輩はその付き添いだろう。 となると。 京太郎「……あれ?花田先輩は?」 そういやあの人が消えている。 あれれ、と思いつつ移動開始。 午後から、俺が今いる待機部屋は他の高校が利用するのだ。 比較的広い広場。 足は自然とそこに向かう。 ふと、聞き覚えのある声が雑踏の中から響いた。 ………すばらって、あの人だよなぁやっぱり。 京太郎「花田先輩!ここに居たんですか!?」 煌「どわぁ!?す、須賀君!?」 和「何方ですか?」 優希「じぇ?」 そこに居たのは、朝出会った人と同じ制服を着た生徒。 俺が困惑したように花田先輩に顔を向ける。 ああ、と先輩は一本の指を天に立て、口を開いた。 花田「私が通っていた中学で麻雀部員だった、片岡優希さんと原村和さんですっ!」 和「原村和です」 優希「片岡優希ちゃんだじぇ!」 京太郎「は、初めまして。花田先輩の後輩の須賀京太郎です……なんか、邪魔しちゃいました?」 煌「いえいえっ!須賀君も私も原村さんも片岡さんも長野に関係してますから、無関係ではないですよー」 和「長野の出身なんですか?あと同学年ですので、そんなに堅苦しくなくても大丈夫ですけど」 京太郎「助かります……いや、助かる。そうそう、俺も長野の出身でさ」 妙に会話が弾む。 うん、なんか同郷の人間に会って会話がつながるってのはいいよな。 ………咲も、今頃は何してんのかなぁ……。 797 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 19 59 33.52 ID YninyfmJo [9/37] 【8月15日:夜】 ………時刻は夜。 気づけばもう外は暗くなりつつある。 夏の昼間は長いというけど、そろそろそれも終わりだろう。 夕日を見ると、少し悲しい気持ちになる。 なんというか、今日が終わってしまう。 夢の終わりみたいな。 今が全国大会だから、そう感じるのかもしれない。 京太郎「部長?」 哩「須賀か」 ホテルの廊下。 俺の部屋がある階にある自販機からの帰り道。 そこで上階に居るはずの白水部長とばったり出会う。 風呂上りなのか、ホテルの備品である浴衣を着ている部長。 うん、やっぱり色っぽい。 しかし、だ。 ここで出会うということは自販機が目的なんだろう。 手に財布も持ってるし。 だが、俺はそんな部長に言わなきゃいけないことがあった。 京太郎「部長、自販機に用ですか?」 哩「そうやけど」 京太郎「売り切れでした」 哩「ほんまか?」 手を振り、俺がアピールする。 事実、売り切れだ。 そういうと、部長が小さく息を吐いた。 哩「そうやったら、外に買いにいかいなかといけなか…」 着替えないと。 そう呟く部長。 俺は少し考えて、部長に提案した。 京太郎「……俺の部屋、来ます?」 哩「………は?」 京太郎「いえ、江崎先輩用のドリンク、俺の冷蔵庫に一杯あるんですよ」 あの人用に今日帰りがけに安売り買ってきたのが冷蔵庫にある。 飲む気は無いけど、こういう場合ならいいだろう。 哩「い、いや、そぎゃん悪い……」 京太郎「まぁまぁ、別に部員用に買ったみたいなもんですから気にしないでも」 哩「ちょ、ちょこっと押さなかでって!?」 809 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 21 12 05.99 ID YninyfmJo [12/37] 連れてきてしまった。 部屋に入り、俺はダンボールの山に手を伸ばす。 部長は後ろに。 気づけば、ゆっくりとベッドに腰掛けていた。 ……俺、勢いでとんでもないことしてないか? 部長を部屋に連れ込むとか。 いや普通に用事があるだけなんだけどさ。 哩「……凄い量やね」 京太郎「いやーはっは。江崎先輩ずっと飲んでますから、全部の試合中」 そのせいで今日青い顔してたけどな。 それは口にしない。 ただ、俺の言いたいことは察したらしい。 何処か呆れてるように溜息を吐いていた。 哩「……仁美にも気ぃばつけるごと言うておくちゃ」 京太郎「お願いします……部長、スポーツドリンクでいいですか?」 哩「ん、よかよ」 ダンボールを退けて冷蔵庫を開き、俺は一本のスポーツドリンクを掴む。 机の下にある小さい冷蔵庫。 意外と冷えててキンキンだ。 冷凍庫の部分に入ってた奴かな、とか思いつつ。 俺は部長にそれを渡した。 手にとった部長は、目を丸くしていた。 哩「ひゃっ、冷たか!?」 京太郎「いや、なんかすいません……」 810 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 21 12 35.41 ID YninyfmJo [13/37] 【8月15日:終了】 花田煌:レベル3(病み度1/3、従順度4/6) 安河内美子:レベル3(病み度1/3、従順度2/6) 江崎仁美:レベル1(病み度0/3、従順度0/6) 白水哩:レベル2(病み度0/3、従順度2/6) 鶴田姫子レベル3(病み度0/3、従順度2/6) に変化しました。 814 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 21 20 35.17 ID YninyfmJo [14/37] 【8月16日:朝】 ……なんでだろうか。 初めて、今日という日を迎えた気がする。 まぁそんなのはもう15年以上前から迎えているわけで。 とりあえずは一日を過ごすべきだろう。 今日は試合なし。 一日フリーだから、何をするにも慌てなくていいだろう。 829 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 21 35 03.67 ID YninyfmJo [16/37] 仁美「んー、須賀やん」チュー 京太郎「お、おはようございます江崎先輩」 もう飲んでるんですか、貴女。 俺はストローを咥える江崎先輩に挨拶する。 ……今日はフリーで、しかも朝のせいか髪の毛の巻きが少し弱い気がする。 いや、知らんけど。 そう思っていると、先輩は口を開いた。 仁美「部長に姫子は?」 京太郎「え、まだ朝食きてないんですか?」 仁美「来てなかよ。丁度よかから呼んできて」 京太郎「了解っす」 俺は頷き、白水先輩と鶴田先輩の部屋に向かうために一度食堂から出る。 朝食終了まであと一時間。 早く起こさないとなぁ。 仁美「すまぬ……」 841 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 21 47 48.27 ID YninyfmJo [17/37] なんか、「すまぬ……すまぬ…」とかいう声が聞こえた気がする。 振り返れば何時もの江崎先輩の姿。 それに首を傾げつつ、俺はエレベーターに乗った。 30秒もしないうちに到着。 部屋の番号は把握しているので、俺は迷わずその部屋に向かう。 ノック。 聞こえるのは、シャワーの音だ。 それと壁越しの声。 えーっと、「ダレヤー?」か? 京太郎「すいません!須賀です!」 姫子「京たろ?ちょこっと待ってね、今開けるけん」 ドアが開く。 そこには白い布。 ………ばすたおる? 京太郎「ファッ!?」 姫子「入ってまっとってええけん、やあね」 そう言って、また風呂場に入ってしまう鶴田先輩。 中から聞こえる会話からして、白水先輩も居るだろう。 ああ、江崎先輩。 貴女が「すまぬ」って言ってたの、これですか。 この噎せ返るような甘い空気ですか。 女性はまだしも男には何倍もの破壊力ですよこれ? 姫子「ぶちょー、今京たろがこのドア開いたら、見えちゃいますね?」 哩「………!」 姫子「んふふ……」 843 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 21 53 14.94 ID YninyfmJo [18/37] ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 姫子「おまたー♪」 哩「待たせてすまなか」 京太郎「い、いえ……」ゲッソリ だめだよ。 待つってだけの行為なのにこんなに消耗しちゃったよ。 狭いところが落ち着くっていうんで部屋の隅で座ってたけど全然落ち着かねぇよ。 まぁとりあえず。 京太郎「早く、メシ行きましょうか」 花田煌:レベル3(病み度1/3、従順度4/6) 安河内美子:レベル3(病み度1/3、従順度2/6) 江崎仁美:レベル1(病み度0/3、従順度0/6) 白水哩:レベル2(病み度1/3、従順度2/6) 鶴田姫子レベル3(病み度0/3、従順度3/6) に変化しました。 850 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 22 00 33.27 ID YninyfmJo [19/37] 【8月16日:昼】 江崎先輩に肩を優しく、ぽんっ、と叩かれて「ようやった」と褒められはや数時間。 もうそろそろ昼時の時間帯だ。 昼はホテルじゃなく、外食を取るようにしているので出かける必要があるだろう。 まぁ、ホテルのレストランでも普通にオーダーすれば食べれるけど。 それはこれからの用事に合わせて変化していこう。 麻雀も生活も、臨機応変なのが大事である。 しかし、試合が無い。 そうなるととことん暇になるものである。 いや、別に俺が試合に出るわけじゃないんだけど。 こう、気分の問題である。 京太郎「買出し……するもん無いか」 飲み物はあるし。 めっちゃあるし。 小腹に入れるものは試合当日に何がいいか聞いて買ってくればいい。 となると、半マネージャーな俺には仕事が無いのである。 いかん、それだと俺が居る理由が無くなる…! 京太郎「仕事……仕事ぉ……」 哩「………なしてそげんえずい顔しとるん?」 京太郎「どわぁ!?部長!!」 後ろから声。 思わず跳ねて俺は振り向く。 そこには腕を組み、呆れた視線を俺に向ける部長の姿。 いや、俺は別に不審者じゃないんだけど慌てる。 えーっと。 京太郎「……部長!仕事ください!!」 哩「なかよ」 えーっ……… 【変動はありませんでした】 862 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 22 19 08.89 ID YninyfmJo [22/37] 【8月16日:夜】 京太郎「安河内先輩、おかえりなさい」 美子「た、ただいま、須賀君」 ホテルロビー。 コインランドリーの帰りにちょうど会った安河内先輩に挨拶をする。 先輩の手には鞄。 出かけていたんだろうか? それにしては制服を着ているのは珍しい。 そんな俺の疑問。 それが顔に浮かんでいたのか、先輩は小さく微笑んだ。 美子「今日は大会ば見とったんだ」 京太郎「大会ですか?」 美子「相手に合わせて打ち筋ば変えるのも大事やけんね」 そう、笑う先輩。 確かに、花田先輩の後に控える次峰や中堅の先輩たちには確実性が求められている。 確実にプラスの結果を出す。 そのための研究、そのための練習だ。 努力の人。 この言葉が似合う人だ。 京太郎「先輩!応援してます、頑張ってください!」 美子「うん、頑張るけんね!」 917 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 23 06 20.58 ID YninyfmJo [27/37] 【8月17日:朝】 第2回戦は18日。 第三回戦、準決勝は21日。 第四回戦、決勝。 それは24日だ。 第二回戦、俺たちは覇者である白糸台とぶつかり合う。 オーダーからして、花田先輩があの宮永照さんの相手。 俺にできること。 それは、とにかくバックアップにすぎない。 でも、きっと。 それが力になるなら………。 935 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 23 21 47.68 ID YninyfmJo [29/37] ミーティング終了後。 俺は気づけば花田先輩の後ろ姿を追っていた。 何処か動きが硬い。 ぎくしゃくしてる、というか。 そう、例えるなら疲れた老人のような空気だ。 何もかもを抱え、足腰が上手く進まない。 そういう、歩み。 俺は追う。 追って、外へ。 視線を向ければ、ベンチに座る先輩が居た。 京太郎「先輩……」 煌「………須賀君ですか、どうしました?」 ぱぁ。 そう聞こえるような笑み。 何時も通りの笑み。 先輩は笑って俺を見る。 ただ、少し、見えた。 びくりと震えた肩。 この人は、不安なのだということを。 王者に挑むということ。 次に繋ぐということ。 それを成すために各高校エースが多く配置される先鋒。 真っ先にぶつかり合うのだ。 その重圧は、俺の想像できないレベルだろう。 こうして笑う先輩だって。 怖いのだ。 自分が負けたらどうしよう、と。 自分のせいで皆が終わってしまったら。 だから俺は笑う。 笑って、先輩へと声をかけた。 939 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 23 30 12.12 ID YninyfmJo [30/37] 京太郎「先輩、明日はよろしくお願いします!……先輩が皆に結果を見せてくれる。それは誰よりも知ってますから!」 煌「……須賀、君……」 京太郎「はい、ほらだからすばらすばら」 にっこりと笑う。 何処か呆けた、でもそんな俺の姿が滑稽なのか。 小さく、先輩が笑った。 煌「ぷっ、く、くく……あは、あっはっはっは……!」 京太郎「そ、そんなに笑います?」 煌「いえいえ―――ええ、須賀君。“貴方”にしっかりと見せてあげましょう!」 京太郎「あはは…(ん?)」 お互い笑いつつ、何か違和感がある。 先輩の言い方。 それはチームのため。 そういう色の声のはずだ。 しかし、これは、なんだろうか。 違和感が拭えない。 そんな俺の思考は中断される。 花田先輩が立ち上がって、瞳を輝かせていた。 煌「さー、王者が何ぼのもんですよ!」 そう吼える。 その意気です、と俺。 ええ、と先輩は頷く。 俺を見て、頷く。 ゆっくりと、視線を外さず。 口を開いた。 煌「ええ――――……絶対に捧げてみせますよ、勝利を」 花田煌:レベル3(病み度1/3、従順度4/6) に上昇しました 958 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/08(火) 23 42 04.66 ID YninyfmJo [34/37] 【8月17日:昼】 こういうホテルのお約束。 それは事件だろう。 名○偵コナ○とか、金○一とか。 そういった推理ものではこういうステージが多い。 ……いや、どっちもやばいな。 ○ナン君とか周りで800人くらい死んでるし。 しかして。 なんで俺がそんなことを言うのか。 それに今、答えよう。 仁美「」チーン 京太郎「し、死んでる……!」 仁美「うちば勝手に殺さなかで!」ムクリ 起き上がる。 何で息絶えてたのか分からない。 しかも俺の部屋の前でだ。 そう考えていると、先輩の手元を見た。 ストローである。 京太郎「………目、逸らさないでください」 仁美「………」 この人、俺の部屋に保管してある飲み物狙ってきたな? 仁美「ち、違う。これはただの吸入道具じゃ」 京太郎「その言い方はもっと不味いです先輩」 27 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/09(水) 00 07 05.53 ID 5ZVVILC7o [1/10] 【8月17日:夜】 明日は最初の山場。 一つ目の山を攻略する必要がある。 眠りが浅い。 気合入れて21時くらいに布団に入ったが、寝付けないでいる。 駄目だな、と俺。 少し夜風にでも当たろう。 気づけば足は外へと向かっていた。 だけど、それは俺だけじゃないらしい。 そこには、部長も居た。 京太郎「部長」 哩「須賀か……って、前もこぎゃんやりとりしたな」 京太郎「ですね」 無言で並ぶ。 俺は眠れない理由の一つ。 それを部長に、聞いてみた。 京太郎「部長……花田先輩、大丈夫でしょうか」 哩「………宮永照、か」 先輩の実力を疑う訳じゃない。 だけど、それでも相手は絶対王者。 心配になってしまう部分はある。 そんな俺に部長は「なんも問題なか」と、短く答えた。 哩「あいつは……花田は飛ばん。心配なんていらなか」 京太郎「………はい」 部長がそう言うのなら、俺はそれに頷くしかない。 俺が頷くと、部長が不意に笑って俺を見た。 哩「須賀、こっちの心配はしてくれなかのか?」 京太郎「え、いや心配してますけど!」 哩「声が上ずってっちょる」 京太郎「うぐぅ」 130 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/09(水) 19 02 22.74 ID BkpBaiMJo [2/41] 【8月18日:朝】 これから、試合が始まる。 そして、周りの雰囲気は普段より一層華々しいといえるものだ。 特に、報道陣の割合も。 応援席の濃密さも今までの中で最大だろう。 それもそうだ。 今日は昨年王者、白糸台高校の試合がある日。 この試合を見に来た誰もが、白糸台高校が勝つところを見に来たのだ。 耳を澄ませば、時折聞こえる他高校の話。 白糸台に続いて何処が勝ち上がるか。 先鋒エース対決は何処が白糸台に続くか。 そもそも次峰に回るのだろうか。 勝手な憶測が渦巻いていた。 その中に、先輩は。 花田先輩は行く。 薄い笑み。 普段通りのまま、あの人は笑っていた。 そんな花田先輩を一回戦で見ていた人が居たのだろう。 誰が言ったか、聞こえない。 ただ、小さく。 小さく、呟きが響いていた。 『可哀想に』 『新道寺は初戦を捨ててるな』 『そんな中で大会に出ても楽しいのかね?』 京太郎「………ッ!」 俺がその声の一帯を睨む。 少しざわめいたような雰囲気が回りを包む。 そんな俺に、背中を向けたまま、声が間に入った。 煌「須賀君」 京太郎「……はい」 先輩が立ち止まる。 俺も立ち止まる。 くるりと、先輩が振り返る。 そこにあるのは、不敵な笑み。 自信に満ちた、笑みだった。 煌「――――行って参ります!」 『先鋒戦終了―――ッ!圧倒的!圧倒的展開となったァー!!』 『王者白糸台!チャンピオン宮永照!!今大会も一片の隙は存在しなぁーい!!』 京太郎「先輩……!」 哩「待て、須賀」 思わず駆け出そうと立ち上がる。 だが、制止の声があった。 部長だ。 部長は静かに、腕を組んで座っていた。 哩「あいつば迎えに行くのは駄目たい」 京太郎「何でですか!」 哩「あいつは飛ばんかった」 短い言葉。 部長が俺を見る。 それは、前も言っていた言葉。 部長が小さく、「美子」と呼んだ。 哩「後は任せた」 頷く安河内先輩。 そして入れ違いのように、戻ってくる花田先輩。 うつむいた顔。 俺が何も言えないでいると、がばっと、顔を上げた。 煌「―――後はお任せしますよ!部長に先輩方!」 哩「ああ、ようやった」 そこにあるのは、笑顔。 ……この人は、強い人だ。 こっちに小さくウインクする花田先輩。 それに頭を一つ、俺は下げることしかできなかった。 143 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/09(水) 19 22 18.25 ID BkpBaiMJo [5/41] 【8月18日:昼】 ――――試合は、終わった。 結果だけ言えば、他高校が飛びで終了だった。 安河内先輩、江崎先輩が大きく稼いでくれたお陰で2位浮上。 俺たちは、準決勝の切符を手に入れた。 だけど、会話はやっぱり少なくて。 先ず、部長と鶴田先輩が席を立った。 続いて、江崎先輩は花田先輩の肩を優しく叩き、外へ。 安河内先輩も何か言いたげにしていたが、江崎先輩に引っ張られて外に出て行った。 ……残ったのは、俺と花田先輩だけ。 時間を見る。 あと少しで、次の高校の利用時間だ。 京太郎「……先輩、そろそろ…」 煌「――――ええ、了解ですよ」 ゆっくりと立ち上がる先輩。 その様子に、俺は少し声を上げた。 京太郎「ほら、先輩!俺たち2位通過ですって!次があるじゃないですか!」 煌「………」 京太郎「部長たちだって怒る訳ないですよ。だからそんなに気にしないで―――」 その時だった。 俺と先輩の、瞳が合う。 先輩の瞳。 そこにあるのは、何だ? それが分からないまま。 先輩が。 ゆっくりと。 その口を。 開く。 煌「―――――京太郎、君に、見せ、て……」 煌の判定 【直後、レベル4判定】 コンマ01~74:次判定へ コンマ75~00:現状況を以ってエンディング(レベル3:2名×コンマ5) 197 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/09(水) 19 57 07.01 ID BkpBaiMJo [10/41] 京太郎「え?」 煌「あ、あう……あ、あぁあ……っ!」 京太郎「先輩!!」 煌「ごめ、なさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!約束、したのに…!」 京太郎「やく、そく……?」 煌「京太郎、君に……ちゃんと、勝つところ……ごめん、なさい……」 ぽろり。 笑顔のまま、涙が一筋目から毀れる。 それが呼び水であったように。 先輩が口を押さえて嗚咽を漏らしていた。 勝てなかった。 駄目だった。 そう繰り返し、体を掻き毟る先輩。 俺の思考が停止する。 何で、そんな。 だって、まだ終わった訳じゃないのに。 負けた訳じゃ、無いのに。 俺は、気づけない。 先輩が言う意味。 それは、俺のために結果を出せなかったということ。 チームの次じゃない、俺個人に。 約束を裏切ってしまったこと。 ただそれが、許せないだけ。 それだけのこと。 姫子「―――――あは」 そんな俺の背中に、聞こえる声。 じゃらりと、鎖の音を鳴らす。 鶴田先輩の声。 え? 振り返る。 そこに見えたのは、鎖。 縛られた部長の姿が、目に入る。 219 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/09(水) 20 08 02.47 ID BkpBaiMJo [11/41] 姫子「『花田の奴が遅い』っゆーて、心配そうな顔しとったんですよ、部長が」 京太郎「え?」 からからと笑う。 鶴田先輩が笑う。 一歩。 俺の前に近づく。 姫子「―――ずるいやなかやろか……なんで花田が京たろと部長の視線ば集めるなんて」 京太郎「鶴田……先、輩……?」 駄目だ。 俺はもう理解できない。 どういうことか、分からない。 気づけば花田先輩が場に伏し、目の前には部長を拘束して頬を赤らめ、俺を見る鶴田先輩。 だけど。 これは。 なんだ。 その視線。 そこにあるのは…… 姫子「うち以外に視線ば向けるなんて、そぎゃん……」 姫子「ずるい」 姫子「許せなか」 そこにあるのは、怒り。 【判明!】 白水哩(百合デレ/束縛) 鶴田姫子(強襲/魔性/百合デレ) 235 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/09(水) 20 15 49.89 ID BkpBaiMJo [12/41] ふらりと、花田先輩が立ち上がる。 一歩、鶴田先輩が前に進む。 花田先輩がドアを掴んだ。 一度、こちらを見る。 唇が、言葉をなぞる。 ご め ん な さ い。 ごめんなさい。 その一言。 そうして、ドアが開かれた。 ドアが開かれた瞬間、外の景色が見える。 見えたのは、安河内先輩。 それを羽交い絞めにする江崎先輩。 扉が、閉まる。 誰かの悲鳴が、響き渡った。 ああ。 そして。 ドアが。 開く―――――。 246 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/01/09(水) 20 20 57.14 ID BkpBaiMJo [13/41] , ( ) /⌒''⌒) ,,゜ ' ,,,,,,, ( !' ( ) ヽ ';''' ''`` 。 τ' / .; )/ 。 ' 、 ; 。 `'''`~''・ ' ` f''`⌒( ,,,, ! (',,,,、 ,,,,,、... ,!,,,、( / τ ノ ) 。 ! `! 、 .、 ! ( ノ `! o ( τ ( ,,;,;,、; 。 ゜ (/ ⌒・ . ・、; ;;.;`` '' ,,、.. // ノ' //'''`'`'` ` ..,,.. _,,,.、 ・ ,, ... ・.. π /; (,.,.(;;; ( ,,., ・っ ;,;;( ) ;. c ── '`''' ;'' ) / '''''` ` '` ⌒ ` !. τ'' `` τ ! )/,,,,, γ '`'`` ! ( 冫 `'`' 、, ' ` ,,,, ! ノ ・ :' ' ;(,,,,,,,、 -ー''''`'`''''''''" 263 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/09(水) 20 27 04.84 ID BkpBaiMJo [14/41] 悲鳴。 赤。 救急車。 サイレン。 赤。 赤。 ビル。 屋上。 フェンス。 拘束。 喪失。 敗退。 赤。 赤。 赤。 赤。 赤。 赤。 赤。 赤。 赤。 赤。 あか。 赤。 【エンド:赤色の結末】
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/4170.html
h42-01 京咲優和 h42-02 京憧 h42-03 京洋絹 h42-04 京玄 h42-05 京咲・白糸台 h42-06 照菫 h42-07 哩 h42-08 京・清澄 h42-09 京塞白 h42-10 京・永水 h42-11 京春 h42-12 京・宮守 h42-13 淡 h42-14 京・白糸台 h42-15 京明 h42-16 京・多数 掲示板ネタ h42-17 京・多数 掲示板ネタ h42-18 京・白糸台 h42-19 京洋絹 h42-20 京灼・阿知賀 h42-21 京咲玄絹明星 h42-22 京哩 h42-23 京哩 h42-24 京哩 h42-25 京哩 h42-26 京シノ h42-27 京シノ h42-28 京春霞初 あかちゃんプレイ h42-29 京咲 h42-30 京穏 h42-31 京菫淡 h42-32 京成まこ春 なるまこ愉快な懺悔室 h42-33 京・宮守 h42-34 京咲久 h42-35 京塞白 h42-36 京シノ h42-37 京春 h42-38 京春 h42-39 京竜怜・嫁田ハギ一太 h42-40 京嫁田 嫁田がもし女だったらVer h42-41 京優咲 h42-42 京春良 h42-43 京胡 h42-44 京春・清澄 h42-45 京巴・永水 h42-46 京春 本音京ちゃん h42-47 京・清澄 h42-48 京透ハギ h42-49 (他カプあり.閲覧注意ですのだ)京咲・シノリチャ h42-50 京・白糸台 3年生京太郎 h42-51 (他カプあり.閲覧注意ですのだ)京咲・シノリチャ h42-52 京初 h42-53 春 h42-54 京・白糸台 h42-55 京春・多数 掲示板ネタ h42-56 京春 h42-57 京・多数 h42-58 (他カプあり.閲覧注意ですのだ)京咲・シノリチャ h42-59 京・永水 h42-60 京初・永水 h42-61 京霞 h42-62 京明星・永水 h42-63 京初霞明星 h42-64 京憧久 h42-65 京・清澄 h36-64の別バージョン h42-66 京・白糸台 h42-67 京初 h42-68 京小 h42-69 京洋絹 h42-03の続き h42-70 京・白糸台 h42-71 京明星・永水 h42-72 京竜怜
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3397.html
京太郎「誰かを抱きしめたい」 京太郎「抱きしめられるのもいいけど抱きしめたい」 京太郎「むしろこの際抱きしめられてもいいや」 京太郎「憧ー!」 憧「いやぁぁぁぁぁぁあああ!」ゲシッ 京太郎「ぐほぁっ」 京太郎「いきなり腹蹴るなよ~」 憧「そっちがいきなり抱き着いて来るからでしょこのヘンタイ!」 京太郎「俺が変態……だと……?」 憧「そーよ!いっつも宥姉とクロの胸ばっか見て!ヘンタイ!スケベ!バカ!」 京太郎「いや、待ってくれよ憧」 憧「ヘンタイ!スケベ!バカ京太郎!」 京太郎「二回も言わなくてもよくねえか!?」 京太郎「ああそうだよ、確かに宥さんのおもちも玄さんのおもちもグレートさ」 玄「灼ちゃん、二人とも喧嘩してるよ」ヒソヒソ 穏乃「赤土先生がいないから灼さんが止めないと」ヒソヒソ 灼「わかった、善処する」ヒソヒソ 灼「憧、京太郎……」 京太郎「それでも俺は憧が好きだ!大好きだ!」 憧「な、な……」 京太郎「でも酷いじゃねえか!付き合ってから半年経つって言うのにキスすらしてくれないなんて」 灼「え」 憧「それは……恥ずかしいから……」 京太郎「だから今日は抱き着いて俺が恋人であることを認識させようと思ったんだよ!」 京太郎「なのに何だよ……昼飯のカレーうどん吐きそうだよ……」 憧「ウソ……私……」 灼(……そっか、京太郎とキスはまだしてないんだ) 灼(そっか……) 憧「面と向かってじゃ恥ずかしくて、この間京太郎が寝てるときにしちゃった……」 灼「」 京太郎「えぇぇ……」 灼「」 優希「さっさと私を抱きかかえるんだじぇ」 京太郎「でもよ……」 和「」ジトッ 京太郎「なあ和?俺は優希を持ち上げてロッカーの上を掃除させないといけないんだ」 京太郎「だから一回くらい見逃してくれてもいいだろ?なっ?」 和「嫌です」 和「たとえゆーきでも京太郎君に抱きしめられるのは私だけです!」クワッ 京太郎(付き合ってわかったけど……) 京太郎(まさか和がこんなに独占欲が強いとは思わなかったんだぜ!) 須賀「優希」 片岡「ん?」 須賀「はい」スッ 片岡「やんわりと両腕をひろげて……ハッ! さては貴様、とうとう私の愛を受け止める気になったな!?」 須賀「来いッ!!」 片岡「うぉー!」ドーン! 須賀「くぅ……そいっ!」ギュウゥ! 片岡「ふぁっ…!?」 片岡「なっ、なに本当に抱きついてるんだお前!」 片岡「ここは私の体当たりに蒸せて、私が『私の愛を受け止めるには修行が足りなかったようだな』って笑うところだじぇ!」 須賀「はあぁ~……優希のにおいがする」スンスン 片岡「ギャ──!! 京太郎が壊れたじぇ! ついに京太郎が変態にぃ──!!」 須賀「はあぁ…優希って小さいけどあったかくて気持ちいいんだな……このまま抱き枕にしてぇ…」 片岡「ちょっ、ちょっと京太郎…はなせ、いい加減はなせぇ…!!」 須賀「だれがはなすかっ! こんなかわいい生き物!!」 片岡「ふぇっ」 須賀「───」 片岡「…きょ、京たろ、待って、待つんだじぇ。そっちは…そっちはベッドがあるだけ……きゃわっ!」 須賀「決めた。もうこのまま寝る」 片岡「ふえぇぇ…!?」 京太郎「おーい、マホ。ちょっとこっちこい」 マホ「なんですか、京太郎先輩」タタタ ギュー マホ「わわわ//なんで抱きしめるんですか京太郎先輩」 京太郎「マホはあったかいなー」 ナデナデ マホ「うぅ~恥ずかしいですよ」 京太郎「やっぱりマホは最高だぜ!」 咲「いたた……もう京ちゃん抱きとめるならしっかり抱きとめてよ」 京太郎「いきなり階段から落っこちてきたくせに何言ってやがんだ」 京太郎「本読みながら歩くのは危ないからやめろって言っただろ?」 咲「でもこの本面白くて……」 京太郎「お前の本好きも大概だもんな、次からは注意しろよ」 咲「うん!」 ウワー ダイタンー ウワァ コーホー 京太郎「なんか周りから見られてるような……」 咲「京ちゃん……そろそろ離れてくれない……かな」 京太郎(こっ、これは俺が咲を下から抱きしめている状態!) 京太郎(こんなのを麻雀部の誰かに見られたら……!) 久まこ和優希「」ジーッ 京太郎(もう見られてたぁぁぁぁ!) 久「あっ、あの人って龍門淵の……」 京太郎「龍門淵?」 まこ「ああ、執事さんじゃの」 京太郎「えっ、ハギヨシさん!? ホントだ、おーいハギヨシさーん!」ダッ まこ「ちょ、京太郎!?」 ハギヨシ「おや、京太郎君?」 久「まあついでだし、挨拶して……」 京太郎「ハギヨシさん!」ギュッ ハギヨシ「えっ」 久「ちょっ!?」 まこ「何やっとるんじゃあいつは!」 咲「きゅふっ!?」 京太郎「久しぶりですね、ハギヨシさん!」 ハギヨシ「あ、あの、京太郎君……」タジッ 久「……子犬みたいね」 まこ「……おい、どうすればいいんじゃ」 咲「本人同士が良ければ、いいんじゃないでしょうか」カン 京太郎「いや、俺も手伝……」 玄「ほらほら、お姉ちゃんとおこたで待ってて」 京太郎「むう」 宥「えらいね、京太郎君」 京太郎「追い出されちゃいましたけどね」 宥「それでも凄いよ、私なんてこたつから出る気皆無だもん」 京太郎「言い切りますか」 宥「うん」 京太郎「……さいですか」 宥「……ねえ京太郎君」 京太郎「ん、どうしました?」 宥「背中、寒いな~、なんて……」エヘヘ 京太郎「……今行きますよ」 宥「ありがと、京太郎君」ニコ 京太郎(この笑顔に逆らえる訳がない……!) 京太郎「じゃあ、後ろ座りますよ」スッ 宥「うん」 京太郎「どうですか、温かいですか?」 宥「う~ん、もう少しくっついてみて?」 京太郎「もう少しって、言ってもですね……今もう限界でして」 宥「ぎゅってしてくれなきゃ、あったかくない……」 京太郎「ぎゅ、ぎゅっと、ですか?」 宥「うん。ぎゅうっと」 京太郎「では……失礼して」ギュッ 宥「んっ」 京太郎「ぎゅって、しましたよ、宥さん」ギューッ 宥「うん、あったかいよ、京太郎くん」 京太郎「あ、温かいですね」 宥「うん、あったか~い」 京太郎「それと、やわら……」 宥「柔?」 京太郎「いえ、何でもない、何でもないです!」 京太郎(落ち着け、落ち着け須賀京太郎……これしき、苦難ではない……松実家でのあれやこれやのToLoveるに比べれば!!) 宥「ん……ちょっと座り直すね」スリスリ 京太郎「ふおぉっ!?」 宥「あっ、ごめんなさい京太郎くん。どこか踏んじゃったかな?」 京太郎「イエイエ……ナンノモンダイデスカ?」 宥「ごめんね、私お尻大きくて」 京太郎「大きくないですよ! 大きくなってなんかないですってば!!」 宥「あ、ありがとね。京太郎くん」 京太郎(うう……やべえよやべえよ。これ絶対アウトだよ……) 宥(あったかい……あったかいけど、何だろう) 宥(京太郎くんとこうしてると、あったかいというより、むしろ熱く……) 京太郎「宥さん」 宥「きゅ!?」ビクッ 京太郎「だ、大丈夫ですか?」 宥「う、うん。ええと、それで何かな?」 京太郎「リモコンどこにあるか知らないかな、と。ほら、ニュース番組になったので」 京太郎(何とかして気を紛らわさねば……!) 宥「えと、どこかな……あれ、こたつの中?」ゴソゴソ 京太郎(ちょ、また刺激が……!)ビビクン 玄「あーっ! 二人ともー!」 京宥「!?」ビクッ 玄「なんか楽しそう! ズルいのです!」グツグツ 京太郎「よし、落ち着くんだ玄さん。まず落ち着いてその鍋を鍋敷きの上に置くんだ」 宥「楽しいかは分からないけど、あったかいよ」 京太郎「とりあえず食器の支度に移りましょうか」スクッ 宥「あっ……あったかくない」シュン 京太郎「宥さん……あ、後でまたしますから」 玄「ふ~む」 京太郎「玄さん、支度済みましたよ。……玄さん?」 玄「ねえ京太郎くん。そう座ってると……背中、寒くない?」 京太郎「あの、玄さん?」 玄「後ろから、抱きしめてあげよっか?」 京太郎「あの…照さん動けないです…」 照「んー?」ギュー 京太郎「いやだかr」 バーン(ドアを開ける音 淡「あー!!キョータローがテルーに抱きついてるー!!」 京太郎「淡!!いやこれは、照さんがいきなり…」 淡「ずるい!!」 京太郎「」 淡「私もキョータローに抱かれたい!!」 京太郎「待て!!その発言は、誤解を招く!!」 淡「ねぇ、テルーそこどいてよー」 京太郎(スルーかよ…) 照「だめ、京ちゃんは私のもの」 淡「むーじゃあ、私の全部は」 淡「キョータローの物だよ!!」 京太郎「」 カンッ 京太郎「ふふふ、俺も遂に会得しましたよ。“ステルス探知レーダー”を!」 智美「ワハハ、単に匂い嗅いでるだけだけどな」 京太郎「感じる……感じるぞモモ! 確かにお前の存在を感じる!」 モモ「……」 智美「ワハハ(まあ間違ってはないけどなー)」 京太郎「むう……こっちか? それともこっち……?」 モモ「……」スス... 智美(ん? モモの方から……) 京太郎「そこだ!!」ムギュウッ モモ「んんっ!」ビビクン 京太郎「って、モモ!? こんな近くに!!」ギューッ モモ「何するっすか京太郎? 最低っすよ」ジーッ 京太郎「ご、ごめん、まさかこんなに近くにいるとは……」ギュー 智美(どっちか離れるか突き放すかしないのか……) モモ「本当変態っすね、京太郎。これは責任取ってもらうしかないっすよ」 京太郎「取る! 取るから!」ギューッ モモ「本当っすか? 京太郎のことだから怪しいっすね」プイッ 京太郎「モモ! 俺はお前をっ! 愛してるんだ!」ギュムーッ モモ「京太郎……」ジュンッ 智美「勝手にしろよ(ワハハ)」 カン 仁美「……」チュー 京太郎「……」ソワソワ 仁美「京太郎、どげんしたと?」 京太郎「えっ、いや、何でもないでげす!」 仁美「何その語尾」 京太郎「いえいえ、お気になさらず」 仁美「んむ?」 仁美「……」チュー 京太郎「……」ジーッ 仁美「……京太郎、はっきりせんね!」 京太郎「ひっ!?」ビクッ 仁美「男らしくなかとよ」 京太郎「いえ……あの……お願いしたいことがありまして」 仁美「何ね?」 京太郎「ひつ……仁美先輩、もふもふさせて下さい! オナシャス!」 仁美「……よかよ」 京太郎「ですよね、すみませ……って、よかですか?」 仁美「よかよか。よく言われるばってん、触らせろて」メェー 京太郎「なるほど。それでは失礼して……」ギュッ 仁美「ちょっ、なして抱きつくと!?」ビクッ 京太郎「そりゃもふもふする為ですよ!」ギュムギュム 仁美「あ、頭だけでよかとやろ!?」 京太郎「仁美先輩! もふもふ、もふもふ!」カリカリモフモフ 仁美「ふわぁああああ!?」ビビクン ……… 哩「あれはまさか……」 姫子「あの二人もオカルトに!?」 美子「いや、そんな訳……」 煌「仲良きことはすばらですね」ウンウン 京太郎「おい淡」 淡「ん?どうしたのキョータロー」 京太郎「どうしたもこうしたも無い」 京太郎「何で俺の膝の上でお菓子食ってんだ!!」 京太郎「食べカスが落ちてるだろ!!これ掃除すんの俺なんだぞ」 淡「えーだってキョータローずっと本とにらめっこしてるだもん」 京太郎「にらめっこじゃなくて麻雀の勉強だよ」 淡「あーキョータロー麻雀弱いもんねー」 京太郎「うっせ、ほっとけ」 淡「でもキョータロー」 京太郎「ん?」 淡「キョータローは幾ら努力しても幾ら勉強しても幾ら打っても私たちに届かないよ?」 淡「それは、理解してるよね。キョータローは麻雀以外完璧なのに何でそんなに頑張るの?」 京太郎「ああ…それは嫌ってほど理解もしてるし納得もしてる」 淡「じゃあ何で…」 京太郎「それが諦める理由なんかにならないからだ。俺はずっと人の後ろを見てたからさ」ギュ 京太郎「こんな風に追いつきたいんだ」 淡「…るい…」 京太郎「え?」 淡「ずるい…」 淡「そんなこと言われたらもっと好きになっちゃうじゃん…」 京太郎「女の子を抱きしめたいな」 咲「京ちゃんいきなりどうしたの? 頭、大丈夫?」 京太郎「俺はいたって正気だよ」 京太郎「むしろ。怜悧な頭脳の理性と理論がなければこんなことは言えない」 咲「へぇ~」 咲「けど京ちゃん。抱きしめたいって言っても女の子は京ちゃんが思ってるよりとっても華奢で繊細なんだよ?」 咲「京ちゃんはお馬鹿さんだから知らないだろうけど」 咲「京ちゃんみたいな同年代でも比較的恵まれた体格のジャイアントバーバリアンみたいなのに力一杯抱きしめられたら」 咲「女の子は壊れちゃうよ? その匙加減は大丈夫なの?」 京太郎「なるほど」 京太郎「じゃあ俺はどうすればいいんだ?」 咲「そこで私に提案があります」 京太郎「ほう、その心は?」 咲「本番に備えて私で練習してみるっていうのはどうかな?」 京太郎「バカ野郎!」 咲「!?」ビクッ 京太郎「咲を練習台だなんて、そんなこと出来るわけないだろ!」 京太郎「咲は、俺にとって特別な……」 咲「良いんだよ?」 京太郎「ふぇ?」 咲「京ちゃんの為なら、私、良いんだよ? むしろ私にとっては本番といっても過言じゃないよ」 京太郎「なんて、なんて良い子なんだ……」ブワァ 京太郎「今時こんなええ子おるんかい!?」 京太郎「わかった。じゃあ俺は咲を抱きしめよう。それこそ限りなく本番に近い気持ちで」 咲「さっ、京ちゃん。抱きしめて」 京太郎「え? 今ここで?」 咲「思い立ったが吉日だよ」 京太郎「なるほど」 京太郎「では」 咲「改めて」 京太郎「うおおおおお咲いいいいいい!!」ギューッ 咲「京ちゃあああああああああああん!!」ギューッ カン シロ(ぐでーん) 京太郎「・・・シロさん、掃除の邪魔なんでどいて欲しいんですけど」 シロ「ダルいから嫌」グデーン 京太郎「・・・・・・」 シロ「どうしてもどいて欲しければ」グデーン シロ「実力で排除してみたまえ」グデーン 京太郎「・・・・・・じゃあ、遠慮なく」ヒョイッ シロ「まさかのお姫様抱っこ」ウデノナカデグデーン シロ「これはダルくない」ギュッ 京太郎「気はすみましたか?」 シロ「済んでない」 シロ「だから今日は一日このままで」ギューッ カン 京太郎「おーい、起きろー」 シロ「ん……」 京太郎「朝だぞー、諦めて布団を置いて投降、もとい登校しなさーい」 シロ「ダル……寒……あと五時間」 京太郎「確かに日が高く登って、少しは暖かくなるかもしれないけど……」 シロ「あと五ヶ月……」モゾッ 京太郎「確かに暖かくなるけども! シロ姉、いい加減諦めろ!」 シロ「ん……京太郎、ちょっとこっち来て」 京太郎「はいはい、何?」 シロ「隙ありっ」ガバッ 京太郎「へっ? ちょっ、シロ姉、いきなり何を!?」 シロ「……ん、抱きつけば暖がとれるかな、と」ギュッ 京太郎「何でこういう時だけ俊敏なんだよ! 」 シロ「んー……」スリスリ 京太郎「ちょっ、シロ姉……いい加減に」 シロ「……京太郎、反応しないの?」 京太郎「へっ?」 シロ「当ててるのに」 京太郎「故意だったのかよ!」 シロ「うん、まあ恋かな」 京太郎「……いいから、離れて下さい。学校行きますよ」 シロ「違う。学校行くためにくっついた」 京太郎「?」 シロ「動かない布団にくっついてたら学校行けないけど、京太郎にくっついてたら大丈夫」 京太郎「……それが、布団の中で長考して出した結論?」 シロ「うん」 京太郎「……よし、シロ姉。後悔しても知らないからなぁっ!!」ダッコー シロ「温かくて……フットーしそう」 カン 京太郎「シロさん、こたつで寝てると風邪引きますよ」 京太郎「そろそろ塞さんたちも来るんで雀卓座りましょ」 白望「暖かくないからイヤだ、あとだるい」 京太郎「暖房つけて二十分経ってるから暖かいですよ」 白望「じゃあ京太郎が運んで」 京太郎「自分で立ってくださいよ」 白望「だるい、背中から抱きしめて運んでくれた方がだるくない」 京太郎「俺の方がだるいんですが……」 白望「京、みかん食べさせて」ダルーン 京太郎(冬休みの間宮守で麻雀修行をしてこいと部長に追い出されてきたけどもううんざりだ) 京太郎(豊音さんは身長が近くて嬉しいのか、シロさんと胡桃さんの真似して俺で充電しようとしてくるし!) 京太郎(エイスリンさんは俺の全身描こうと服脱がせてくるし!) 京太郎(胡桃さんは……まあ置いておいて) 京太郎(塞さんは何もかもがエロい!)」 京太郎「(椅子に座る動作も、落ちた牌を取ろうとしゃがむ動作も、窓の外を雪を眺めようとするときでさえ抜群にエロい!) 京太郎(腰・尻にまつわるすべての動作がエロい!)」 京太郎「(あとこたつに入ったときにみかんの筋までしっかり剥いて俺に食べさせようとする)」 京太郎「(その途中でハッと顔を赤くして中断するのも可愛くてなんか惹かれるし!) 京太郎(そして最後はこの人だよ……) 白望「…………」 京太郎(まずは、鶴賀の東横さんに少し劣るくらいのおっぱい!)」 京太郎「(前におんぶしたときにめっちゃ柔らかかったから捨てたもんじゃあない!) 京太郎(次にシロさんの省エネ主義が生み出したわがままな太もも!)」 京太郎「(宮守と永水の人たちの海水浴の写真を見たときは水着姿と相まってじつにすばらしいものだった!) 京太郎(なんだろうなぁここまでエロい身体してるのに本人がこれだから全然色気が無いんだよなぁ) 京太郎(……ともかく!今日こそはもう我慢ならん!) 京太郎(俺が男だということを女子高という花園で育ったゆとりの女王様に教えてくれよう!) 京太郎(最初は抱きしめながら胸をわしづかみにしてやる!)フニッ 京太郎(おぅふ、なんだこの柔らかさ……しかもブラジャーしてないだろこれ)フニフニ 京太郎(これなら流石のシロさんも動じるは……) 白望「……早く動かして」 京太郎(ずだったのにぃぃぃ!)フニフニ 京太郎(動じない!?おっぱいシャツ越しにわしづかみにされてるのに!?)フニフニ 白望「京、痛いからはやく運んで」 京太郎「うっす」フニフニ 京太郎(どうすれば……どうすればシロさんを……)フニフニ バタム 塞「おっはよー!」 塞「よーっす京太郎くん、調子はど……う……」 京太郎「」フニフニ 白望「」ダルーン 塞「」ピッピッピッ 塞「あ、すみません目の前に変態がいるんです……はい、はい……宮守女子高校麻雀部です、お願いしまーす」ピッ 塞「……あと十分くらいかかるらしいから、それまで堪能するといいよ」 京太郎「ごめんなさい許してください我慢できなかったんですなんでもするんでホンットお願いします」 塞「まあ冗談なんだけどね」テヘペロ 一瞬、塞さんが天使に見えた よくよく考えれば事の発端が塞さんたちであったのを思い出し、その幻想を振り払い 俺は狂気のあまり塞さんに襲いかかった 抱きしめて塞さんの匂いを嗅いで押し倒そうとしたそのとき、背後にいたシロさんに当身を喰らわされた 俺の目の前は真っ暗になった 涙目の塞さんが天使に見えた 白望「京、みかん」 京太郎「なんだ夢か」 カン 京太郎「誰かを抱きしめたい」 京太郎「抱きしめられるのもいいけど抱きしめたい」 京太郎「むしろこの際抱きしめられてもいいや」 京太郎「…いや、でもやっぱり抱きしめたい」 京太郎「ということで抱きしめてもよろしいでしょうか?」 和「喧嘩売ってるんですか?」 京太郎「…だめ?」 和「駄目に決まっているでしょう。むしろどうしていけると思ったんですか?常識的に考えてください」 京太郎「あー…駄目かー…今年最後の希望だったのになー」ゴロゴロ 和「今年最後…ですか?」 京太郎「んー。実は咲とかタコスにも言ってみたんだよ。そしたら…」 ~~~~ 咲「抱きしめっ…!?そういうのは将来を誓い合った恋人同士がすることでしょ!?」 咲「そりゃ私達は幼なじみだからそれぐらいの距離ではあるかもしれないけど恋人同士じゃないんだからね!」 京太郎「そっかぁ…変なこといってごめんな咲…咲?」 咲「…でもそうなるのはやぶさかではないというか京ちゃんがどうしてもって言うなら別に…」ボソボソ 京太郎「咲ー。おーい咲ー。聞いてないのかー?」 ~~~~ 京太郎「ってなった」 和「それもうゴール目の前だったんじゃ」 京太郎「え?なんだって?」 和「調子に乗るとぶっ飛ばしますよ」 京太郎「ごめんなさいでした」ペッコリン 和「まったく…それでゆーきの方はどうだったんですか?」 京太郎「あー…あいつは…」 ~~~~ 京太郎「なぁタコスー。抱きしめても良いかー?」 優希「じぇっ!?」 京太郎「もしくはお前が俺に抱きつくのも可だ」 優希「ふむ…つまりお前は私のこのないすばでーにメロメロになってしまったということだな!」 京太郎「いやそのりくつはおかしい」 優希「そうかそうか…それは素晴らしいことだ!よし!記念にタコスを十人前買ってこい!」 京太郎「何の関係があるんだ…?」 優希「いーからとっとと買ってこんかーい!」ウガー 京太郎「たくっ…しゃーねーなー」タッタッタ 優希「…」 シーン 優希「京太郎が…私に…メロメロ…」 優希「…」 優希「夢…じゃないよな…」ツネー 優希「痛いじぇ…つまりこれは現、実…」 優希「…」 優希「じぇ~…」ヘナヘナ ペタン ~~~~ 京太郎「買って戻ったら気絶してたから保健室に運んでそのままうやむやになってた」 和「…ちょっと頭痛がしてきました」 京太郎「…抱きつくか?」 和「何でそうなるんです…」 京太郎「噂では半分でも優しさがあればどんな痛みも和らぐらしいからな」 和「この頭痛は比喩ですしそもそも効くのはもう半分の構成成分ですから。優しさが痛みに効くなんてそんなオカルトあり得ませんから」 京太郎「ちぇっ、つれないやつめ」 和「これが私ですから」 和「コホン…それで、染谷先輩や部長には聞いてみたんですか?」 京太郎「染谷先輩には聞いてはみたんだけどな…笑顔で肩をポンと叩いてきて『…今日は早く帰って温かくして寝んさい』って言われた」 和「染谷先輩は優しいですね」 京太郎「ああ、聖人君子だよな」 和「…それで?」 京太郎「それでって…」 和「部長にも聞いたんでしょう?どうだったんですか?」 京太郎「…お前それ聞いちゃう?」 和「まあ…ここまで聞きましたし」 京太郎「お前…部長だぞ?俺にいっさいの連絡なく合宿に向かった部長だぞ?」 京太郎「そんなこと聞いたら間違いなくぎりぎり出来るか出来ないかの条件をふっかけてきたり延々とパシらされたりした挙句」 京太郎「いざその時になったら『あ、ごめんね~?考えるとは言ったけどするとは言ってないのよね~☆』」 京太郎「とかさらっと言ってくるぞ多分いや絶対」 和(…ないとは言えません) 京太郎「ていうか聞いただけでなんか脅迫されそうだし聞くに聞けな」ピリリリリ 和「?」 京太郎「あ、すまん。俺の携た」ピタッ 和「どうしました?」 京太郎「…部長からだ」 和「」 京太郎「…すまんちょっと外で電話してくる」ガラララ 京太郎『あ、もしもし須賀です。どうも部長……え?年明けで買ってきてほしいものって……』 京太郎『その日休みですよね?その時しかないからってそれ部活には関係しな……』 京太郎『待ってそれなんで知って……やめて!わかりましたから!買いに行きますからそれだけは!』 ガラララ 京太郎「…」ルールー 和「…ご愁傷様です」 京太郎「あ、うん…」 和「はぁ…わかりました」 京太郎「え?」 和「須賀君の年始早々不幸せなようですし…せめて年末は幸せになれるように、その…抱きしめてさしあげようかと…思いまして」 京太郎「…マジ?リアリ?ドッキリじゃないよね?そこからカメラ出てきたりとか訴えられたりとかしないよね俺?」 和「…イヤならしませ」 京太郎「いやいやいやいやイヤじゃないですどうかお願いします!」 和「なら最初から素直にそう言ってください」 京太郎「あー、うん…お願い…します…」 和「じゃあいきますよ?」 京太郎「ど、どんとこい!」ドキドキ 和「えい」ギュッ 京太郎「!?」ビクッ 和「ひゃっ!?…どうかしましたか?」 京太郎「あ、いや、ごめん…ちょっと、いきなりだったから…びっくりして…」 和「そうですか…あまり動かないでくださいね?こういうことをするのは初めてなのでよくわからなくて…」 京太郎「そ、そうか…すまん…」 和「いえ…」 ……… 京太郎(だんだん慣れてきたのか少しずつ落ち着いてきた…) 京太郎(座ってる後ろから抱きついてきてるから…なんて言うか母さんの腕の中みたいに温かいんだよな…) 和「須賀君、これぐらいでいいんでしょうか?」 京太郎「…」 和「…須賀君?」 京太郎「…あ、ああ、すまん…ちょっと心地よくてぼーっとしてた…」 和「そうですか…もうそろそろいいですか?」 京太郎「あぁ…すまん、やっぱりもう少しだけ頼む…」 和「わかりました、少しだけですよ」ギュッ… 京太郎「さんきゅーな…」 ……… 京太郎「…っ…っ」ウツラウツラ 和(須賀君…さっきから寝そうになってますけど…もしかして寝不足なんでしょうか?) 京太郎「…すぅ」 和「あ…」 和(寝てしまった…みたいですね…) 京太郎「すぅ…すぅ…」 和(…須賀君の髪の毛って普段は堅そうなのに…あらためて見ると柔らかそう…) 和「…少しくらいなら…大丈夫ですよね…」サワッ 京太郎「んっ…」モゾッ 和「!」ピタッ 京太郎「ん…んん…すぅ…」 和「ほっ…」 和「…」サワ…サワサワ 和(やっぱり柔らかい…それにすごくサラサラしてて…)ナデナデ 和「 男のくせに羨ましいぐらいの髪質ですね…このっ」ツネッ 京太郎「ん…」 和「ふふっ…えいえい」 京太郎「んー…」ブンブン 和「あ…やりすぎてしまいました…ごめんなさいね」ナデナデ 京太郎「…ん」モゾモゾ 和「~♪」 ……… 和「…はっ!?」 和(そういえばすぐに止めるはずだったのに結構な時間が…) 和「須賀君、起きてください」ユサユサ 京太郎「ん…あれ…?和…?」 和「ええ、そろそろ起きてください」 京太郎「…あぁ…寝ちゃってたんだな俺…せっかく俺のわがまま聞いてくれたのにごめんな…」 和「いえ…それに私も楽しんでましたし…」ボソッ 京太郎「え?」 和「いえ、何でもありません」 京太郎「そっか。わがまま聞いてくれたお礼に今度なんか美味いもん作ってやるよ。何かリクエストはあるか?」 和「え?うーん…急に言われても…特に何かあるわけでもないですし…」 京太郎「そうか?じゃあ別に食いもんじゃなくてもして欲しいこととかあったら言ってくれな。出来る範囲でなら何でもするよ」 和「…それなら、今度は須賀君から抱きしめてもらっても良いですか?」 京太郎「えっ?…それぐらいならおやすいご用って言うかむしろ本望ですらあるんだが…それで良いのか?」 和「ええ。抱きしめられるのがどんなものなのか少し気になりますし…それに」 京太郎「?」 和「いえ…何でもありません」 京太郎「それならいいんだが…」 和(須賀君のことが少し気になっているということはまだ言わないでおきましょうか) 和「ふふっ」 カンッ 戒能「きょーおーたーろー!」アスナロダキッ 京「ぎゃあ!?」 戒能「その反応はあんまりです」メソメソ 京「戒能プロ、嘘泣きですよね」 戒能「イエス」スッキリ 戒能「ところで京太郎」アスナロダキ 京「はい?」 戒能「戒能ではなく良子って呼んでって言いましたよね」 京「う」 戒能「ぷりーずこーるみー」ニコニコ 京「…良子、さん」 戒能「京太郎」ニコニコ 京「はい」 戒能「もっと愛をこめて」 京「もうやだこのプロ」 カン 照「京ちゃん、おもち」 京太郎「はいはい、今焼けますから待ってください」 淡「きょーたろー、みかん切れたー」 京太郎「はいはい、今持ってくから」 キョータロー ハイー バタバタバタバタ 菫「……」 菫「須賀!」 京太郎「は、はい!何でしょうか」 菫「ここに座れ」 京太郎「え?いや、あの…」 菫「早くしろ」 京太郎「は、はい…」 京太郎「な、何でしょうか…」 菫「……」ポスッ 京太郎「ちょ、す、菫さん!?」 京太郎「他の部屋にみんないるんですからバレちゃうんじゃ…」 菫「うるさい、お前は私のモノなんだから私の所にいればいいんだ」 京太郎「…知りませんからね?」ギュウ 淡「もうとっくにバレてるよねー」ニヤニヤ 誠子「あんなニヤけた先輩滅多に見れませんね」 尭深「弘瀬先輩の意外な一面」 照「菫はあれで案外独占欲が強いから」 ワイワイガヤガヤ 京太郎(やっぱこうなるよなー…気付いてないのかなー…気付いてんだろうなー) 菫「///」プルプル 京太郎(これはこれで可愛いからいいか) カン 京太郎「つまみ出来ましたよ」 えり「ああ、ありがと」 良子「サンキュー、少年」ジャラジャラ 京太郎「はは、また麻雀ですか。やっぱ皆さん好きなんですね」 はやり「うーん、今回は賭けが賭けだからね☆」ジャラジャラ 京太郎「へ? 賭けってそれまずいんじゃ……」 健夜「大丈夫だよ、お金じゃないから」ジャラジャラ 京太郎「何賭けたんです? みかんとか?」 咏「君だよ、君」ジャラジャラ 京太郎「……へ?」 良子「ソーリー、しかし私も負ける訳には……」 えり「ごめんなさい、京太郎。私にはこの猛獣達を止めることは……」 京太郎「……へ?」 良子「グッド、グッド……!!」 京太郎「おお、戒能さんが勝った……」 良子「……まあ当然ではありますが」 恒子「うあー、すこやんごめんー」 えり「私に代打ち任せるのが悪いですね」 みさき「うーん、上手くいきませんね」 京太郎「野依さん、三人は大丈夫ですか?」 理沙「死亡確認!」プンスコ 京太郎「あっ、そうですか」 良子「ということで、では京太郎君……」 京太郎「ちょっ、ちょっと待って下さいって! 俺は……」 良子「……京太郎君、ギブアップしましょう。そして全てを委ねましょう」 えり「ちょっと待って下さい、賭けたのは“ハグ権”でしたよね?」 良子「……」 京太郎「えっ、そうなんですか?」ホッ 良子「まあイナザーワーズではそうとも言えますね」 えり(この人常識人かと思ってたのに……) みさき(勝手にこんな設定されても怒らないなんて……いい) 良子「それでは、ハグを」 京太郎「あっ、はい(ハグって……そう言えば戒能さんって結構)」 恒子「ムチムチでスタイル良いよね~」ボソッ 京太郎「!? 福与さん!」ビクッ 恒子「あのわがままボディに抱きついて、しこたま揉んでみたい……みたくない?」ボソボソ 京太郎「そ、そんなこと……」 良子(ウィスパーがだだ漏れなんですが……ムチムチとか、わがままボディとか) えり(このアナは……)ピキッ 京太郎「俺は……俺は……」 良子「ソー、ハグ……しますね」ギュッ 京太郎「うはあっ!?」ビクンッ 京太郎(福与さんにあんなこと言われたから、戒能さんの身体が、肉が、俺の本能を刺激してぇ!!) 良子(すごいリアクション……何だかリトル、楽しくなってきちゃいますね) 良子「ねえ、どうですか? 私のボディは」ギュッギュッ 京太郎「ど、どうと言われてもですね……(太ももが、吐息が、おもちがぁ!!)」ピクピク 良子(ボディ、結構たくましいですね……なかなかの高身長ですし、このまま身を委ねても……) 良子「ねえ、京太郎君」 京太郎「は、はい?」ビクンビクン 良子「このまま私と一緒に最後まで……」 えり「ストップ!! ストーップ!! 戒能プロ、ハグまでですから!」 良子「ダミッ!」 京太郎「た、助かっ……うっ」ササッ 恒子「ん? どうしてしゃがんだのかな?」 京太郎「何でもない、何でもないです!」 良子「京太郎君、コンティニューがしたいならいつでも……」 京太郎「あ、あはは……こ、今度は他のゲームしましょうよ、ね? あっ、野依さん、どうしました?」 理沙「邪神降臨!」プンスコ 健夜「次は、初夜権だったかな?」ゴゴゴゴ はやり「身請け権だよ☆」ハヤッ 咏「気分も晴れたし、景気良くいこうかねぃ」ゴゴゴゴ 京太郎「えっ」 カンッ 照「京ちゃん」カモン 京太郎「えーっと、なんすかその広げられた両手は」 照「お姉ちゃんが抱きしめてあげる」 京太郎「そうですか」 照「そうです」 京太郎「ノーサンキューです」 照「……何故?」 京太郎「何故って聞かれても、そもそも抱きしめてもらう理由が無いとしか」 照「京ちゃん。弟にはお姉ちゃんに抱きしめてもらう権利がある」 京太郎「そもそも弟でも無いんだけど」 照「それに、私の胸部は無駄な障害物が無く抱擁に適している」 京太郎「自分からそれを認めるのか……」 照「さあ」 京太郎「謹んで遠慮させていただきます」 以下ループ 京太郎「誰か抱きしめたいな……」 優希「呼んだか?」 京太郎「さて帰るか、お疲れー」 優希「待てい!」 京太郎「なんだよ」 優希「今優希ちゃんを抱きしめたいなって言っていただろう!」 京太郎「言ってねえ!誰か抱きしめたいなとは確かに言ったけどな!」 優希「誰かなら私でいいだろ!」 京太郎「お前抱きしめたって何も得るものないだろ……」 優希「むかっ……じゃあ試してみるか?」 京太郎「タコス買わされそうだから断る」 優希「……」 京太郎「というわけでじゃあな」 優希「……てりゃあ!」ギュウッ 京太郎「ぐえっ!?ば、ばか、首に抱きつくな!」 優希「当ててるんだじぇ!」 京太郎「何をだ」 優希「……」 京太郎「……」 優希「……」ギュウウウッ 京太郎「ぐええっ!?」 優希「もう許さん、抱きしめないならこのまま落としてやるじぇ……!」 京太郎「わ、わかった、抱きしめる!是非抱きしめさせてください!」 優希「わかればよろしい!さあかかってこい、京太郎!」 京太郎「ったく……じゃあいくぞー」 優希「おう!」 京太郎「ほれ」ギュッ 優希「ぁ……」 京太郎「おっ、意外にいい感じ」 優希「……むぎゅ」 京太郎「それにしてもお前暖かいんだな。冬は寒いからこれはなかなか……」サワサワ 優希「ひうっ!」 優希(きょ、京太郎の手が背中這ってるじぇ……くすぐったいけどまだもうちょっと……) 京太郎「あー、確かにこれはいいかも……甘く見てたな俺」サワサワ 優希「んきゅ……!」ビクッ! 優希(ちょっ、京太郎、そこ、ダメだじぇ!そこは弱……!) 京太郎「おっ、また暖かくなった。やべえ、離れがたくなってきた」サワサワサワサワ 優希「っ、ふっ、きょうた……!」ビクッ、ビクッ! 優希(な、なんで京太郎、こんな的確に私の弱いとこぉ……あっ、ダメ、私もう……!) 京太郎「ふうっ、なかなかいい抱き心地だったぜ優希」パッ 優希「……あ」 京太郎「いやあ、悪かったなバカにしちまって。お詫びに今度タコスでも奢って……」 優希「……」プルプル 京太郎「優希?」 優希「京太郎の、バカ……!」 京太郎「えっ、えっ?」 優希「うわああああんっ!!」 京太郎「……」 京太郎「あー……やっぱりやりすぎたか」 京太郎「明日は最低でもタコス作ってやんないとダメっぽいな……はあ」 カン! まこ「~♪」 京太郎「……」ギュッ まこ「……わりゃ、何しとるんじゃ?」 京太郎「先輩……その雑誌、今週のですか?」 まこ「そうじゃけど」 京太郎「俺まだ読んでないんですよ」 まこ「そんなら貸そうか?」 京太郎「いえ、このままで大丈夫です」ギュー まこ(……大丈夫って言われてものう) まこ「もうめくろうか?」 京太郎「先輩のペースでいいですよ」 まこ「ほうかの」ペラッ 京太郎「~♪」 まこ(……まあ、ええか) カンッ 健夜「国内無敗舐めんま!! グランドマスターにひれ伏せい!!」ロォオオォン 良子「配牌……トゥーバッド……」 はやり「捨てる牌捨てる牌……全てツモり返ってくる……」 咏「視覚が……封じられた……」 京太郎「うわあ」 恒子「あちゃー」 えり「麻雀ってこんなでしたっけ」 理沙「地獄絵図!」プンスコ 健夜「勝った、私勝ったよ! 見てたよね、こーこちゃん、京太郎君!」 京太郎「あっはい」 恒子「すこやん……ちょっとやりすぎ」 健夜「勝てばよかろうなのだァアアッ! さあ京太郎君、ご褒美を!」 みさき「この人こんなキャラでしたっけ」 理沙「本性!」プンスコ 京太郎「じゃあ、(俺がした訳じゃないけど)約束は約束なので」 健夜「うん……えっ?」 京太郎「? どうしました?」 健夜「いや……京太郎君って、結構背高いよね」 京太郎「まあ平均よりは。182ですから」 健夜「結構、体つきも……ガッシリしてるよね。何かスポーツとかやってるの?」 京太郎「特にはやってないですけど、雑用で肉体労働とかは」 健夜「へ、へえ~」 恒子「あっ、畜生麻雀モンスターから独身アラフォーに戻った」 えり「打って変わって、ドキマギした様子ですね」 理沙「彼氏いない歴=年齢!」プンスコ みさき「自己紹介ですか?」 理沙「!?」ガビーン 京太郎「それじゃ、ハグしますね……」スッ 健夜「ちょっ、ちょっと待った!」 京太郎「は、はい」 健夜「こ、心の準備があるから」スーハー 京太郎「そ、そうですよね。いきなりはマズいですよね」 健夜「…………よし!」 京太郎「では」スッ 健夜「やっぱちょっと待ってえ!!」 京太郎「また!?」 恒子「すこやん……」 えり「これもう無理ですかね」 みさき「何だこのおばさん」 理沙「……」 健夜「……あの、ちょっと思ったんだけど」 京太郎「は、はい。何でしょうか」 健夜「私と京太郎君って何なの?」 京太郎「何、と聞かれても……」 健夜「だって……ぎゅっとするってことはさ、もう普通の知り合い超えてるんじゃないかな」 京太郎「はい?」 恒子「あのー、これゲーム。すこやーん、これ単なるゲームの景品ですよー」 えり「聞こえてませんね」 健夜「だから、ね? 京太郎君、もし私のことぎゅっとするんなら、責任、取ってもらわないと……」 京太郎「せ、責任?」 理沙「重!」 みさき「深夜の豚骨ラーメン並に重いですね」 健夜「ね、ねえ、京太郎君は……」 京太郎「小鍛治さん」ギュッ 健夜「きょ、京太郎君!?」 恒子えり理沙みさき「!!??」ガタッ 京太郎「ハグって、こんな感じでいいですか?」 健夜「ふ、ふわぁ……(男の人に、抱き締められてる……。ぎゅっとされてる……)」キュンッ 京太郎「小鍛治さん、そんな心配しなくても大丈夫ですよ」ボソッ 健夜「あふぅうう……(耳元で、囁かれてるぅ……)」ジュンッ 京太郎「俺と小鍛治さんは、単なる知り合いじゃなくて、友人ですから!」 健夜「らめぇえええ……いっちゃうのぉ……」ビクンビクン 恒子えり理沙みさき「えっ」 京太郎「だから、遊び相手が福与さん以外いないなんて言わないで、俺とも遊んだりしましょう、ね?」 健夜「……」ビクッビクッ 恒子「……まあ、高校生だし」 えり「……当然、ではありますね」 理沙「無慈悲!」プンスコ みさき「この年で墓場に入れという方が酷ですしね」 京太郎「友人でもハグは照れますけどね、気安い昔馴染みやちびっ子ならともかく……って、小鍛治さん?」 健夜「……京太郎、君」ガシッ ズッキュゥウウウン 恒子「!? やっ、やった!?」 京太郎「ちょっ、ちょっと、こか、小鍛治さん!? いきなり何を……!」 健夜「いいよね? いっちゃってもいいよね、最後まで? いこうよ、いこうよねえ、京太郎くうん!!」ハァーッハァーッ 京太郎「イヤーッ!!」 えり「……守れなかった」 カンッ 京太郎「晴絵さん」ギュ 晴絵「きょ、京太郎いきなり何してんの!?」アタフタ 京太郎「なにって、一緒に炬燵でごろごろしていた晴絵さんを後ろから抱きしめてるんですけど」 晴絵「いや、見ればわかるけどなんでいきなり」 京太郎「えっと………正面に座りながら晴絵さん顔を見てたらなんだかムラムラしちゃって」 晴絵「ちょ!?直球すぎ!?まだお昼だし早いって!で、でも…その吝かでは」 京太郎「まあ冗談なんですけどね」 晴絵「えー…」 京太郎「ただ普段から奈良と長野だから滅多に会えないのもあって、つい抱きしめたくなっちゃったんです」 晴絵「京太郎………ちょっと離して」 京太郎「あ…ご、ごめんなさい!生意気でし『ギュッ』…晴絵さん?」 晴絵「後ろからもいいけどやっぱり正面からの方が嬉しいな」 京太郎「晴絵さん…」 晴絵「もう、こんな時ぐらい普通に呼び捨てにしてよ」 京太郎「うん…ゴメンな晴絵」ギュッ 晴絵「京太郎…暖かいね…」ギュッ カン 憧「ねぇ、次はいつ会える?」 京太郎「今月は無理だから、来月の連休だな」 京太郎「ま、こないだ会ったばっかりだしさ、ちょっと我慢ってことで」 憧「うん・・・」 京太郎「高校生にとってはお金もバカにならないわけで」 憧「・・・・はぁ」 京太郎「憧?」 憧「なんか・・・寂しいのあたしだけみたい」 京太郎「はぁ?」 憧「京太郎はわ、私に会えなくっても平気なのかなって・・・」 京太郎「あのなぁ・・・」 京太郎「俺だって寂しいに決まってるだろ、会いたいに決まってるだろ」 京太郎「直接顔も見たいし、触りたいし・・・」 京太郎「だ、抱きしめたいって思ってるよ」 憧「きょうたろ・・・」 京太郎「だからそんな悲しいこと言うなよ」 憧「うん、ごめん・・・」 京太郎「わかればよろしい」 憧「本当にごめんね、変なコト言っちゃって」 憧「うぅ・・・わたしこんなめんどくさい女じゃないと思ってたんだけどなぁ・・・」 京太郎「そういうところも全部愛してるぜ」 憧「ば、ばか何言ってんのよっ!」 京太郎「照れてる憧もちょーかわいい」 憧「あーもう、うるさいうるさい!!」 京太郎「はは、元気でたみたいだな」 憧「もう・・・・・・ねぇ」 京太郎「ん?」 憧「あの・・・あのね!」 京太郎「おぉ?」 憧「今度会えたときに、その・・・」 京太郎「うん」 憧「さっき言ってたのの続き、していいよ」 京太郎「さっきの続き?」 憧「だからその・・・だ、抱きしめたいの続きッ!」 京太郎「へ?」 憧「あたしも、その、京太郎としたいって思ってる、から・・・」 京太郎「・・・いいのか?」 憧「お、女がいいって言ってるんだから、いいのよ!」 京太郎「・・・わかった」 憧「約束だよ?」 京太郎「あぁ、約束だ」 憧「うん!えへへ・・・」 京太郎「覚悟しとけよ!」 憧「覚悟してるから言ったんですーふふ」 京太郎(ゴム買っとかなきゃ) 憧(京太郎とキスキスきす鱚・・・・ふきゅぅ) カン やえ「抱きしめ、たい……?」 京太郎「はい」 やえ「私を?」 京太郎「はい」 やえ「……一昨日出直してきなさんな」 京太郎「やえさん、俺はマジですよ」キリッ やえ「何でこういう時だけ真面目な顔するのかな」ハァ 京太郎「そりゃもう、大切だからに決まってるじゃないですか」 やえ「私を抱きしめることが?」 京太郎「やえさんのことが、ですよ」 やえ「……こんな状況じゃなけりゃ格好いいんだがね。ともかく、相手をしている暇は無いから、早く勉強に取りかかりなさい」 京太郎「仕方ない……」フゥ やえ「ほら、勉強せんと試験が……」 京太郎「実力行使しか無いようだ」 やえ「は? 須賀君、何を……」 京太郎「うおおーっ! やえさぁーん!!」ガバァッ やえ「きゃあああ!?」 京太郎「やえさん、やえさんスリスリ!!」 やえ「ちょっ、やめ、止めなさいってば!」バシンバシン 京太郎「やえさんのドリル、やえさんのもち肌、やえさんの―――ぶべらっ!」ズバァッシュ やえ「あ、あんたねえ! いきなり何てことすんのよ!!」ガーッ 京太郎「ふみまへん」プシュー やえ「そういうことをするにはねえ、色々手順を踏まないと……」クドクド 京太郎「つまり手順を踏めば、あれやこれやをしていいと……ひいっ、ごめんなさ」 やえ「……ちゃんと、しなさいよね。バカ」 京太郎「へっ?」 カンッ 京太郎「…」ギュ 春「離して、黒糖食べれない」 京太郎「じゃあ、後ろから」ギュ 春「うん、よし」ポリポリ 京太郎「あ、これだと俺が食べれない」 春「じゃあ…」チュッ 初「口移しだ…と…?!」 霞「チェストー!チェストー!!」 巴「ああ、霞さんの立木打ちが一段と激しく…」 小蒔「あの、そろそろ目を開けてもいいでしょうか?」 初巴「まだ駄目です」 カン えり「はぁー……」 京太郎「年末だってのにどうしたんだよ姉さん」 えり「今年も結局恋人ができなかったなぁ……と」 えり「クリスマスは仕事三昧、休む暇もないし、あればこうして弟のいる長野に来てしまう」 えり「出会いも何もないですよぅ……」ウジウジ 京太郎「そんなに俺のこと心配しなくてもいいんだぜ?」 えり「たった一人の弟の世話も焼けなくて何が姉ですか!」クワッ えり「料理を作って来るので京太郎はそこに座っていてください」 京太郎「え……でも」 えり「手伝わなくていいですからね」 京太郎「もうビーフシチュー作っちゃったんだけど……」 えり「一体なんなんですか!洗濯物はしっかりたたみ終わってる!」 えり「お風呂も沸かしてある!料理も作ってる!大掃除する余地もない家の清潔さ!カピの世話もしっかり焼いてる!」 えり「私の存在理由って何なんですか……」 京太郎「そこまで思い詰めることなの!?」 えり「私は出会いすらないというのに、完全に先越されるじゃないですか……」 京太郎「……はぁ、そんなことないよ」アスナロダキッ 京太郎「昔の約束覚えてる?姉さんをもらう人がいなかったら――」 えり「俺が貰ってあげる、ですか?」クスッ 京太郎「そうそうそれそれ」 京太郎「だからさ、こう言うべきなのかどうかはわからないんだけど……焦らなくても、いいんだぜ」 えり「姉弟での結婚はできませんよ?」 京太郎「わ、わかってるよ!」 京太郎「そもそも、姉さんが売れ残れるなんてあり得ないだろ」 えり「……そうですかね」 えり「京太郎に抱きしめられるのはいつぶりでしたっけ、なんだか安心します」 京太郎「俺もだよ」 京太郎「もう少し、こうしててもいいかな」 えり「はい、是非」 カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/10060.html
前話 次話 京太郎インタビューその6 全国大会の第一戦を難なくクリアした清澄高校。 敗退した高校には、来年頑張って欲しいと願う。 勝者インタビューの意味も兼ねて、SK君に取材していく。 まずは清澄高校の一回戦突破、おめでとうございます。 京太郎「ありがとうございます。でもいいんですか? 3連続跳満出して大活躍だった部長とか、優希や染谷先輩も他を寄せ付けない活躍だったし、そっちの方が良かったんじゃ」 そちらは他の記者に任せて、お前はこっちのインタビューに行けと言われまして。 京太郎「はあ」 ぶっちゃけちゃうと、こっちのインタビューの方が楽しみにしてる人多いくらいなんですよね。 京太郎「みんなもっと大会の方に集中したげて!? 頑張ってるんですから!」 とはいえ流石に白糸台などの有名校への取材には敵いませんが。 京太郎「清澄は人気なしですか……。でも、うちは絶対勝ち進んでみせるので、人気が無いなんて言ってられるのも今の内ですからね」 その意気です。 一回戦では、部長さんは特に気合が入っていたように見受けられましたね。 京太郎「そうですね。3年生の部長は最初で最後の大会ですから、みんなの中でも特にって感じで。実は今回他校をトバしてたのも、「よぅし! みんな見てなさい! 私の番で試合終わらせてあげるわ!」って控室で宣言してからですし」 自信たっぷりですね。 京太郎「あの時点で結構な点差ついてましたしね。でも自信って点で言えば、優希の奴なんかは「よっしゃあー!! このゆーき様の東一局で全てを終わらせてやるじぇー!!」とか言ってましたけど」 そうだったのですか。 京太郎「まぁご存知の通り、あいつの親番は東四局になったんですが」 親決めのサイコロを振った時点でズッコケてたのはそういう理由ですか。 京太郎「ちなみに出番の無かった和と咲も控室で若干ズッコケてました」 一年生のみなさんもやる気満々で、空回りしたんですね。 それで、前回から今に至るまでに面白エピソードはありましたか? 京太郎「俺のインタビューって、そういうの求められてるんです?」 だけというわけでもありませんが、メイン層ですね。 京太郎「あー……。面白じゃないんですけど、ちょっとしたハプニングみたいなのはありましたね」 というと? 京太郎「一回戦はその日の午後にやったんですけど、午前中はその準備って感じで。俺も大会中の食材の買い出しに出掛けてたんですよ」 一回戦でもう買い出しに? 京太郎「調理器具は準備してきたんですけど、食材は現地調達ですからね。部費はいくらか渡されて、レシート持ってきさえすれば後は俺にお任せと」 その道中になにかあったのですか? 京太郎「必要なものは買ってリュックに詰めた後、帰り際ですね。人通りの近くでオロオロしてる人を見掛けたんですよ」 誰だったのでしょうか? 京太郎「宮守高校の臼沢さんって言ってました」 宮守高校、というと。 京太郎「はい。うちと同じ日程で一回戦突破して、次にうちと当たる高校の一つですね」 となると、試合前に一人でオロオロしている所を見掛けたと。 京太郎「むしろ試合前だから余計焦ってたんでしょうね」 何があったのでしょうか? 京太郎「俺も何かあったのかなー、と思って声掛けてみたら、向こうも動画で俺の事知ってたみたいで驚いた後、ちょっと悩んでから「ねぇ! 君の能力を見込んでお願いがあるんだけど、聞いてもらえる!?」と」 能力? 京太郎「事情を聞いてみたら、どうやら試合会場に向かう途中で人混みに巻き込まれて、他の選手の人と散り散りになっちゃったみたいで」 あ、迷子捜索能力ですか。 京太郎「そうなりますね」 S君の事ですから引き受けたのだと思いますけど、時間はあったんですか? 京太郎「ええ。そもそも買ったものも緊急で必要なものじゃないですし、試合に間に合わなかったとしても俺が見逃すだけですから。それに、みんなは勝ってくれるって信じてますし」 成程。それで、その後は? 京太郎「とりあえずは連絡がつくか聞いてみたんですけど、試したけど全員繋がらないと」 みなさん携帯を落としてしまった? 京太郎「いえ、後で聞いた所、マナーモードのままにしてたり周りがうるさくて気付かなかったとか、充電切れてたりしてたみたいで」 それは不運ですね……。 京太郎「それで、まずは迷子になった人達がどういう人なのか聞いてみました」 とりあえず歩いて探すのではないのですか? 京太郎「その方が良い時もありますけど……、えーっと。迷子になると言っても、人によって大体パターンがあるんですよね。咲の場合、道分かんないけどとりあえず歩いてみるっていう一番困るパターンなんですけど」 ふむ。それで? 京太郎「人となりを聞いて、大体この辺りにいそうだなって当たりをつけていけば、探す分には早く見つけられるかな、と」 そして、臼沢さんに人となりを聞いて、当たりをつけてから探し始めたと。 京太郎「はい。それでまず見つかったのが、鹿倉さんですね」 どういう当たりをつけていたんですか? 京太郎「臼沢さんから聞いたところ、鹿倉さんは背は低いけどしっかり者で、部内の風紀委員みたいな人らしくて。そういう人なら、人混み掻き分けてみんなを探しに行きたいけど、身体が小さくて中々踏み出せなさそうだなと思って、大きい人通りに沿った部分で立ち往生してるんじゃないかな、と」 そこまで想定するんですか。 京太郎「ええ。で、まぁドンピシャだったみたいで、スクランブル交差点のとこの人の流れの手前で、右に左にウロウロしてたのが見つかりました」 ドンピシャですか、すごいですね。 京太郎「こう言っちゃ失礼ですけど、まー咲に比べたら素直にそこにいてくれたので、比較的といえば比較的簡単に」 京太郎「とりあえず一人確保して次ですね。エイスリンさんっていう、ニュージーランドの人を見つけようと」 その人はどんな方なのですか? 京太郎「全く話せない訳じゃないんですが、日本語を聞くのはともかく喋る方はあまり得意でなくて、常日頃ボードを持ち歩いてそこに絵を書いて意思疎通を図る人だそうです」 成程。そこからどういった考察を? 京太郎「人が多くて目立つ場所にいて、そのボードでHELPサインを出してる可能性が高いと考えました」 人が多くて目立つ場所……。 京太郎「セブンとかマックとかの全国どこにでもあるような施設の入口だったり、外国人でも知ってるような東京名物になりますね。この場合」 それで、実際どこにいたんですか? 京太郎「忠犬ハチ公像の前でした。あの辺りなら一番目立つ所ですね」 ちなみにどんなHELPサインでしたか? 京太郎「ボードに描いてたのはぴえんの顔文字でした」 京太郎「それで、残る二人ですが」 宮守高校ですと、確か小瀬川白望さんと、姉帯豊音さんですね。 京太郎「そうですね」 どちらから先に? 京太郎「そこでは、姉帯さんの方を先に、という話になりまして」 何故でしょうか? 京太郎「前二人は見つけやすい位置にいるという考察だったのですが、小瀬川さんの場合は先に他の人と合流しているかもと話してたので」 というと? 京太郎「小瀬川さんは普段ダルいダルいと面倒臭がる人だそうなんですが、結構スペックは高くて、大事な所では遺憾なく発揮するタイプらしくて。それなら俺が考える他の人の居場所にも小瀬川さんは当たりつけてて、探して見つけてる所かもって考えたんです」 成程。 京太郎「現実は最後見つけた時に公園のベンチでダル~んと座ってたんですが」 なんだか裏切られた気分です。 京太郎「いえ、まぁ一度探しに行ってたみたいなんですけど、当たりをつけた人が鹿倉さんで、既にこっちで回収してた後だったんですよね」 入れ違いだったと。 京太郎「小瀬川さんは「外してた……ダルい……」って言ってました」 それで、姉帯さんにはどういう当たりをつけていたのでしょう。 京太郎「えーと。聞いてた特徴として、姉帯さんはその時全身黒い服装で、長い黒髪で、俺よりも背の高い女性で」 それだけ特徴的であれば、すぐに見つけられたのでは? 京太郎「ところが本人的にそういう特徴、取り分け高身長をコンプレックスに思ってるらしいので、あまりそれらが目立つ振る舞いをしてないかもしれなかったんですよね。気の大きいタイプでもないそうなので」 となると……道端で座り込んでしまっている可能性が? 京太郎「そういう可能性もあったんですが、友達想いの優しい人だとも聞いたので、そういう事情を押して必死にみんなを探してる事も考えられたので、難しい所だったんです」 それで、実際にどうやって探したのでしょうか? 京太郎「えーと、ですね。当たりをつけるのが難しくて、向こうが目立てないなら、こっちが目立って歩けばいいって事になったんですよ」 というと? 京太郎「エイスリンさんの提案なんですけどね。俺が鹿倉さんを肩車して歩けばいいと」 肩車、ですか。 京太郎「人一人肩車して歩いてればそれだけで目立つし、人混みの多い所でも頭一つ抜ければ、同じく頭一つ抜けてる姉帯さんを見つけられる筈だとなったんですよ」 理屈の上ではそうですけど、年頃の女の子を肩車するのは憚られませんか? 京太郎「俺もそう思うんですけど「今は緊急事態だから無罪!」と鹿倉さん本人に強く言われまして、強行する流れに」 本人にそう言われたら、引き下がるしかありませんか。 京太郎「ですね。それで、臼沢さんが「胡桃と荷物を同時はキツイだろうし、こっちは私が持つよ」と言って、元々持ってたリュックを背負ってもらって。小瀬川さんは人口密度が高いのは嫌いそうだからと人通りの少ない場所を回りつつ、鹿倉さんが声を張り上げて探したんです」 それで、見つけられたと。 京太郎「ええ。どっちも目立ってたので割と早めに。人混みがそんなに無いところで見つけた時に、余程不安だったんでしょうね。姉帯さんがこっちに走ってきて飛びかかるように抱き着いてきまして」 あの身長の人が飛びかかってくるのは中々の恐怖では? 京太郎「それがあの人、見た目美人系なのに中身小動物系で、その時もえらい号泣して「わーん! 会いたかったよー!」って叫んでたので……。なんだか避ける気になれなかったんですよね。肩車してたからそもそも避けらんなかったですし」 成程。ですが、肩車して飛び掛かられたらS君も上の鹿倉さんも危険ではないでしょうか。 京太郎「ええ。鹿倉さんも「わっ、ちょっ、豊音、危なっ……!」って焦ってたんですが、あの人びっくりするぐらい軽かったので。俺が倒れないような姿勢取ったにしても、てんでバランス崩れなかったんですよ」 S君の足腰強過ぎる問題では? 京太郎「そうですかね。まぁ、どっちにしろ怪我が無くて良かったです」 ちなみに、姉帯さんとS君の身長差を考慮すると、S君が腰を落として抱き着かれた場合、ちょうどS君の顔の位置に姉帯さんの胸部が当たると思うのですが。 京太郎「なんでそんな気付かんくて良い事に気付いてそのまま言っちゃうんですか」 どうでした? 抱き着かれてみて。 京太郎「例によってノーコメントで」 その後、小瀬川さんを公園のベンチで発見して、見事ミッションコンプリートしたと。 京太郎「ええ。姉帯さんをあやすのに長くかかったり、小瀬川さんが「バテた……おんぶして……」とか言い出したりと、色々ありましたが、なんとか宮守のみなさんは合流出来てました」 時間は大丈夫でしたか? 京太郎「まーかなりギリギリだったので慌ただしくしてましたけど、向こうも一回戦突破したみたいなので、なんとか間に合ったんでしょうね」 S君も大変感謝されたんじゃないでしょうか。 京太郎「そうですね。荷物を返してもらった後、別れ際臼沢さんが「このお礼は絶対するからね! 絶対だよ!?」って言ってたので、今度会った時に改めて、という感じになるんでしょうか」 宮守の方達はどういう印象でしたか? 京太郎「全員3年の先輩なんですけど、みなさん可愛い人達って感じでしたね。雰囲気がフレンドリーというか、柔らかいというか」 では、最後に何か一言。 京太郎「夏バテ防止の為、水分補給はきちんとしましょう。スポドリに塩をちょっと入れるのがオススメです」 前話 次話
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3472.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377983742/ 【前回までのあらすじ】 宥「お鍋とか食べたね~」 <食べたいね~ <ね~ この一言が発端となった。 灼(また宥さんがわけのわからないこと言い出した) 尭深「さすがに、屋外でお鍋は無理があるかと」 宥「そっか~」ショボ~ン 京太郎「話は聞かせてもらいました!」 宥「あ、京太郎くん」ポヨヨ~ン 尭深「須賀君?」タプ~ン 灼「いったいどこから」ツルペッターン!! 京太郎「……」 京太郎「俺はいつだって鷺森先輩の味方です」ポン 灼「……」イラッ 京太郎「まぁそれはいいとして、ここはひとつ俺に任されてみませんか?」 宥「?」 京太郎「今日のお昼はお鍋にしましょう」 宥「え、いいの?」 京太郎「問題ありません。俺はいつだって宥さん全肯定の論調で語ってますから」 宥「はわわ///」 こうして俺たちの昼食は鍋パーティーとなった。 京太郎「と、見栄を張ったはいいが準備が大変そうだな」 土鍋はある。何故あるのかとかは気にしていけない。少なくともこの世界観においては。 淡「あ! キョータロー!」タタタッ 京太郎「問題は具材だな。買出しに行かないと材料なんてないしな」ブツブツ そういえば亦野先輩の成果はどうなったろうか。鰤とか釣れてるなら是非とも分けてもらいたいが。 淡「あのね! 向こうですっごいキレーな貝殻拾ってね!」ピコピコ 京太郎「とにかく今から買出しに行かないとな」 淡「買出し? 私も行く!」ピョンピョン 京太郎「しかしさすがに今回は一人だと少し厳しいな援軍を呼ぶか」 淡「ねーねー! キョータローってばぁ!」ブンブン 京太郎「けど仮にも先輩たちに頼むのは気が引けるしな」 京太郎「和とはちょっと2人っきりだと顔合わせ辛いし、理由が理由だけに憧にはからかわれそうだし」 京太郎「穏乃はどこか突っ走って行きそうだし、咲は迷いそうだし、優希はタコスだし、空気はそもそも生命体じゃないし」 淡「キョータロオオオオオオーッ!!」 絶叫に近い高音が俺の耳朶を劈く。 音源を捜すと、いつの間にか傍らには淡が立っていた。 京太郎「あ、淡……お前いつか、」 淡「私ってそんな後?」 京太郎「なにが?」 俯いて髪先を弄っている淡。心なしかいつもの元気がない。 淡「私ってそんな後なんだ。その買出しの手伝いに呼ばれる順番みたいなの」 京太郎「え?」 淡「ちょっと傷付いた、かも」グス え、っと。よくわからないが淡はどうやら自分の名前が挙がらなかったことが不満らしい。 京太郎「いや、違っ、これは違くて淡をハブにしたとかじゃなくて」 淡「ホントぅ?」 その上目遣い! 京太郎「お、おう。じゃあなんだったら一緒に行くか?」 淡「良いの!?」パァァ 俺の提案に途端に破顔する淡。 京太郎「いいって言うか、単なる買出しだぞ?」 淡「良いの! ほら行こう! ね?」グイグイ 京太郎「おい、そんな引っ張るなって!」 淡は急にに俺の手を取ると、急き立てながら走り出した。 先生と部長に軽い連絡を入れ終え、俺と淡は並んで海岸沿いの街道を歩く。たしかこの先に小さなスーパーがあったはずだ。 淡「ところで買出しってなに買うの?」 京太郎「昼飯の材料」 覗き込んで尋ねてくる淡に視線を向けながら返答を返す。 淡「あれ? でもお昼は海の売店で買うんじゃんなかったっけ?」ハテ? 京太郎「まぁそうなんだけどちょっと鍋をやることになってな」 淡「鍋ってお鍋?」 京太郎「ああ」 淡「キョータロー頭大丈夫?」 京太郎「失礼だなお前は」 淡「だって夏だよ! 夏真っ盛りだよ!? なんで海に来てお鍋なの?」 なんかそこまで言われるともっともな気がしてきた。 京太郎「いや、でも宥さんがな」 淡「! ……ふーん。ユーの」 あれ? またなんか機嫌が。 淡「むぅ」プクゥ 京太郎「……」 ほっぺが膨れておられる。 なんか地雷踏んだか? 淡「うぅ……」ブルル いきなり淡が身を震わせた。それから両手で肩を抱き身を縮込ませる。 京太郎「寒いのか?」 淡「わかんない」 京太郎「海から上がってちゃんと身体拭いたのか?」 淡「拭いてない」 京太郎「はぁ、ったく」 俺は自分の羽織っていたパーカーを脱ぎ淡に差し出す。 京太郎「これ着とけ」 俺の言葉に目を丸くする淡。 淡「いいの?」 京太郎「無いよりましだろ?」 淡「……ありがと」 手渡した上着をいそいそと羽織る淡。 淡「……」スンスン 京太郎「ちょ、おおい!? なに嗅いどんじゃ!」 淡「キョータロの匂いがする」 やめて! 羞恥プレイはやめて!! 淡「んふふふ~」ニッコニッコ なんかまた機嫌よくなってるし。ちょっと刹那的に生き過ぎじゃないですかね? 淡「それで買うものは?」 京太郎「ん~、とりあえず水、料理酒、みりん、醤油、和風だし、塩、かつおだし……」 京太郎「寄せ鍋のつもりだからこれと言って決まりは無いけどお前なに入れたい?」 淡「野菜はイヤ」 京太郎「わかった野菜はしこたまぶち込もう」 淡「鬼!」 キングクリムゾン! 淡「いっぱい買ったね」 京太郎「大所帯だしな。まぁ余ったら俺が持って帰るさ」 言いつつ袋を持ち直す。もちろん自前のエコバッグである。 淡「重い……」 同じく袋を持とうとしている淡だが、言葉の通り割と大量に買い込んだのでその分だけバッグも重くなっている。 淡の二の腕がぷるぷる震えている。 京太郎「ほら貸せ」 そういって手を差し出す。 淡「え? でもそれじゃあ一緒に来た意味ないし……」 京太郎「でも、お前持って帰れないだろ?」 淡「そうだけど、あ! じゃあこれで!」 そういって袋の両側に着いた取っ手。その両端をそれぞれ俺と淡で片側ずつ持つ。 淡「えへへ、これなら私も持てる」 京太郎「まぁ、いいけど」 事なきを得て肩を並べて帰路に着いた。 海水浴場に戻り買って来たものを折り畳み式のテーブルに置く。 淡「ふい~疲れた」 凝った手首を振り、具合を確かめながら一息つく淡。 京太郎「おう。ご苦労さん」 淡「……」 俺の労いに返事をせず、黙って見上げてくる。 淡「それだけ?」 え? 京太郎「い、いいいいくら欲しいんだ!?」プルプル 財布を取り出し、小銭と札を確認する。 買出しの手伝いしただけなのにお金要求してくるなんて、淡、恐ろしい子!? 淡「違うわアホー!」タタタッ 怒って走り去ってしまった。 っていうか上着返せよ。 誠子「今、淡が走っていたけど須賀君なにかしたの?」 京太郎「あ、亦野先輩」 そこには釣竿を担いだ亦野先輩の姿が。 京太郎「首尾は?」 誠子「上々。……じゃなくて淡になにかしたの?」 京太郎「いや、なんでそこで疑いの余地も無く俺なんですか?」 誠子「そりゃあ、ここ最近の淡の悩みの種はもっぱら君だからさ」 京太郎「?」 亦野先輩の言い振りはいまいち要領を得ない。 誠子「で、いったいなにしたのさ」 京太郎「なにっていうか、」 俺はここまでの経緯を先輩に説明する。 時折頷きながら聞いていた先輩が、得心が行ったとばかりに口を開く。 誠子「それはたぶん褒めてほしいんだよ」 京太郎「え?」 意外な意見に思わず間抜けな声が漏れた。 京太郎「え~っと、たかが買出しの手伝いですよ?」 誠子「そうだね。でも、たとえば淡は1年からレギュラー入りして部活では常に練習練習」 誠子「基本的に新入生がこなす様なそういった雑用はしてこなかった」 誠子「才能を生まれ持ったばっかりにそういった普通の人が当たり前のように経験することを得ないまま育ってしまった」 誠子「だから私たちにとってはなんでも無いことでも淡にとっては大事なこともあるんだ」 京太郎「はぁ……」 誠子「っとまぁ偉そうなこと言ったけどもっと単純に須賀君の役に立ったから褒めてほしいだけかもね。甘えてるんだよ」 京太郎「けど、逆に怒らないかな?」 誠子「それはどうだろうね。けどそれで本当に怒るかどうかは君のほうがわかってるんじゃないかな?」 俺は背中に鉄板仕込んだかのように背筋を伸ばし、敬礼の姿勢を取る。 京太郎「うっす。さすが亦野先輩、ありがとうございます!」 やはり困ったときは2年生だな。約一名を除いて、真っ当な人材が揃ってる。 京太郎「お~い、淡!」 砂利を蹴って砂浜を走る。目標はあまり移動していなかったのかすぐに見付かった。 波打ち際にしゃがみこんで、なにかやっている。 京太郎「なぁおい淡」 俺の声に一瞬肩を震わせた淡はゆっくり立ち上がり、肩越しにこちらを一瞥してくる。 淡「なに?」 淡らしからぬ酷く平坦な声。 京太郎「さっき悪かったよ謝るから、な? こっち向けよ」 渋々という感じを隠そうともせず身体の向きを変える。後ろ手に両手を組み、いじけた様に打ち寄せる水面を蹴る。 京太郎「え~っと、なんだ。買出し手伝ってくれたありがとな?」 淡「……うん」 京太郎「助かったよ。その、偉かったぞ?」ナデナデ 淡「!?///」 そういって俺は淡の髪を撫でた。その瞬間、淡か頬に朱が差し込む。 淡「あ、あわわわ。ああ、あのね!!」 京太郎「うん?」 淡「こここ、これ!」 差し出された右手、その上に載った小さな欠片。 京太郎「貝殻?」 淡「う、うん。その……綺麗だったからキョータローにも見せてあげようと思って」 京太郎「へえ、ホントに綺麗だな」 淡の手から貝殻を受け取り指先で摘むとそれを太陽に翳す。 京太郎「ありがとな、淡」 淡「うん!」 京太郎「さ、戻ろうぜ。腹減っただろ?」 淡「うん。あはは、実はお腹ペコペコ」 そういって淡は少しだけ恥ずかしそうに微笑んだ。 もと来た砂浜を引き返していく俺たち。 淡「あのね、キョータロー」 京太郎「あん?」 淡「私、毎朝キョータロのお味噌汁が飲みたいかも」 京太郎「え、やだよ。めんどくせぇ」 淡「」 【次回予告】 __ . -'" ̄  ̄` 、 / ヽ、 / . . . . . . . \ / . r . ! | ゙. ヽ .\ / . | . !. | | l! ハ. l .ヽ ,' .. |. l ∠L l| l |l | l | ! l ハ ! . l.. |. | /// / /| /l/リTTヽ ! .i! .| , l . . |.. ! !/ "´'" '" ´ l从 ! | ,'l ! | l . | .| l ,ィ==、 ,ィ=、リ! l / l/ l. ! . . | λ ! { .| ´ !. l . . | / | .l """ , "" l . ! , .| . . .| k ! .l ___ | | , . ! ! ハヽl | r.{_ ;ノ ..イ l . ! | ハ !. ト 、 \ヾ _..ィ´ | j . l |'\∨l ト l ` ァ、 ヾ. . ! . | ./ ' . .! .`゙、ヾ\ヾー‐ァtノニヽ | _!_,' ! . . ;.r‐''ヽ ヽ、r''ヾ!ヽ'_/─, | ト-y'/_ | / \\ ヘ\ 〈 ‐(_!ノ'゙ Y / ヽ ,' .! ヽ.\ ∧ _ /l ヽ .| λ / . l Yヽ K_ }、 } ノ l ゙. , . l } ヽ .ヽ. Y \ / Y !. / . ハ ∨ ヽ ,L/ ヽlヽ ヽ ! / . / .ヽ ヽ Y `l 丶 l クロ中尉[First Lieutenant Kuro Matsumi]. (1995~ 日本) グツグツ 憧「煮立ってる」 和「煮立ってますね」 まこ「なんでお前さんはこれを作ろうと思ったんじゃ?」 京太郎「なんででしょうね? 一時の情念に身を委ねると失敗するということを身をもって体現したというか」 久「よくそういう適当な言い訳即座に思い付くわね」 京太郎「そらもちろん部長の教育の賜物ですよ」 久「その、あなたの人格形成の責任の一端を私になすり付けるのやめて」 宥「あったかそう」ニコニコ 京太郎「どうですかこの笑顔。なんかもう……なんでも許せる感じしませんか?」 まこ「まぁ、こんだけ幸せそうじゃとな」 京太郎「いいですねぇ。美人は特ですねぇ」 京太郎「お前は損だな」ポン 咲「京ちゃん、ちょっと向こうでお話しよっか? 大丈夫少しだけ麻雀を交えながら親睦を深めるだけだから」クイクイ 全員『いただきます!』 誠子「あ、でも美味しい。暑いけど」 灼「暑い。けど美味し」 玄「これなら毎日でも食べたいですね!」 菫「え、いや毎日はちょっと……」 和「すみません。タオル取ってもらっていいですか?」 晴絵「お酒がほしくなる」 京太郎「駄目ですよ。帰りも運転あるんですから」 宥「あったか~い」 京太郎「宥さん、土鍋に手ぇ近付けないでください。危ないから」 京太郎「照さんはご飯のときはお菓子食べない」 京太郎「あ! おい優希、鍋にタコス入れようとするな。美味いものに美味いもの足しても必ずしも美味いとは限らねぇから!」 京太郎「淡は春菊を脇に除けない。野菜もちゃんと食べる!」 京太郎「穏乃! 手掴みで食うな!」 憧「全部つっこんだ」 久「まぁ半分仕事みないなものよね」 咲「京ちゃん、うるさい」 京太郎「あ”あ”!?」 咲「……」ツーン 京太郎「ったく」ブツブツ 和「まぁまぁ須賀君も抑えて抑えて」 玄「仲良く食べたほうがご飯も美味しいよ」 玄「京太郎くんも。はい、あーん」アーン 京太郎「え?」 和「な!?」 憧「ちょ、く、玄!?」 玄「え? あ…………はぁ!?」 咲「……」 京太郎「は!? 今、俺絶好の好機を逃したんじゃないか?」 京太郎「『はい、京太郎くんあーん』、『おい、よせよクロみんな見てるだろ?』」 京太郎「『これじゃまるで俺たち恋人同士みたいじゃないか』、『えーうっそーマジー超キモーい』」 和(ミ○キーみたいな声ですね) 京太郎「みたいなさぁわかるこれ? この感じ」 玄「//////」 憧「いや、その声真似は確かに超キモいけど」 京太郎「玄さんにあーんをしてもらいつつ、それを指摘してテレ顔を堪能する。一挙両得」 京太郎「のはずが、素で返してしまったからな。一瞬の判断ミスで人生を棒に振ったな」 和「そんな重大なことですか?」 玄「あの、それくらいならいつでも」モジモジ 京太郎「いえ、意表を突いてもらわないと面白みが無いので結構です」 玄「」 憧「あんた今、自分の人生盛大に棒に振ってるわよ」 京太郎「俺さ。憧のそういう鋭い突っ込み結構好き」 憧「うっさいわ」 チョイチョイ 京太郎「ん?」 尭深「あーん」 京太郎「……」 京太郎「あーん」モグモグ 尭深「美味しい?」 京太郎「うーん…………美味い!」\テーレッテレー/ 尭深「よかった」ニコ 京太郎「ふむ……」 京太郎「これだよこれ」 憧「なにが?」 咲「……」 京太郎「だから咲。無言なのは怖いよ?」 京太郎「スイカ割りやるべー!」 穏乃「スイカ割りやるべー!」 スイカを掲げながら小躍りする俺と穏乃。 海に来たらなにやる? スイカ割りっしょ! 優希「いつの間にスイカなんて用意したんだ?」 京太郎「ん? ん~……さっか?」 憧「答える気ゼロね」 穏乃「ねー京太郎ー。スイカどの辺に置く?」 アコスとタコスとくだらない問答をしていた俺をよそに穏乃はすでにスイカのポジショニングに入っていた。 穏乃ってなんか自分のやりたい事とかにすごいやる気の生産性を見せるよね。 その瞬発力に乾杯。 穏乃「あ、でも下にシートとか敷いた方が良いよね? 衛生的に」 衛生……だと? 京太郎「なんか似つかわしくない単語来たな」 穏乃「え?」 京太郎「いや、なんでもない」 泥だらけの手で松ぼっくりとか齧ってそうとか言ったら怒られそう。 京太郎「さて、スイカの位置も定まったところでここからが本番」 口元を歪めて笑う。 京太郎「誰を支配下におきたい?」 和「なんで一々そういう言い方をするんですか?」 憧「じゃあ京太郎で」ピッ 優希「犬は常に私の支配下だじぇ」ピッ 穏乃「なら最初は京太郎で良いんじゃないかな?」ピッ 咲「……」スッ」 和「ではここは多数決で須賀君ということで」 京太郎「民主主義なんてクソ喰らえだな」 和「では共産主義の国にでも政治亡命しますか?」 京太郎「バカと俺が同等に扱われる国なんて真っ平ごめんだね」 目隠しをされ、手には木刀……は、なかったので柄に『四万十川工房』と彫られた棒を持って砂浜に立つ。 スイカ割りの戦士、須賀京太郎。すなわち俺。 京太郎「さぁどっからでも来い!」 咲「京ちゃん、こっち。こっち!」パンパン こっちってどっち? 憧「京太郎、前!」 京太郎「……」スタスタ 優希「止まれ!」 京太郎「……」ピタ 穏乃「しゃがめ!」 京太郎「……」スッ 穏乃「バック宙!」 京太郎「出来るかぁ!?」ボスッ 投げ捨てた棒切れが鈍い音とともに砂浜に突き刺さる。 穏乃「次、私ー!」 無能の烙印を押され地面にうな垂れる俺を放っておいて、さっさとゲームを進めていく女性陣。 和「穏乃もっと右です」 穏乃「右ってどっち!?」 優希「お箸を持つほうだじぇ! 穏乃「お箸を持つほうってどっち!?」 和「右です」 穏乃「なるほど!」 大丈夫かこいつ? 憧「シズ! 違うそっちじゃなくて、もっと……ああっ!?」 穏乃「チェストー!」 転瞬、後頭部に鈍痛。 穏乃「あれ?」 俺の身体は真夏の熱い砂浜にノックダウンした。 目を開けると、世界が90度傾いていた。 後頭部に鈍痛。そうか、俺は穏乃の放った誤射で昏倒させられたのか。 …………あの野郎。後で泣かす。 それはそれとしてこの頬っぺたに張り付く柔っこい人肌は……? 京太郎「……」チラッ 咲「……あ」 視線が絡まる。 京太郎「なんだぁ。咲かぁ……」 ドスッ 京太郎「ぐふっ!?」 咲「ふん!」 京太郎「ってなことがありましてね」 誠子「ふ~ん」 近くの埠頭。亦野先輩が釣り糸を垂らすその横で、俺は体操座りをして海を眺めていた。 誠子「で、気が付いたらここにいたと」 京太郎「まぁ、はい」 誠子「便利な場面転換だね」 やだ、辛辣。 京太郎「あ、これスイカです」 誠子「こりゃどうも」 俺たちは並んでスイカを齧る。(俺が寝てる間に)割ったものではなく後できちんと切り分けたものだ。 誠子「うん。冷たくて美味しいね」シャクシャク 京太郎「ですね」シャクシャク 京太郎「ビーチバレーやるべー!」 淡「ビーチバレーやるべー!」 ビーチボールを掲げて小躍りする俺と淡。 憧「私、パース。疲れちゃった」 和「私も少し休憩しますね」 ああ、和がパラソルの下へと去って行く。 京太郎「ちぃ……」 玄「う~む……」 京太郎「……」チラッ 玄「……」チラッ ガシッ 俺たちは硬い握手を交わした。それはおそらく穢れのない天上の風景だっただろう。 菫「はぁ!」スパーン! 菫先輩の放った鋭いスパイクが地面に突き刺さる。 京太郎「く、さすが白糸台のシャープシューター括弧笑い」 菫「京太郎、次言ったら顔面を打ち抜く」 京太郎「はい」 照「ふっ!」ギュルルルルル 高速回転する右腕から繰り出されるサーブ。予測不能な軌道を取るビーチボールが迫る。 玄「させません!」 玄さんの手首が翻り、ボールの乱回転をいなしながら打ち返す。 ボールは上ではなく、横に軌道を取りネットの脇を迂回しながら疾走していく。 照「ポール回し!?」 そんなんありかよ。 玄「名付けて、玄スネイクなのです」キュピーン! なにそのドヤ顔。 淡「あまい!」 意表を突いた玄さんの奇策も、うねり猛る淡の髪に絡め取られていた。 京太郎「いや、ボール持っちゃったらそれ反則だろ」 淡「あわっ!?」ズコーン 熱月の夢! 白熱の終章! これを取った方がマッチポイント。つまりオーラス! 菫「照!」 照「はい!」ポスッ 照さんのナイスアシストを貰い、菫先輩が再び空に舞う。弾むおもち! 菫「せい!」スパーン しまった!? あまりにすばらな光景につい見惚れてしまい、反応が一瞬遅れた! 俺の脇を抜け、ひとつの影が躍る。それは今まで沈黙を保ち、アシストに徹していた鷺森先輩だった。 灼「はっ!」 鋭い一喝とともに突き出される右腕。その先端、親指と中指、そして薬指がビーチボールを貫通した。 ……………………は? 弾力破断限界を越え、ビーチボールが乾いた音を上げて爆ぜる。 灼「ふぅ……間一髪」 なにが? 玄「すごいよ灼ちゃん!」 照「見事な刺突だった」bグッ 菫「出来るなら是非、うちにほしい逸材だ」ウンウン 淡「ねーねーアラタ。もっかい、もっかいやって!」 灼「あ、いや。その……///」カァァ 持て囃す皆々様。照れる先輩。取り残される俺。 俺がおかしいのかなぁ? これ、俺がおかしいのかなぁ? なんかみんなちょっと常軌を逸し過ぎてない? 突込みが追いつかないんだけど。 やめるか。この面子に一々突っ込んでたら切りないからな。 菫「ボールが無くなってしまった」 まぁな。っていうか、菫先輩は常識人の、こちら側の人間だと思ってたのに酷い裏切りだよ。こんなのってないよ。 淡「新しいの取ってくる!」 駆け出す淡。 京太郎「おい、ちゃんと前見ないと」 言うな否や、 玄「きゃうっ!?」 淡「あわん!?」 近くにいた玄さんにぶつかった。 跳ねる肢体。撓む身体。弾むおもち(二回目)。 解れる結び目。零れる、……えっ!? 玄「はうっ!?///」 咄嗟に胸元を押さえる玄さん。吸い寄せられそうになる視線を気合で逸らす。 玄「み、見た……?///」 顔を真っ赤にしながら恨みがましい目で問うて来る玄さん。 京太郎「……」ブンブン 千切れんばかりに首を振る俺。 女性陣「……」ジトォ 疑わしいと言わんばかりにねめつけて来る。これ俺の所為か? 玄「k、京太郎くんはもう大人だから……、玄の裸を見てもいやらしい気持ちになったりは、しないんだよね?///」 ん? いや待て、俺は常識人として振舞いたいね。ここが紳士と変態の分水嶺。 京太郎「大丈夫ッス。僕、そういうの興味ないんで」 完璧。これなら俺に掛けられた嫌疑、も……。 玄「ふ、ふふふ……あはは、興味ないんだぁ?」 あれ? なにこの空気? 京太郎「ってかあれ、みんなどこ行った?」 気付けば、回りには俺と玄さん以外誰もいなくなっていた。普段なら鬱陶しいくらい絡んだ来る淡や照さんの姿もない。 玄「あははははは」 哄笑する玄さん。煌めく銀色。…………え? 玄「ザックリザックリwwwwwザックリザックリwwwwwwザックリザックリwwwwwwザックリザックリwwwwwザックリザックリwwwザックリザックリwww」 玄「ザックリヨイショwwwwwザックリヨイショwwwwザックリヨイショwwwwwwwwコレハドウカナァ?wwwww蛇翼崩天刃!」ザシュザシュザシュザシュ 京太郎「玄さん、それ、蛇違いや……」 玄「千魂冥烙……」 ポロリもあるよ!(俺の首が) けど痛くないよ!(即死だから) 京太郎「はぁっ!?」ガバッ 急激に意識が覚醒。コンクリ床の上で俺は勢いよく上体を起こす。 誠子「あ、起きた?」 京太郎「はぁ……はぁ……あれ?」 そこは亦野先輩が釣りをしていた埠頭。 誠子「大丈夫? すごい汗だけど」 京太郎「え? あぁ……」 頬を伝う雫を手の甲で拭う。 誠子「うなされてたけど、いやな夢でも見たの?」 京太郎「ええ、まぁ、はい。なんか、バタフライナイフと鎖持った玄さんに追い掛け回される夢見ちゃったよ」 俺は頭を振り、悪夢を追い払う。 京太郎「そんなわけないですよね。いつもにこにこしてて優しい玄さんに限って」 誠子「あはは、まぁ、ね?」 京太郎「なんか、ここ来てからおかしな事ばかり起きてる気がする」 誠子「ねぇ須賀君。ここから何が見える?」 京太郎「はい?」 亦野先輩が指差す先。そこに広がるのは……。 京太郎「海、ですか」 誠子「そう。私はね、昔からなにかあると海を眺めに行ってたんだ」 誠子「私は白糸台の中じゃあ凡人な方だし、そうでなくても昔からなにをやるにも失敗は付いて回ったからね」 誠子「だから落ち込んだことがあると、こうやってよく海を眺めてたんだ」 誠子「そうすると、なんだか自分の悩みが酷く小さなものに思えてね。また次もがんばろうってそんな気になれるんだ」 京太郎「それが高じて釣りが趣味になったんですか?」 誠子「はは、まぁね」 誠子「だからまぁ、君もここでしばらく海を眺めて行くと良いよ」 青い空。白い雲。寄せてはかえす潮騒。果てしなく続く水平線。 ささくれた心が凪いでいくようだった。 京太郎「先輩」 誠子「ん?」 京太郎「ありがとうございます」 誠子「これでも年上だからね」 京太郎「はは、ご尤も」 顔を見合わせて笑う。穏やかな笑みだった。 誠子「むっ!?」 柔和だった先輩の表情が引き締まる。それに合わせて俺たちを取り巻いていた空気が帯電して行く。 誠子「掛かった!」 先輩の声に導かれ垂らされていた釣り糸を見る。それは先程のまでの緩んだものではなく、 獲物が掛かったことを告げるように強く張られていた。 誠子「これは、大きそう!」 苦々しく呟きながら先輩の顔が強張る。俺は置かれていた釣り用タモを手に取る。 誠子「それはいいから今はこっちを手伝って!」 先輩の声に俺はタモを投げ出し、竿を握る先輩の手に自身の手のひらを重ね竿を立てる。 獲物も必死で抵抗する。海面に連なる釣り糸が右へ左へと激しく動く。 竿を持っていかれそうになるのを踏ん張りながら耐える。先輩の手は必死で竿を起こしながらリールを手早く巻き取っていた。 海面に魚影が浮かび上がってくる。これはなかなかの大物だ。目算で50cm前後。 ここで一か八か。 京太郎「先輩、ここは俺に任せてください!」 誠子「任せててって?」 京太郎「こうするんですよ! …………とぅ!」 俺は先輩から身を離し迷わず海へ飛び込んだ。 誠子「……………………………………………………へ?」 ワー! キャー! 和「なにやら騒がしいですね」 咲「どうかしたのかな?」 穏乃「大変大変! 海で誰か溺れてるんだって!」 憧「えぇ!?」 晴絵「うちの子たちは全員いる!?」 晴絵「各校の部長は点呼取って」 灼「阿知賀は全員いる」 久「清澄も、あら? 須賀君は!?」 菫「うちに亦野もいない」 照「誠子は埠頭のほうに行ってた。京ちゃんがそっちに行ったのを見たからたぶん2人は一緒に」 淡「そんな! セーコ先輩とキョータローが」 菫「落ち着け、あの2人に限ってそんなことは……」 灼「でも、もしかしたらってことも」 晴絵「私は現場に行ってくる。あんたらはここ待機いいね?」 灼「ん…」コク 久「はい」 菫「わかりました」 晴絵「2人ともどうか……」ボソ タタタタッ 咲(…………京ちゃん) オイ、アレウイテルノヒトジャナイカ!? ライフセーバーマダカヨ!? 晴絵「どいて、どいてください!」 そこで目にしたのは波に揺られる人影。 遠くて見辛いが、それは辛うじて金髪だと判断できる。 晴絵「まさか、ホントに須賀君!?」 咲「そんなっ!?」 思わぬ声に、晴絵は脇を振り返る。 晴絵「宮永さん! 待ってろって言ったでしょ!?」 咲「だって私! 京ちゃんと仲直りしてないんです! なのに、なのにこんなのって……!」 咲は涙を零しながら海水を掻き分け、海へ入って行こうとする。 晴絵「バカ! 素人が勝手なことするんじゃない!」 咲は静止の声を振り切り、大切な人の許へ駆け出していた。 誠子「いやー、須賀君がテトラポットに頭から激突していった時はさすがにどうしようかと思ったよ」 京太郎「あはは、まさか俺も埠頭の先から海まであんな距離があるとは思いませんでしたよ」ダラダラ 誠子「ところでまだ血、止まってないけど大丈夫?」 京太郎「大丈夫大丈夫。こう見えて血の気は多いほうなんで」 誠子「そっかそっか。でもおかげで大物が釣れて良かったよ。これは竿頭は須賀君に譲らないといけないかなぁ」 京太郎「よしてくださいよ。俺はただ手伝っただけなんですから」 ワー! キャー! オンナノコガー! 京太郎「なんか騒がしいですね」 誠子「なにかあったのかな?」 京太郎「ちょっと見てきますね? すみませーん、なにかあったんですか?」 晴絵「どうする。私が行くか? けど私まで溺れたら、誰が……くそっ情けない!」 京太郎「先生? どうしたんですか?」 晴絵「ああ、実は須賀君が海で溺れたらしくてそれは助けるために宮永さんが海に」 京太郎「なにぃ!? 俺を助けるために咲が海に!?」 言うが早いか、京太郎は荷物をその場に放り出し海へと駆け込んでいった。 晴絵「あれ!? 須賀君!?」 誠子「あの、先生。どうかしたんですか?」 晴絵「あれあれ? 亦野さん?」 誠子「はい、亦野ですけど?」 晴絵「あれー?」 咲(京ちゃん! 京ちゃん!!) 咲は必死に泳いだ。 泳ぎどころか、運動すら得意とはいえない自分だけどそれでもなお懸命に手足を動かした。 けれど大自然のうねりの前に非力な少女一人の力など矮小に過ぎた。 日が傾きはじめことにで海面が上昇し、波が高くなっていたのだ。 しかし遂に、咲は水面のに漂うそれへと手をかけた。 大切な人への思いが限界以上の力を発揮したのだ。 咲「京ちゃん! 大丈、……え?」 咲の掴んだそれは、幼馴染の少年でもなんでもなく単なるマネキンだった。 デパートの服売り場で悠然と佇んでいる様などこにでもある人形。 水難事故は誤報だった。 安堵と、それを上回る虚脱感。全身の一気に抜けた。 その瞬間、まるで悪意あるもののように迫る高波が咲の身体を頭上から飲み込んだ。 俺は咲の向かった方角に走り出し、波打ち際の水面を蹴り上げたところで急制動。 視線を巡らせ、目当てのものを探す。 あった。 京太郎「すみません! それ貰っていいですか?」 若い男女の女の方が手に持っていたものを指差す。 女「え? こ、これ?」 それは飲みかけのペットボトルだった。 俺は強く頷く。その剣幕に押されて、女はペットボトルを差し出してくる。 手早く栓を外し中身をすべて地面に流す。そして再び栓をすると、それを握りしめながら駆け出した。 後方からなにやら声が掛かるがすべて無視。 京太郎(待ってろ咲!) 海中を進み、足がつかなくなったあたりから泳ぎに移行。 片手が塞がっているが、染谷先輩に習った古式立ち泳法を混ぜた泳ぎでなんとか進む。 一秒でも早く。咲の許に! 先行していた咲の姿が高波に飲まれる瞬間が目に入る。 焦る気持ちを精神力で抑え、なんとか距離を詰める。 海上に潜水艦の潜望鏡のように出していた頭部を引き下げ、潜水に移行。海中に沈んだ咲の姿を探す。 いた。少し流されたようだがおおよそ右手前方二時十三分の方向、目算で8メートル。 俺は海水を掻き分け、身体を水平に移動。 咲はまだ沈んで間もないため、辛うじて意識が残っているようで必死に手足をバタつかせている。 ここだ。ここからがもっとも神経を使う作業となる。 水難事故で最も恐ろしいのは二次災害だ。 たとえば、よくありがちなケースとして溺れた子供を大人がすぐに飛び込んで泳いで助けに行く。 っというのはよくある話だが、実はこれは最もやってはいけないことである。 水に溺れた遭難者は基本的にパニック状態に陥っているため助けに来た救助者に必死にしがみ付こうとしたりして暴れるため、 それによって救助者が逆に水に引きずり込まれまとめて溺れてしまうことになりかねないからだ。 極論からいえば、遭難者が気を失ってから助けに行くのが安全なのだが生憎、 目の前で苦しんでいる咲を放って置けるほど俺の気は長いほうではない。 俺は手に持っていた500ミリリットルの空のペットボトルの感触を確かめる。 本来なら1,5リットルのくらいの方がいいのだが仕方がない。っというかそもそも浮き輪なりなんなりを借りてくればよかった。 やはり、自分で考えている以上に俺は冷静ではないらしい。 慎重に咲へと近付いていく。 暴れる両手にぶつからない様に迂回しつつ、背中側に周り腰に腕を回す。 鼻先を手の甲が掠める感触に鼻の奥が熱くなるが、懸命の堪えて海上を目指す。 咲の左の肘が俺の脇腹を打つ。肺から気管支を抜けて呼気が抜けていき、俺たちよりも一足先に気泡が昇っていく。 三半規管の混乱を押さえ込み脚で水を蹴ってさらに上昇。 どうやら体力が限界に近いらしく咲の動きが次第に弱まってくる。 ここで手にしていたペットボトルを咲の顎下に添える。 これは所謂、『浮き』の役割で即席の救命具だ。 海面の表面張力を突き破り、俺たちはなんとか海上へと顔を出した。 貪るように酸素を吸い込む。口を開閉させ、肩を上下させながら全身で空気を取り込む。 俺に抱きかかえられた咲は、一度大きくむせ返り鼻と口から海水を吐き出す。 それから一呼吸置いて弱々しいながらもなんとか自力で呼吸していた。 安堵の溜息。なんとか最悪の事態は回避できた。 両手が塞がっているため、バタ足しかできないがそれでなんとか水を蹴って沖を目指す。 腕の中に納まる咲に目をやると、濡れた睫毛が微かに震える。 咲「ん……あれ?」 視界に靄がかかったように焦点が定まらず茫々と宙を泳いでいる。 泳いでるのは俺なんだけどね。なんて冗句が浮かんでくるくらいには心身ともに回復してきた。 いや、身体は疲れきっているが咲の無事がわかっただけでも俺にとっては活力元となる。 京太郎「気付いたか?」 咲「京ちゃ、え!? なんで?」 京太郎「いいから、もうしばらく大人しくしてろ」 咲「う、うん」 いろいろ問い詰めたいんだろうが身体が疲れきっているため今は俺の言葉に従い口を噤む。 問い詰めたいのは俺のほうだと言いたいが、俺もおしゃべりで無駄な体力の消耗は避けたい。 突如発生した高波の身体が煽られる。 咲を放すまいと腕に力を込める。甲高い悲鳴。 咲「ちょ、ちょっと! どこ触って!?」 京太郎「どこも触ってねぇよ! いいから大人しくしてろ」 またも波に飲まれそうになる。波濤が渦を巻き、俺たちに覆いかぶさって来る。 咲「うひゃぁ!?」 顔を真っ赤にしながら溺れかけていたとき以上の勢いで手足を暴れさせる咲。 京太郎「バカ! だから暴れんなって!」 咲「だって京ちゃんがぁ!?」 再び左の脇腹に鈍痛。先程打ち付けられた部分と寸分違わず同位置に打ち込まれた。 わざとでは断じてないだろうが、自分の運の悪さが腹立たしい。 京太郎「落ち着け! なにもしない。もうすぐ陸だ、かっつ!?」 俺の言葉はそこで途切れた。 おわかりいただけるだろうか? 咲の脚が男の人体急所、即ち股間を正確の打ち据えた。 全身を打ち抜く激痛。視界に火花が散る。尾?骨のあたりから力が抜くていく。 普段の俺なら激痛に悶えるだけで済んだだろうが、いろいろ限界が来ていた俺に止めを刺すには十二分に過ぎた。 咲「あ、あれ? 京ちゃん?」 事態が飲み込めない咲が、急に弱まった拘束に疑問を感じこちらを振り返ってくる。 最早、返事を返すことすらできない。 薄れ行く意識の中、目にしたのは泣きそうな顔の咲。 ああ、そんな顔すんなよ。俺は大丈夫だから。 視界の空が減り、減った分を水の青さが増していく。 再び海中に沈んでいき、意識が暗黒へと混濁していった。 頭が頭髪の先まで沈みきり、最後に掲げていた右手を誰から触れた気がした。 ?「京ちゃん!」 誰だ? ?「京ちゃん!!」 誰かが俺の名前を呼んでいる。 暗闇が裂け、光が漏れ入ってくる。 自分が目蓋を開きかけているんだと気付き、そのまま一気に開け切る。 差し込む光量に、一瞬網膜が灼かれるがすぐに眼球が明度調整を行い、それに合わせて視界が戻ってくる。 目の前にあったのは唇。 小皺の見える鼻梁。 シミの浮いた浅黒い肌。 顎先にたくわえた髭。 白んだ眉毛。 禿げ上がった額。 それらをパーツとしたどう見ても中年男性の顔面が俺へと迫った来る。 京太郎「うわああああああああああああっ!?」 その横っ面を盛大に殴り飛ばしてしまった。 いや、だって……おえ、夢に出そう…………。 ?「ほう? 元気そうじゃないか?」 声とともに起き上がってきたのは、 京太郎「大沼プロ!?」 大沼「如何にも、ワシだ」 京太郎「え、あれ? なんで大沼プロが?」 大沼「決まっておるだろう。お前の貞操をいただくためだ」ジュルリ 京太郎「」 次回。 【たった一人の最終決戦】 白い砂浜。青い空。微細な違和感。 大沼「ははは、これー! 待たんかー!」 京太郎「来るなああああああああああああああああっ!?」 追いかけて来るホモ(中年)。 なに? なんなの!? なんで俺がこんな目に合ってるの!? 大沼「聞けぃ小僧!」 京太郎「っ!?」 先程の猫撫で声とは違う大沼のおっさんの突然の恫喝に思わず立ち止まる。 大沼「今、お前は死の危機に瀕しておる」 京太郎「どういう、ことだ?」 大沼「ここは此岸と彼岸の境界。言わばお前さんが見ておる明晰夢のようなものだ」 京太郎「明晰夢?」 確か、見ている本人が夢を夢と自覚しながら見る夢のことだったか? メカニズムとしては思考、意識、長期記憶などに関連する前頭葉が 海馬と連携して覚醒時に入力された情報を整理する前段階において、 前頭葉が半覚醒状態のために起こるとかどうとか。 言われてなるほどと思う。 身体を取り巻く鉛が纏わりついているような、独特の身体感覚のおかしさは夢の中のそれだ。 大沼「お前は今、海で水難事故に遭い生死の境を彷徨っている」 京太郎「……」 そうか、俺は俺を助けようとして海に飛び込んだ咲を追ってなんやかんやあって咲に……。 あの野郎。 大沼「日本とシアトルでは救命率がまるで違う。なぜかわかるか?」 京太郎「?」 大沼「日本の救急車はたとえば、緊急の走行中に目の前に別の車両が現れるとブレーキを踏む」 大沼「だがシアトルの救急車はノーブレーキで突っ込んでくる」 大沼「だから皆、臆して救急車を避けるから日本とシアトルでは救命率がまるで違う」 京太郎「? それとこの状況とどんな関係がある?」 大沼「…………ないな」 京太郎「……」 なぜ俺の周りには会話の前と後で論点がおかしい人間ばかりなのだろうか。 類は共を呼ぶ。ではない。っと思う……たぶん、きっと……。 大沼「ははは、すまんすまん」 大沼のおっさんは照れたように頬を掻きながら笑う。 京太郎「やめろ。中年のおっさんの照れ笑いを微笑ましいと思えるような奇特な趣味はないんだ」 大沼「貴様の引き締まった臀部を撫で回しながら、その菊門にワシのいきり立ったイチモツを捻じ込m」 京太郎「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」 おっさん(ホモ)の汚らわしい腐れ妄想を俺の絶叫が打ち消す。 京太郎「とにかく、そういうことなら俺は帰らせてもらうぜ」 踵を返しその場を後にしようとする。 明晰夢は見るのは難しいが覚めるの簡単だと聞く。このおっさんとの物理的な距離は関係ないが、なんとなくこの場にはいたくない。 大沼「帰ってどうする?」 京太郎「なに?」 大沼の挑むような声に、俺はつい振り返ってしまった。 大沼「帰ったところでお前に居場所はあるのか?」 大沼「すべての人間は部品だ。その部品が組み合わされことで世界が成立している」 大沼「だが、お前はどうだ? 物語の主筋に関わらない」 大沼「人数合わせの背景役の一人でしかないお前があの場に戻ってそれにどれ程の価値があるのだ?」 大沼の言葉に俺は打ちのめされていた。 確かにその通りだった。咲たちが輝かしい栄光をと賛美を浴びる一方で俺は県大会初戦敗退という、 なんの価値もない結果しか残せなかった。 初心者だから、などという言葉は言い訳にもならない。 結果がすべてなのだ。努力した人間すべてが評価されるなどそんなことはありえない。 大沼「戻ったところで辛いだけだ。ならこの場に留まり、ワシと肉欲の限りを尽くすほうが建設的だ」 その言葉はまるで甘露のように俺の身の内に甘く染み込んでくる。 そうなのだろうか? そうすることが正解なのだろうか? 『京ちゃん』 弾かれたように顔を上げる。 中空に気泡が浮かんでいた。その内側には懐かしい思い出たちが投影されていた。 京太郎「悪いなおっさん。やっぱ俺は帰らなくちゃいけないみたいだ」 大沼「ほう?」 京太郎「俺が側にいないとさぁ、咲が泣いちまうんだよ!」 大沼「だが、そうかといってお前を帰すとでも思っているのか?」 話を最後まで聞かず、俺は砂利を蹴り立てて前方へ疾走。 京太郎「こういうわけのわからない状況ってのは、大体その場に現れた奴をぶっ飛ばせば目が覚めるって規約というか相場があるよな!」 一気に間合いを詰め、互いの殺傷圏が衝突。 身を捻りながら背中から肉薄。身体ごと旋回させ右足を軸に裂帛の回し蹴りを叩き込む。 だが大沼は数歩横に移動しただけで俺の蹴りを躱す。 左に上体が流れたその勢いを利用して、地を舐めるよな下段からの右拳の打ち上げを大沼は状態を逸らしただけで難なく回避。 詰め寄った大沼が俺の眼前に掌を翳し、視界を封殺。反射的に動きを止めた俺の右側頭部に、そのまま裏拳が打ち込まれる。 さらにその動きに合わせて、砂利に踏み締めていた俺の軸足を捌く。 空手における禁じ手の一つで、頭部を左側、軸足を右側に弾くことで視界と身体が半回転。 このままでは垂直に頭から地面に落ちる!? ……ことはなく上下を逆さまにされたまま足を掴まれ宙吊りの状態にされる。 見上げる俺の決死の視線と、大沼の余裕の笑みが絡み合う。 そのまま背後へ放り投げられた。空中で内臓が浮く感覚に全身が総毛立つ。 懸命に身を捻り、両手両脚で砂浜を削りながら手負いの四足獣の姿勢で急制動。 視線の先。大沼秋一郎はただ悠然と佇んでいた。 その余裕の態度が癪に障る。 体勢を立て直し、爪先で間合いを詰めながら接近。相手の呼吸に合わせ不意を突いて加速。 颶風を纏いながら疾駆。再び拳と蹴りの旋風を見舞ってやる。 だが大沼はそのすべてに反応し、完璧に対応して見せた。 京太郎「はぁ……はぁ…………」 俺の方だけが一方的に消耗していた。 大沼「わかったろう? お前は現実でも夢でも誰にも勝てない。指一本触れることもできず、ただ敗北に打ちのめされるだけだ」 どうする? 小技で攻めてもすべて対処される。 となれば対処しきれない程の飽和攻撃で一気に攻めきるしかない。 あれをやってみるか。 背筋を伸ばし、深く息を吸い込む。咲、俺に力を貸してくれ。 京太郎「確かに、俺にはこれといって秀でた才能はないし、英雄のような勇ましさも賢者のような賢明さも聖人のような高潔さもない」 京太郎「けどなぁおっさん。そんな平凡な俺のくだらない冗句を笑ってくれる奴が俺の周りにはたくさんいるんだ」 京太郎「そんな奴らが夢の為に懸命に戦ってきた。俺はずっとそれを側で見てきた」 京太郎「俺はこれからもそいつらの手助けをしてやりたい。俺にしか出来ないことだってあるはずだ」 京太郎「そういう在り方ってのも、意外と悪くないもんだぜ?」 憮然とした態度で黙っていた大沼の目がはじめて驚愕に見開かれる。 もう遅い。俺のくだらないおしゃべりに気を取られていたお前はすでに俺の術中に嵌っている。 大沼秋一郎を中心に周囲を、半球状の霞が満ちている。 雲は膨大な数の俺自身。半球内部に向け拳と視線を向けていた。 しかし数を数えようとすると不可能になる。その姿は見えるようで見えないという不可思議な光景。 大沼「なんだ、これは?」 大沼は須臾と、退くか進むか逡巡した。その一瞬が致命的となった。 大沼を包む雲から無数の須賀京太郎が同時に疾走。 迫る俺たちを迎え撃とうと拳や蹴りが放たれるがどれ一つとして捉えられない朧がかった霞の群れ。 無理に迎撃しようとして、体勢の崩れたプロ雀士の身体に俺は打撃の旋風を打ち込んでいく。 顎下、左右のこめかみ、右頬、首、両肩、右上腕部、左前腕部、右手首、左胸、 鳩尾、両脇腹、両太股、両脛、足払いを決めつつ、最後に眉間を打ち抜く。 傾斜していた大沼の身体は後方へ大きく吹き飛んでいった。 不確定性原理によって運動が決定された身体は位置が定まらなくなり、存在する場所を確率でしか現せない粒子の雲となる。 本来なら、身体が対象に接触する確率の総和が時間的に変化しないことを、 確率の保存が保証し空間内の確率密度の総和も必ず1となるしかない。 だが、身体が位置rに存在する絶対確率を表す方程式を操作し、 確率密度の総和を1以上の膨大な数に引き上げてやることで数え切れないほどの須賀京太郎を並行的に同時存在させる。 限定空間内の、自らの意思でコントロール可能な明晰夢という、物理法則が一定に機能しない世界だからこそ出来る芸当。 量子を身体に置き換えて確率保存を破るため、打撃が刺さる瞬間までどの俺も決して捉えることは出来ない。 早い話が分身の術だ。須賀京太郎は分身する。これは世界の共通認識。なーんつってつっちゃって。 大切な人たちを護るためと教わっていたが、現実では扱えないと放棄していたがまさかこんな形で役に立つとはな。 京太郎「けどまだまだ、ハギヨシさんの様にはいかないな」 小さく呟きつつ、警戒心を緩めないよう心掛けながら大沼へと歩み寄る。 大沼「まさか、こんな姑息な手に引っ掛かるとはな」 京太郎「の割には、どこか満足気なのは気の所為か?」 大沼「行くのか?」 京太郎「………………ああ」 大沼「この先、お前自身が報われる保障などどこにもないぞ?」 京太郎「それでもだ。生きる意味や理由付けなんて暇人の思考遊びだ」 京太郎「俺はポンコツの世話で忙しいんだ。一々そんなことを気にしてる暇はないよ」 大沼「そうか」 京太郎「…………ありがとな、おっさん」 大沼「礼などいらん。ああ、だが一つだけ心残りがあるとすれば……」 京太郎「?」 大沼「貴様との腐肉の饗宴を開けなかったこ、ったぶぁわっ!?」 ふざけたことをのたまう中年ホモの顔面を盛大に踏み付けて黙らせ、今度こそ俺はこの世界から抜け出すことにした。 周囲を取り巻いていた風景が歪み、それに代わって網膜を灼く莫光が視界を埋め尽くす。 身体が引き上げられるような浮遊感。目を開けていられない様な閃光の中で俺はあの、懐かしい笑顔と声を感じた。 急激に意識が覚醒する。 見開いた視界に、白い肌。茶色がかった前髪と、瞑られた目蓋の縁の睫毛が意外と長いなと、どうでもいいことに気付いた。 口元に粘膜の感触。合わされた口腔から、肺腑に息が送り込まれてくる。 内側に苦痛が生まれる。 込み上げてくる不愉快な嘔吐感とともに、胃の中から海水が競り上がってくる。 激しく咳き込みながら、身を捩って水を吐き出す。 鼻と口を手の甲で拭いながらようやく一息ついた。 状況に混乱しつつ、周囲を見回す。 俺を取り囲むように、学校の面々が俺を見下ろしていた。 俺はゆっくりと上体を起こす。 傍らに座り込んでいた咲と目が合った。 咲「京、ちゃん……」 京太郎「咲……」 咲「京ちゃん! よっかたよかったよぉ、京ちゃぁぁん!」 弾かれたように縋り付いてくる咲を抱きとめる。その身体の熱さが、俺が生きているということを実感させた。 しゃくり上げる咲の背を優しく撫でる。 京太郎「お礼を言うのは俺の方だ。咲は俺の命の恩人だ」 咲は無言で首を振る。俺は背を撫でていた手を咲の頭に置く。 京太郎「本当に、本当に助かった。もう少しで……」 死に掛けている間に見た夢の内容が脳裏にフラッシュバックする。 目尻に熱い雫が溜まり、零れ落ちて頬を伝う。 京太郎「怖かった……ホモに追いかけられる夢見ちゃった……」 全員「マジ泣きだ……」 みんなの声が妙に優しかった。
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3957.html
前話 まとめ それからの話を、俺、須賀京太郎がしようと思う 試合が終わったその時のことはあまりよく覚えていない 笑いながら泣いていたる部長、声をあげて泣いている優希と和、二人をなだめている染谷先輩 そして、画面の向こうで目を閉じて少しだけ微笑んでいる咲、みんなの顔だけは、よく覚えている 俺は咲を迎えに行った 対局室前で、 淡「テルーやったよ!!これでKちゃんゲット…え!?無い!?なんでー!?」 何か淡が白糸台の人達相手に騒いでいた アイツ、優勝して何が不満なんだ? 穏乃や臨海の大将も、え?みたいな顔をしていた気がするが……気のせいだろう とりあえず咲の手を引き、控え室に戻った 咲は堪えていたようだが、控え室に戻った途端、優希や和と泣いていた そして、清澄高校の団体戦は終わった インタビューやらなにやらあったが、適当に流して俺たちはホテルに帰った 久「優勝できなくてすっごく悔しいけど……すっごく楽しかったわ。まこ、それにみんな。後をお願いね」 そう言って部長、竹井先輩は染谷先輩を次の部長に任命し、個人戦の準備をすると言った お疲れ様です あなたがいたから、ここまで来ることができました ありがとうございます その数日後、個人戦は始まった 咲も和も気持ちを切り替えて個人戦に臨んでいるようで安心した しかし、とんでもないことが起きた 個人戦2日目の午後 チラホラ去年活躍した実力者なども出始めるこの日に 咲「えっと……よろしくお願いします」 照「……よろしくお願いします」 姉妹対決が実現してしまった なんでだよ! そう思ったのは確実に俺以外にいるだろう 最後の最後、全国1位を決める試合! そういうところで当たるべき二人だ 神様、いたらとんでもねーわ この二人をこんなところで当てるし 照「なんて言うか……こんなとこで当たると思わなかった」 咲「うん……私も」 照「でも……全力でいくからね?」 咲「私だって……負けないよ、お姉ちゃん!」 その日のどの試合よりも注目された試合になった 試合内容は……二人の選手が可哀想とも思える内容だった 最後に選手が一人飛んで僅差で照さんの勝ち、という結果で試合は終わった 飛んだ選手は全国的に見ても無名だったらしく、実力差は歴然だった 試合終了後、それ以降の試合は棄権したとか ただ、その卓にいたもう一人の選手は、直接の振込みそのものは無かったがツモで削られて3位という結果だった しかし、全国1位の宮永照 その妹で、自身より明らかに実力が上の宮永咲 その二人を相手に、最後まで諦めず、むしろ勝ってやろうという姿勢で打った彼女は、各所で活躍した選手達とまた違う意味で有名な選手となった 彼女はその後の試合も最後まで出場し、相手がどんな有名で、どんな強敵でも最後まで諦めずに打った 後に彼女はこう言っている やえ「諦める?最後まで勝ちにいかないニワカのような真似を私がやるわけないだろう!」 彼女のその姿勢は、王者のようだった その後の咲は、燃え尽きたのか照さんとの直接対決に満足したのか、それまでほど圧倒的な勝ち方じゃなかった それでも、相手が勝手に怯えたり、カタカタしたり、恭子の仇やーと燃えたりで、最終的な順位は21位だった 和は、相変わらずのデジタル打ちだった 団体戦の悔しさからか、今まで以上に早く『のどっち』になっていた しかしそれでも、全国の壁は高かった 個人戦最終日、和の相手は荒川憩さんに、辻垣内智葉さん、神代小蒔さんだった さすがの『のどっち』も、この実力者ととんでもないオカルトには敵わず、8位という結果に終わった 和「……そんなオカルトありえません」 戻ってきた第一声がそうだった 和はどこまで行っても変わらないな…… 個人戦の優勝はやっぱりというか、当然の如く照さんだった 優希「いや……アレ無理だって」 珍しく真面目な顔の優希がそう言う 優希「ドラ無しで私フルボッコだじぇ?ドラ縛りなけりゃーこうなるって。あんなんと渡り合った咲ちゃんが凄すぎるじょ」 うん、気持ちは分かるが照さんをアレとかあんなんとか言うのはやめろ? 麻雀以外なら無害かドジなお菓子好きの人だから あ、咲も似たようなもんだったな 優希「……なんで咲ちゃん21位なんだろ?」 本人のやる気の問題だな こうして個人戦も終わり、インターハイは幕を閉じた 閉会式で開会式の時のような視線を感じたが……どうでもいいか みんな知り合った何人かの人に挨拶をして回った 竹井先輩や和はマスコミのインタビューもあったようで忙しそうだった でも竹井先輩……挨拶の相手なんか多くないですか? 俺も一応知り合った人には挨拶をした やけに惜しまれたりまた連絡してと言ってくる人が多かった 煌「あなただけでなく、和や優希も、また会いましょうね」 姫子「れ、連絡待っとるけんね!」 哩「その……タコス、美味しかったよ。また、会ってくれる?」 桃子「帰りは別っすからねー。今度また合宿とかやるっすよ!」 ゆみ「全くモモは……ああ、私もその時はまた参加したいな」 穏乃「今度遊びに行くからね!」 憧「その……メール、するからね?」 玄「ぜひ!ぜひ長野のおもちを教えてね!!」 宥「あったかいあなたに会えてよかったよ」 灼「……こ、今度ボーリングでも」 エイスリン「……ハイ!」(海外の住所と連絡先とハートのイラスト) 塞「あはは……忙しくなるけど、連絡するね」 泉「えっと……今度ネト麻とか……」 セーラ「またな!あ、今度は打とうなー!」 怜「……ウチ病弱やから、こまめに連絡してな?病弱アピール?……連絡してほしいんはホンマやで?」 竜華「あんま話す機会も無かったけど……大阪に来た時は連絡してな?」 洋榎「大阪来たら連絡やで!え?これ言われたん2度目?……ウチを先にな!」 絹恵「お姉ちゃん、そこはうちだけって言えばええんちゃう?……あ、サッカーとか興味ある?近いうちに試合あるんがやけど…」 洋榎「絹!?絹が……絹が逆ナンしよるなんて……おかんと浩子に言ったるー!!」 絹恵「お姉ちゃん!?知ってる人相手でも逆ナンて言うん!?」 ダヴァン「東京とアメリカに来た時はぜひ連絡を!おいしいラーメンをご馳走シマス!」 明華「アメリカでラーメンはないと思いますよ。またお会いしましょうね」 ネリー「監督に頼むからさー、うちに来ない?」 智葉「引き抜くなっつったろ!!……ああ、前に言ってた件だが……大丈夫だ、そちらの部長とも連絡先は交換した近いうちにまた会おう」 ハオ「楽しみですね。また会えるのが」 憩「体は気ぃ付けてなーぁ」 やえ「うむ、体調管理は基本だからな!それを怠るようなニワカな真似はするなよ!……あ、Kちゃんってどうやったら買える?」 春「はい黒糖……また送る……」ニコッ 初美「はるるー?なんでそんな笑顔ですかー?あ、このお面どうぞー!……冗談ですよー?」 誠子「今度、長野に釣りに行くから、その時連絡するよ」 尭深「私も行くから……美味しいお茶、持っていくね?」 菫「その……約束、覚えているよな?ああ、必ず君に麻雀を教えるよ。うん、また」 淡「絶対絶対連絡してね!絶対の絶対だよ!!……私からも、絶対連絡するからね?」 照「夏休みの内に、一度長野に帰るから。うん……いろいろ難しいかもしれないけど、私と咲は大丈夫だから……また3人でね?」 みんないい人だ そこからはあっという間だった ホテルで荷物をまとめ、俺たちは長野に、清澄高校に帰った 清澄高校に帰った俺達を待っていたのは……多くの人達だった 久「え?……これ……」 副会長「お疲れ様です……えーっと……会長達が今日帰ってくるって聞いて……」 「会長!お疲れ様です!」 「準優勝とか……すごいです!」 「準優勝記念だ!学食のタコス割引だよ!!」 「おう!またラーメン食っていきな!金はいらねぇよ!腹一杯食ってけ!!」 マホ「先輩方お疲れ様です!全国大会、すごかったです!!もうすごくてすごくて!!それで……えと……」 裕子「落ち着けって……先輩方お疲れ様です。なんていうか……感動しました」 久「……もう……いらないって……言ったのに……」 竹井先輩の目が潤んでいたのは、見間違いじゃないと思う 後ろには、見覚えのある同級生から知らない上級生までいた おそらく先輩たちのクラスメイトや友人だろう 「お疲れ様!」 「会長すごいぜ!」 「まこー!今度お店行くねー!!」 「優希やるじゃん!」 「原村さんもすごかったよー!」 「宮永さん最後かっこよかったー!!」 「須賀帰れー!」 最後誰だコラ 久「もう……騒がないの!ああもう……お土産もっと買っとけばよかった……」 まこ「そうじゃな……おいおい、ウチの店の常連まで……どさくさまぎれてチラシ配りよる……」 しばらく騒がしそうですね 久「もう……やっと解放されたわ」 今は部室にいる あれからしばし揉みくちゃにされた 俺はどちらかと言うと叩かれまくったが 副会長とか全力だったな…… 久「さてと……賞状やらなんやらは部室でいいわね?」 まこ「ああ。また夏休み明けにいろいろあるじゃろうが……とりあえずは置いといていいじゃろ」 優希「それじゃあラーメン食べにいくじぇ!」 咲「うん。何人かは待ってるって言ってたよね?」 和「はい。あのお店に入る人数でしょうか……」 そう言いながら外に出て、ラーメン屋に向かう その途中、1台の車が俺達の近くに停まった 京太郎「ん?まだ待ってる人がいたのか?」 和「この車は……」 優希「……のどちゃん?」 車から、一人の男が降りてくる 咲「和ちゃん、知り合い?」 和「……父、です」 和は、震えていた 和父「……帰ってきたと聞いて、来てみたが」 和「その……今からみんなで夕飯を……」 和父「そうか……以前言ったことは覚えているな?」 和「……はい」 一体、なんなんだ? 親子というのに、和は今にも泣きだしそうな顔だった 和父「試合自体はテレビで見ていた……団体戦は準優勝で、個人戦で8位だそうだな」 和「……はい」 和父「……和」 和の肩がビクッっとなる 和父「……来年は頑張れよ」 和「……え?」 和父「荷物があるなら持っていこう。後で迎えに行くから連絡するようにな」 和「えっと……荷物は……ありますけど……え?」 和父「うむ……成績だけは落とさないように」 和「あ……はい!!」 和父「ではな。高校生だから、あまり遅くならないように」 和「あの……どうしてですか?」 和父「……何、頑張る娘を邪魔することを、やめようと思っただけだ」 そう言って和の父親は行ってしまった 久「邪魔って一体……和!?」 和は、泣いていた 優希「ど、どどうした!?何があったんだじぇ!?」 まこ「お前さんの親父のせいか!?成績とか、いったいなんなんじゃ!?」 咲「その……お父さんと、喧嘩?」 和「いえ……違います」 和は、泣きながら、嬉しそうに言った 和「……麻雀を続けていいということが……嬉しくて……」 後で、和と父親がしていた約束を聞いた 色々と思うことはあるが……良かったな、和 そして、数日が過ぎた 京太郎「咲……」 咲「……何?」 京太郎「頼む……お前にしか頼めないんだ」 咲「京ちゃん……でも……」 京太郎「俺にはお前しかいないんだ!!」 咲「……京ちゃん」 咲「……さすがに夏休みの宿題を丸写しはできないよ」 京太郎「頼むよー!!お前にしか頼めないことなんだよー!!」 俺は咲の家に居た 理由はにっくき夏休みの宿題だ 東京やらなんやら行ってる間、まっさらなままだったブツである これを残り数日で仕上げるなど、不可能だった 咲「なんで私なの?」 京太郎「先輩たちは忙しそうだし、和はこういうこと許さないだろ。優希は論外」 咲「京ちゃん、友達結構多い方だよね?」 京太郎「野郎共は全員爆ぜろだのもげろだのお前ばっかりだの言って無理だった」 俺が何をしたというんだ! そんな爆ぜたりもげたりするようなことやってないっての!! この夏は知り合いこそ増えたが東京でやったのは雑用ばっかりだ あいつらが羨ましがるようなことは一切やってない!! 咲「……なんとなくその男の子たちが言いたいこと分かる気がするなー」 お前までそう言うなよ! 京太郎「頼む!お前の言うことを何でも聞いてやるから!!」 咲「…………」 アレ?失敗した? そういえば決勝の時も言ってたけど、あの時は結局無しになった訳だし 京太郎「あの……咲?」 咲「しょうがないな、京ちゃんは」 咲はやれやれといった感じだった なんか、口元が緩みそうになってるぞ? おい、俺に何させる気が 今月のこずかいそんなに残ってねーぞ 咲「でも教えるだけ。いいよね?」 京太郎「ああ。それでも十分助かるけど、今日だけじゃ終わらねーぞ?」 咲「終わるまで付き合ってあげるからね」 持つべきものは優しい幼馴染だ…… 京太郎「それはそうと、俺に何させる気だ?」 咲「……あ、今日はあんまりできないよ?」 無視かよ 咲「お姉ちゃんが帰ってくるって言ってたし」 京太郎「照さんが?」 咲「ちょうどいいからこのまま会って…」 その時に咲の携帯電話が鳴った 咲「わっ!え、えっと……お姉ちゃんからだ」 照『もしもし咲?』 咲「お姉ちゃん?」 照『今駅に着いたけど……この辺り少し変わった?』 咲「あんまり変わってないけど……」 照『……見覚えが無い景色だけど』 咲「……駅まで行こうか?」 照『……うん』 電話が終わる おそらく相手は照さんで、駅まで行くという内容か 京太郎「俺も行こうか?照さんの荷物持ちくらいはできるぜ?」 後、迷子二人の保護者とか 咲「うん、それじゃ宿題は私の部屋に置いておく?京ちゃんもお姉ちゃんに会っていけばいいし」 京太郎「ああ、そうさせてもらうよ」 そのまま咲の部屋に行く 高校入ってからは初めてだがあんまり変わってねーな 咲「じゃ、その辺りに置いて」 京太郎「おう」 その時、咲の机の上にあるものに気付いた 京太郎「Kちゃんぬいぐるみ?」 それは俺が咲にあげた、正真正銘、最初に作られたKちゃんぬいぐるみだった 思えば、こいつがあったから全国でもいろいろな人と知り合えたんだよな 咲「あ……それ……」 京太郎「なんか懐かしいな」 咲「うん……大事にしてる」 京太郎「こいつができたのもちょっとしたきっかけだったのにな」 正直ただの思いつきで言ったらできて、何故か売れた『Kちゃんぬいぐるみ』 そういえば今度『ハギヨシぬいぐるみ』も発売するとか言ってたっけ 京太郎「……こいつのおかげとも言えるな」 全国で、いろいろな人と知り合えたのは 咲「京ちゃん?」 京太郎「ああ悪い。今行く」 咲の部屋を出る間際、振り返り、もう一度Kちゃんぬいぐるみを見る 気のせいかもしれないが、Kちゃんぬいぐるみが笑っていた気がした カンッ!! 前話 まとめ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3325.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1375789615/ 咲「なにそれ、私に対しての嫌味?」 京太郎「いーえ別に?」 咲「……」 ギュー 京太郎「いだだだだだっ!!」 咲「京ちゃんの耳、よく伸びるねー」ギュー 京太郎「すまんすまんすまん! 咲をおんぶできて幸せの限りだから止めろホント痛い痛い痛い!」 咲「……ふんっ」 ギュッ 京太郎「んっ」 咲「ほら……ちゃんと支えてよ…………落ちちゃうでしょ……」 京太郎「……へいへい……」 京太郎「仰せの通りに、ワガママなお姫様」ギュッ 咲「……//」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 深堀「あの…確かにおんぶされたいとはいいましたけど」 京太郎「ふ…くっ…!」プルプル 深堀「…無理しなくていいですよ?」 京太郎「いえいえ。こんな可愛い女の子のお願いだったら、多少の無茶だってお手の物ですよ…!」ニコッ 深堀(かっこいい…///)キュン 京太郎(それに胸が背中に押し付けられて俺も得させてもらってますから!) ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| ヒュー....... ドォーン! 咲「あ、花火始まったよ」 京太郎「綺麗だなー」 咲「だね」 京太郎「けど、これがインターハイに行かなかったから見れた、っていうのも皮肉な話だよな」 咲「……うん」 京太郎「……」 ヒュー ドォーン 咲「……ねえ、京ちゃん」 京太郎「ん、なんだ?」 咲「インターハイ、連れていけなくてごめんね」 咲「最後の年、だったのにさ」 京太郎「そんなん、咲が謝ることじゃねえだろ」 京太郎「俺だってこの三年間で何もできなくて、今年も個人戦突破できなかったし」 京太郎「こっちこそ、ごめんな」 咲「……じゃあ、リンゴ飴おごってくれたら許してあげる」 京太郎「なら俺は焼き鳥な」 咲「ふふっ」 京太郎「ははっ」 京太郎「そろそろ帰るか」 咲「うん!」 京太郎「んじゃ、お手をどうぞ、お姫様」 咲「もう、恥ずかしいんだよ、それ」 京太郎「わぁーってるよ」 ブチッ 咲「……鼻緒切れちゃった」 京太郎「うわ、マジかよ」 咲「あ、だけど片足だけでも大丈夫だよ、ほら」ピョンピョン 京太郎「そーゆーのいーから、ほい」シャガミ 京太郎「お姫様には立派な馬が必要だろ?」 咲「またそう言って……」 京太郎「よいしょ……っと。ま、白馬ってよりは犬だけどな」 咲「優希ちゃんじゃないんだからそんなこと言わないよ」 咲「京ちゃんは京ちゃんだよ、それに……」 ヒュゥッー ドォーッン! 咲「馬っていうなら地面に這いつくばってよ」 京太郎「それこの雰囲気で言う台詞か!?」 咲「だったらどんな言葉が良かったの?」 京太郎「いや、希望とかは別にねえけど」 咲「うーん、じゃあ……」 ヒュゥー 咲「……好き」 ドォーン 京太郎「……え?」 咲「とかの方が良かったかな?」ニコッ 京太郎「…………くっ」 京太郎「くそぉーっ!」 京太郎「男子高校生の純粋な心を弄びやがってー!」 京太郎「咲なんて市中引き回し、いや、夏休み中連れまわしの刑だぁーっ!」ドドドドド 咲「ちょっ、京ちゃん!止まってよ!」 京太郎「ウオオオオオオオオオ!ウオオオオオオオ!ニャンミー!」ドドドドド 咲「誰その人!?」 咲(……結局、残りの夏休みの間はずっと、京ちゃんと遊びました) カン! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「軽い」 咲「えへへ」 京太郎「軽すぎて心配になる」 優希「なにぉーっ!?」 京太郎「普通」 まこ「おうなんかコメントせえ」 京太郎「……ち、近すぎる」 久「密着しちゃうと落ちちゃうじゃない? ふふふ」 京太郎「でかい」 和「何を言ってるんですか貴方は」 京太郎「……意外とある!?」 怜「にへへー」 京太郎「ない(断言)」 泉「はっ倒すぞ」 京太郎「……意外とでけえ!」 セーラ「叫ぶなや!」 京太郎「コメントしづらい」 船Q「愛宕姉妹のある方ぐらい欲しいんやけどなぁ」 京太郎「俺もう死んでもいいや。死ぬには、いい日だ……」 竜華「死んだらあかんよー?」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「……ッ……ッッ」 ゆみ「須賀。 どうしたんだその格好は」 京太郎「あ……加治木さん……どうも……ッ」 ゆみ「……腰でも痛めたのか? どうも辛そうだが……」 京太郎「……み……見えないんですか?」 ゆみ「?」 京太郎「……いえ……なんでもないです……ッ」 モモ「~~ッ!」スリスリ 京太郎(東横さん……加治木さんの前ですけど……!!)ボソッ モモ(須賀くん須賀くん須賀くん須賀くん!!)スリスリスリスリ ムニュウウウウ 京太郎「うごぉ……ッ」 京太郎(片や背中に柔らかいものが当たり、片や首が猛烈に締まってるこの状況……) 京太郎「まさに、天国と地獄……」 ゆみ「?」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎『お、おんぶですか……』 京太郎『まぁ抱っこよか楽でしょうけど……』 姉帯『わあい!』 姉帯『(京太郎くんの背中におぶさる夢、やっと叶うよー!!)』 姉帯『わくわく!』 京太郎『…………』 京太郎『(短い人生だったなぁ……)』 京太郎『スゥ…………、…………南無三ッ!!』 グッ!! スッ 京太郎『あれ、意外と軽い』 姉帯『!!』ガーンッ ――― ―― ― 京太郎「とまぁそんなことで……」 塞「あーあーあー……」 姉帯「……」グスン ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 竜華「ん……うぅ……」 京太郎「あ、気づきました?」 竜華「……須賀……」 竜華「え、須賀?」 京太郎「俺ですが」 竜華「な、なな、何してんねん! お、おま! おま!!」 京太郎「この歳で俺なんかにおんぶされるのは屈辱でしょうけど、せめて部室までは我慢してください」 竜華「や、なに言っ……!」 フラッ 竜華「きゃっ!」 京太郎「っとと。 病み上がりなんですから無茶しちゃだめですよ」 竜華「な、なんでこないなことに……」 京太郎「覚えてませんか?」 竜華「……だってウチはさっきまで……皆と……」 京太郎「軽い脱水症です。 ちゃんと水分補給してなかったでしょう?」 竜華「あぅ……」 京太郎「怜さんじゃなくて竜華さんが倒れるとは、一瞬驚きましたよ」 竜華「……だ、だって」 京太郎「わかってます。 なんだかんだで竜華さんが一番部の為に頑張ってることは」 竜華「えっ……」 京太郎「皆さん怜さんのことばかり気にかけて……そりゃあ病弱な怜さんのことを気にかけるのは当然ですけど」 京太郎「でも、竜華さんだって一人の女の子なんですから」 竜華「な……」 京太郎「無理させてすいませんでした」 竜華「…………」 ポフッ 京太郎「んっ」 竜華「……」 京太郎「……竜華さん?」 竜華「……うっさい……。今ダルいんや……」 竜華「……ちょっと肩貸し……」 京太郎「……はいっ」 竜華「ん? というか、なんで部室で倒れたのに今部室に向かっとるんや?」 京太郎「あぁ、実はその後怜さんが貰い泣きならぬ貰い倒れしちゃいまして」 竜華「え、ええっ!?」 京太郎「ですので一度二人を保健室に運んだんです」 竜華「と、怜は!? 怜は大丈夫なんやろなぁ!?」 京太郎「大丈夫です。 俺がちゃんと看護してたんで」 竜華「そ、そか……」 竜華「…………ん?」 竜華「い……今なんて?」 京太郎「はい?」 竜華「と、怜を……看護……?」 京太郎「ええ。 それが?」 竜華「……須賀……お前まさか……」 竜華「怜の服、着せ替えたんか……?」 京太郎「あっ」 竜華「おまっ!その反応はやったなぁああああ!!?」 京太郎「いいいやでも大丈夫です!上着だけですから!!ホントに!!」 竜華「信用できるか! どうせドの付くド変態の須賀のことや……怜の身体の隅々まで……」 竜華「……というか……まさかウチも……!!?」 京太郎「………、………ハハッ」 竜華「須賀ァあああああああ!!!!!」 この後、大声の出し過ぎでまた竜華が倒れたとか。 おわり。 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「おんぶですか・・・」 詠「そそ。それをすればいいんじゃね? 知らんけど」 京太郎「つっこみはひとまず置いときますね」 詠「冷てー」 京太郎「放っておいて下さい」 京太郎「まぁ麻雀の指導のお礼なんで詠さんが納得出来るなら構わないんですけど・・・」 詠「なら問題ないだろー? ほれほれ、さっさとしゃがみな」ワクワク 京太郎「いや、無理ですって」 詠「うん? さっきいいって言ったじゃんかー」 京太郎「俺的にはやってもいいんですけど・・・」 詠「けど?」 京太郎「詠さんの着てる着物、その・・・足が開けないですよね?」 詠「・・・」 京太郎「・・・」 詠 ガバッ 京太郎「ちょ!! いきなり帯緩めないで!! 脱ぎ始めないで!!」ガシッ 詠「うるせー!! 私が脱げば問題ないだろうがっ」ジタバタジタバタ 京太郎「何言ってんのか理解してます!?」 詠「いいからおんぶしろ須賀ァ!!」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「論外」 照「 」 京太郎「論外」 誠子「 」 京太郎「論外」 淡「 」 京太郎「髪とかさらっさらですね」 菫「うん? そうか?」 京太郎「貴方が白糸台の、最後の希望だ」 尭深「そ、そうかな?」 京太郎「あ、すみません調子に乗りすぎましたすみませんごめんなさい爪と指の間にリー棒は入らないです許して下s」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 優希「おい、犬!」 京太郎「あん?」 優希「今すぐタコスを買ってこい!このままじゃタコスパワーが切れてイマイチ調子を保てないのだ」 京太郎「またか……たまには自分で買いに行ったらどうなんだ?いい加減俺もうんざりしてきたぞ」 優希「えーい、口答えする出ない!」 優希「原作じゃたいして出番のないお前にわざわざ使命を与え、出番を増やしててあげようとする私の心遣いに気付かないのか!」 京太郎「!!」 京太郎「そうだったのか……だから、お前はいつも俺にタコスを買いに行かせようとしてたのか……」 京太郎「ありがとな。お前の気持ち、確かに受け取ったぜ!じゃあ俺ちょっと行ってくるわ!」 優希「おう!5秒で頼むじぇ」 優希(こいつアホだじぇ) ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 春「こ、く……と…ぉ」カタカタ 京太郎「おいしっかりしろ!後ちょっとでスーパーだから!」 春「一度で良いから……和三盆のかりん糖が、食べたかった…」 京太郎「それ黒糖じゃないからな?色はどちらかと言うと黄色っぽいからな?!」 春「こまかいこと……今はいい」カタカタカタ 京太郎「やばい…重症だ」 春「………きいろ……目の前に……」カタカタ 京太郎「何言ってんのかな春さん?目が虚ろなんだけど」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 衣「zzz....」 京太郎「……」 一「なにそれ、コアラ?」 京太郎「知りませんよ……こっちが聞きたいくらいです」 純「すげえな、衣の奴、寝ながら須賀の肩にしがみついてるぜ」 京太郎「動くに動けないし……どうしましょう?」 一「普通に起こせばいいじゃん。 衣、衣。 ホラッ」ユサユサ 衣「んぅぅぅっ……やぁだぁ……」 純「やだじゃねえ、起きろって」ユサユサ 衣「や~!」スススッ 京太郎「うおおっ」 純「こ、今度は腹のほうに……器用だなおい」 衣「……えへへへ……きょーたろぉ……」ギュウウウウ 京太郎「……どうしましょう?」 一「なんかもう、いいや」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「うおおおおおおおおおおお!!タコスタコスタコスタコスうううううう!!」 トシ「あたたた……」 京太郎(ん?……何だあの婆ちゃん、横断歩道に突っ立って――」 京太郎(っておい、あそこ信号ねーじゃん。ずっとあそこに居たら……) プップー トシ「だ、誰か……腰をやってしまって動けなくなったわ……」 プップップップー!! 京太郎「や、ヤベッ!うおおおおおおおおおおお!!間に会ええええええええええええ!!」 ズサーッ ドッカーン!! 京太郎「ふう、危なかったぜ……大丈夫か、婆さん。怪我はないか?」 トシ「あらあら……すまないねえ。危ないところを助けていただきほんとにありがとうねえ」 京太郎「おう!気にしないでください!では俺はこれで――」 トシ「あたたたたた!!」 京太郎「ど、どうした!?やっぱりどこか痛めたのか?」 トシ「ええ、ちょっと持病の腰痛が悪化してねえ。ちょっと動けそうにないんだわ」 京太郎「おいおい、大丈夫かよ……」 トシ「心配させてすまないねえ。なに、30分くらい休めばよくなると思うから、お兄さんは気にしないでおくれ」 京太郎「婆さん」 トシ「?」 京太郎「ほら、俺のここに乗りな。おんぶしてやんよ。あなたのような美しい女性を俺には見過ごすことなんて出来ねえ!」 トシ「あらあら……美しい女性なんて言われたのは何十年ぶりかしら」 京太郎「さあ、どこでも送ってあげるから俺の背中につかまってくれ!」 トシ「じゃあ、お言葉に甘えて……よっこいしょ」 京太郎(おおう……なかなかエレガントな匂いがするぜ) 京太郎「で、どこに行くんだ婆さん」 トシ「そうだねえ。今麻雀の全国大会をやってるんだけど、そこの会場まで送ってもらえないかい?」 トシ「場所がわからないなら、その都度教えてあげるから」 京太郎「ああ、そこの会場なら知ってるから大丈夫だぜ――って」 京太郎「 麻 雀 ! ? 」 トシ「ん?どうしたんだい、何か気にでも触ったかい?」 京太郎「いや、俺も今その麻雀大会に雑用係として帯同してるんですよ!」 トシ「あらまあ、じゃあお兄さんも麻雀を……?」 京太郎「そうなんっすよ!でも、俺まだまだ弱っちくて県予選で敗退しちゃったんすわ!ははははは!」 トシ「そうかい……」 京太郎「ところで婆さんは何で麻雀の大会なんかに用があるんすか?お孫さんの応援にでもきたんですか?」 トシ「違う違う、私は岩手県代表宮守女子高校の監督をしていてね」 トシ「ちょっとカップラーメンを買いに外に出たんだけど、見ての通りこのありさまでね」 トシ「それで、危ないところをお兄さんに助けられて現在に至ってるのさ」 京太郎「ふーん……その年でカップラーメンですか。塩分過剰摂取に気をつけてな!」 トシ「ところで、あなた麻雀をやってるらしいわね」 京太郎「ああ!でもさっき言った通り、まだまだ初心者だからな。今日だってパシリされてここにいるわけで」 トシ「……」ジトーッ 京太郎「ん?どうした、婆さん。俺の顔に何かついてるか?」 トシ「……ちょっと話がかわるけどいいかしら」 京太郎「おう!」 トシ「私はこう見えて、他人の麻雀の才能を磨くのに長けていてね」 トシ「見たところ、お兄さんも荒削りながら、麻雀の素質が感じられるんだわ」 京太郎「ええっ?いやいやいやいや、俺なんて全然ビギナーのヘボプレイヤーっすよ。婆さんの節穴だって!」 トシ「いいや、節穴なんかじゃないよ。厳に私はこうやって宮守女子をインターハイまで率いたからね」 京太郎「……マジで?」 トシ「ええ、マジよ大マジよ」 京太郎「ゴクリ……」 トシ「それなんだがね、もし時間が空いてるなら宮守女子の控室まで来てもらってもいいかい?」 トシ「あなたを最強の雀士に育ててあげるから」 京太郎「最強の……雀士……!!」 宮守控室 胡桃「頑張れトヨネー!愛宕率いる春季大会5位の姫松なんかに負けるなー!」 エイスリン「ワタシタチ ゼッタイ ユウショウスル! サイコウノ オモイデヲ ツクルンダ!」 白望「はやく帰りたい……でも、豊音には勝ってほしいし……ダルい」 塞「いや、そこはダルがらないでちゃんと応援しようよ!」 コンコン 胡桃「ん?誰だろ」 エイスリン「キット トシセンセーダヨ。サエ、ドアアケテアゲテ」 塞「はいはい」 ギイッ 京太郎「うっす!」 塞「……は?」 エイスリン「トシセンセー……ジャナイ!!」 胡桃「あ、あんた誰よ!関係者以外は立ち入り禁止よ!はやく出てきなさい!」 トシ「こらこら、この方は私をここまで運んでくれた恩人なんだよ。邪険に扱わないでほしいねえ」 塞「あ、あれ?熊倉先生、いたんですか」 エイスリン「ナンデ オンブサレテルノ?」 トシ「いつものあれだよ。突発性腰痛だよ。それより、ここまで運んでくれたお兄さんに感謝しないとねえ。どうもありがとう」 京太郎「ああ、別にいいっすよ!俺、こういう扱いには慣れてるんで!」 胡桃「なんだか状況をイマイチ把握できないけど……そこの人、ゴメンね」 エイスリン「ユルシテチョンマゲ!」 塞「どこでそんな言葉覚えてるの……?」 白望「あっ、もうオーラス……」 塞「嘘っ!?」 胡桃「トヨネ頑張れー!!負けるな、ファイトー!!」 咲『ツモ、400・800です』 ウオオオオオオオオオオオオオオオオ 豊音『えっ』 『2回戦第3試合決着――!!準決勝に進むのは長野代表清澄高校と南大阪代表姫松高校となりました……!!』 胡桃「ぎゃああああああああ!!やられたああああ!!」 塞「そんな……私達の夏はここで終わってしまうの……?」 エイスリン「Oh……I was very sad」 白望「……」 京太郎「おっし、咲のやつやってくれたぜ!これで準決勝進出だぜ!」 京太郎以外「は?」 シーン…… 京太郎(なんだ?急に静まって……っておい!ここ対戦相手校の宮守女子の控室じゃねーか!!) 京太郎以外「……」ジトーッ 京太郎(やべぇよ……やべぇよ……つい、咲の姿を見て応援しちまったよ……) 京太郎(くそっ!俺はバカか。婆さんもつい数レス前まで宮守女子の監督してるっていってたのに……) 京太郎(雰囲気も優希がタコスを切らして不機嫌な時みたいに悪いし、ここはとっとと立ち去ろう!) 京太郎(最強の雀士?んなの知らねえよバッキャロー!) 京太郎「で、では俺はここでおいとまさせてもらいます……それでは!」ダッ トシ「待ちなさい!」ガシッ 京太郎「ぐわっ!」 トシ「……あなた、清澄高校の生徒っだったのね?」 京太郎「さ、さあ……?何のことやら――」 トシ「嘘おっしゃい!私には丸っとお見通しなんだよ!」 京太郎「ひいいいいっ!!」 京太郎「す、すんませんした!悪気はなかったんです。ここが宮守女子の控室だということを忘れて」 京太郎「つい、本能で清澄を応援しただけなんです!許して下さい、何でもしますから!」 トシ「ほう」 胡桃「今」 塞「何でもするって」 エイスリン「イッタヨネ?」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「ここに降ろしますね」 白望「ん、ありがと」 塞「お疲れさん。シロも自分で歩けばいいのに……」 白望「京太郎も喜んでるから問題無い」 豊音「京太郎君おんぶするの好きなのー?」 京太郎「え……?いや……まぁ……はい」 胡桃「……正直にシロの胸が当たるから好きって言った方が良いとおねーさんは思うな」 京太郎「いや……別にそういうわけでは……」 塞「私がおぶるわけじゃないから良いけどさ、あれ見てみなよ」 豊音「京太郎君すごいよー」オメメキラキラ 京太郎「oh...」 白望「乗り心地は最高だからオススメ」 京太郎「ちょっと白望さ…… 豊音「どーーーーーん!」(身長197の場合、痩せすぎと言われるモデル体型ですら75kgになる) 京太郎「うわぁっ!」 塞「頑張れ男の子」 胡桃「次は私ね!」 豊音「わくわくっ」ワクワク 塞「わー・・・期待度が半端じゃないっぽいね」 京太郎「・・・ですね」 豊音「じゃ、じゃあいっちゃうよー!」ムギュッ 塞「私たちの話も聞こえてないし」 京太郎「・・・ですね」 塞「・・・1+1は?」 京太郎「・・・ですね」 塞(何となく邪念を感じる・・・) 京太郎(うぉぉ!!) 京太郎(背中に感じる程良いおもちの感触!!)ウーン、チョットイワカンガアルヨー 京太郎(ちょ、そんなにむにむにサービスとは)ヨイショ、ヨイショ 京太郎(え、まじで。まさかそんな・・・)エヘヘ、コレデピッタリダネー 京太郎(後頭部!!!圧倒的新感触!!)マダタッテクレナイノカナー 京太郎(まさか身長差がこんな素晴らしいマジックを生み出すとは・・・)エイッエイッ 京太郎(そして悪戯に頭を抱き締める豊音さんまじイタズラっ子)ハヤクオンブシテクレナイトモットヤッチャウヨー? 京太郎(実際問題上背のある豊音さんは・・・結構来るけどっ)ワワワワッ 京太郎(ここで立たないのは男じゃねぇ!!)スゴイ!!チョースゴイヨー!! 京太郎(我が生涯に一片の悔いn)アレ?キョウタロウクn 京太郎 べしゃっ 塞(うーん、可哀想だけどざまぁみろとかちょっとチャンスかもって思っちゃうんだよね)キョータロークーン!? 塞(ま、私だけのチャンスじゃないんだけど・・・)シンジャダメダヨー!! 塞(とりあえず豊音を諌めてからたっぷり世話でもしてあげるよ、京太郎くん)ウワーン!! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 春「いただきます」パクッ 京太郎「食うな!それ俺の髪の毛だから!」 春「……あむあむ」カタカタカタ 京太郎「なんで黒糖が切れただけでこんなポンコツになるんだよコイツは…」 春「まずい…」ペッ 京太郎「そりゃそうだろ。食い物じゃねぇんだし」 春「でも無いよりはマシ」カタカタカタ 京太郎「いや、その理論はおかしいから」 春「いただきます」パクリ 京太郎「ぎゃあーーっ!?!首!首に噛み付いてるから!痛ぇよ!」ジタバタ 春「あむあむ」カミカミ 京太郎「痛こそばゆい!なんだこの新感覚は!ってノリツッコミしてる場合じゃねぇよ!」 京太郎「春さん!?もうスーパー見えてきたから止めてくれない?!」 春「あむあむ…ガリッ」 京太郎「み゛ゃ゛ーーー!!!?」 春「ちょっと塩味っぽくなった。ここのはクオリティが高い」カミカミ 京太郎「それ俺の血ぃ!!」 部室に戻った時、京ちゃんの首周りがベッタベタなのを追求されたりされなかったりの未来が待ってたり カンッ! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| はやり「京太郎くん、おんぶして☆」 京太郎「なんですかいきなり……って酒くさ!!」 はやり「今日は仕事終わりにいっぱい呑んできたからね」ムハー はやり「さぁ、おんぶして私を部屋まで連れていきなさい☆」 京太郎「そんくらい自分で歩いてくださいよ」 はやり「問答無用!!」ダキッ 京太郎「ちょっ、飛び乗らないでください!!」 はやり「良いから良いから」ギュッ 京太郎「(ヤバい。おもちが背中に……)」 はやり「……………………あ、ヤバい。吐きそう」 京太郎「へ」 京太郎「…………何か言うことは?」 はやり「すいませんでしたもう二度とこんなに呑んだりしません許してください」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 煌「あいたたた……すいませんね買い物付き合ってもらったのにこんなことになってしまって」 京太郎「いえ、構いませんよ。それに先輩軽いですし、こんくらいラクショーっすよ」 煌「そ、そうですか。それは、その、そういってもらえると助かります。あと……ありがとう」 煌「しかし張り切って買出しに来たはいいけれど、運ぶのにも苦労するわ挙句に足を挫くわと情けない限りで」 京太郎「そんなこと、困ってる時はお互い様ですよ」 京太郎「それに元々部の買出しの役目は俺だったのに、こちらこそありがとうって言わせてください」 煌「京太郎さんが遅れてくるという話でしたから。でも買出しの量が多いからって追いかけてきてくれたんですよね?」 京太郎「量がこの通り……多いですからねっと」 煌「すばらっ! 私をおんぶしながら、両脇にそれだけ荷物袋持てるなんて力持ちなんですねえ」 京太郎「普段から雑用で力仕事は多いですし、俺もこう見えても男ですからね」 煌「そうですね。立派な、男の人、なんですよね……」 京太郎「えっ?」 煌「え? あ、いやこれはそういう意味ではなく!」 京太郎「え、ええと、そういう意味?」 煌「いやその、やだ私ったら!」 京太郎「だ、大丈夫ですよ、気にしてませんから! いや気にはなりますけど、そんなそのアレってことでは!!」 二人(気まずい……) ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 穏乃「あたたたた……」 京太郎「高鴨はしゃぎすぎ」 穏乃「いやははは。テンション上がっちゃって、つい」 京太郎「そら、乗れ乗れ」ひょい 穏乃「わ、なになに!?」 京太郎「その足でホテルまで帰れるのか?」 穏乃「だ、大丈夫だよ! こう見えても山育ちだし!お、おろせー! おろせー!」 京太郎「はいはい。山育ちなら、金狼でも一撃ですねと。うお、軽っ!」 穏乃「わ、高い!」 京太郎「よーし、行くぞ。さっさと帰らないとそっちの監督さんに怒られる」 穏乃「うぅ……はずかし……」 京太郎「お子様が何言ってんだ?」 穏乃「お、お子様じゃないよ! お子様じゃないもん……お、女の子だもん……」 京太郎「女の子は二十四時間ジャージでいません」 穏乃「い、今はちゃんと制服着てるでしょ! ふんだ! きょーたろーなんか大っ嫌いっ!」 京太郎「……」 穏乃「最初に会ったときから、ずっとずっとずっと子供扱いして、本当にもうっ、もうっ……」 京太郎「俺はお前のこと好きだけどな?」 穏乃「え?」 穏乃「え、あ、いや? あの? え? あ、えええええええええええ!?」 穏乃「きょ、きょきょきょきょきょーたろーー!? 今、今何言ってっ」 穏乃「あ、うん、わ、私も好きだけどっ、好きだけどでもっ、何もこんなときに――」 京太郎「……ん~? どうしたのかな、穏乃ちゃん?」ニヤニヤ 穏乃「……」 穏乃「あーっ! またからかったなー! 京太郎のバカ、バカ、バカ!」 京太郎「あっはっはっはっは! やーい引っ掛かった-!」 穏乃「おとめ心を踏みにじってーっ! 許さないんだからねっ!」ポカポカポカ 京太郎「あっはっは……いたいいたいいたいっ! マジで殴んな!」 穏乃「フカーッ!」 京太郎「猫かお前は! ……インターハイが終わったらさ、お前は奈良に帰るんだよな」 穏乃「え? うん……そりゃそうだけど」 京太郎「俺は長野。ちょっとばかり遠いな」 穏乃「メールがあるし、電話もあるよ。ケー番交換したでしょ?」 京太郎「……こうして、お前を間近に感じられなくなるのはちょっと辛い」 穏乃「え? い、いきなり何――」 京太郎「冬休み。……そっちに遊びに行っていいか?」 穏乃「……あ、うん。いいよ、京太郎なら大歓迎……!」 京太郎「次の夏休み、インターハイ。どうなるか分からないけど、また会おうぜ」 穏乃「うん……」 京太郎「次の冬休みも、次の次の夏休みも。……お前は、大学に行くのか?」 穏乃「まだ、分かんない……」 京太郎「俺は大学に行くつもりだ。だから、もし大学に行く気になったら教えてくれ。お前と一緒の大学に行きたい」 穏乃「……え……あ……」 京太郎「要するにだ。これから先、できるだけお前と一緒にいたい。……迷惑か?」 穏乃「……ううん、全然。全然、迷惑なんかじゃない」 京太郎「そっか」 穏乃「そうだよ!」 京太郎「高鴨! じゃない、穏乃!」 穏乃「うん!」 京太郎「好きです! 付き合って下さい!」 穏乃「よろしくお願いします、大好きです!」 ………… 穏乃「ただいま! 憧、みんな! 恋人ができちゃった!」 全員「ブフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!?」 カン! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 咲「優希ちゃーん、部活終わったよー……ってあれ?」 優希「くかー……」 久「あら、優希寝ちゃってるわね」 京太郎「そういえば昨日寝不足だったらしいですよ……どうしましょうか」 優希「むにゃむにゃ、もっとタコス食べるじぇー……」 まこ「ここまでぐっすり眠っとると起こすんも悪い気がするのう」 和「ですがこのままというわけにもいかないのでは?」 咲「そうだよね……」 久「うーん……よし、須賀君」 京太郎「……だいたい想像つきますけどなんでしょうか?」 久「優希をおんぶして家に送ってあげてくれないかしら」ニコッ 京太郎「ですよねー……」ガクッ ―― 咲「じゃあ京ちゃん、また明日ね」 和「また明日」 京太郎「おう、また明日な……さてとじゃあタコスの国のお姫様をお送りいたしますか……」 優希「すうすう……」 京太郎「全く気持ちよさそうに寝やがって……」 京太郎「あーあ、どうせならもうちょっと背中に色々当たるのを堪能出来る子をおんぶしたかったぜ」 優希「んう……」 優希(んっ、私寝ちゃってたのか……あれ、なんかあったかいじぇ……) 京太郎「……」スタスタ 優希(……えっ!?)ビクッ 京太郎「んっ?優希、起きたのか?」 優希「……す、すー」 京太郎「ってわけじゃないのか……まあ、起きて騒がれるよりはこのまま寝ててくれた方がいいか」スタスタ 優希(あ、焦ったじぇ……で、でもなんで京太郎が私をおんぶしてるんだ?) 京太郎「全く部長もいくら俺が一番優希と家が近いからって……」ブツブツ 優希(なるほど……) 京太郎「にしても軽いな優希の奴……あんだけタコス食ってるからもうちょい重いと思ってたんだけど」 優希(失礼な奴だな……私だって女の子なんだからそこは気をつかってるんだじょ!は、始めたのは最近だけど……) 京太郎「……」 優希「……」 優希(……京太郎の背中大きいな。自分が小さい方なのは自覚してるけど、それを抜いても男の子なんだな……) 京太郎「んしょ……」サワッ 優希「……!」 優希(ううー、そういえばおんぶされてるから太ももとか触られてるのか……な、なんだか恥ずかしくなってきたじぇ)ドキドキ 京太郎「……」スタスタ 優希「……」ドキドキ 優希(いつか、起きてる時にもこうしてほしいな……うん) 京太郎(寝息はなくなってるし、心臓ドキドキしてるし……寝たふりなのバレバレだっつうのタコス娘) 優希(でも今はこうして京太郎の背中を堪能するじぇ……えへへ)スリスリ 京太郎(くすぐったいんだが……まあ、いいか。こういうのも、なんだかんだで別に嫌じゃないしな) カン! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 淡「キョータロッ!」ガバッ 京太郎「うおっ。 淡~、突然は止めろよ~」 淡「あははっ、ごめーんっ」ギュッ 淡「すんすん。……ん~、キョータローはいい匂いがするなぁ~」 京太郎「そうか? むしろ汗臭かったり……」 淡「ぜーんぜんっ! 私この匂い好き!」 京太郎「そうかそうか」 淡「でも~……」 ギュウウウウッ 淡「キョータローの方がだーい好きっ!!」 京太郎「俺だって、大好きだよ淡!」 淡「キョータロー!!」 京太郎「淡!!」 アハハハッ! ウフフフッ! 尭深「幸せになるのですよ……」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 淡「……」 京太郎「……」 淡「……何よ、何か言いなさいよ。いつもみたく、バカにすればいいじゃん」 京太郎「できると思うか?」 淡「いつだって、バカにしてたじゃない」 京太郎「そりゃあ、バカだからな。お前は」 淡「ほら……!」 京太郎「でも、今のお前はバカじゃないだろ。白糸台の大将で、精一杯頑張ったんだろ」 淡「でも、負けたもん。白糸台の大将が、ぽっと出の清澄の、一年に負けたんだよ?」 京太郎「俺の中で、お前は勝ってる」 淡「何言って……!」 京太郎「負けたがどうした。お前は、大将になるまで頑張って」 京太郎「決勝に残るまで頑張って、南四局までずっと頑張ってきただろ。俺は、お前の頑張りを知っている。だから、勝った」 淡「……でも、」 京太郎「うるせえ。兄貴の俺が言うんだから間違いねえ」 淡「……ふん、バカ兄貴。かっこつけて……」 京太郎「かっこつけならお前も相当だ。……淡。俺はおんぶしてるからお前が見えない。……もう、いいだろ。意地っ張りもそこまでだ」 淡「…………う、ぐっ」 淡「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! くやしい、くやしい、くやしいっ……!」 淡「負けちゃった、負けちゃったぁぁっ……! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……う、ぁぁぁぁぁぁっ……!」 京太郎「よく頑張ったよ、淡。お疲れ様」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 優希「…汗臭いじぇ」 京太郎「文句言うな。こっちだって引っ付かれてくそ暑いんだっての」 優希「……ごめんなさい」 京太郎「……別にそこまで怒ってねーよ」 京太郎「お前がしおらしくなるなんて、明日は久々に雨でも降るのかもな」 優希「……うるさい、馬鹿犬 」 京太郎「偏食ばっかしてるからバテて体調崩すんだよ、このタコス馬鹿」 優希「……」 京太郎「……ちょっと急ぐか。あんま揺らさないようにするけど、気分悪くなったら言えよ?」 優希「ううん、ゆっくりでいい」 カン! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 尭深「・・・」 京太郎「・・・」 尭深「・・・あの」 京太郎「は、はい!!」 尭深「わざわざ、ありがとうございます」 京太郎「いえ、男としては当然と言いますか・・・ははは」 尭深「あ、そこは右で・・・」 京太郎「はいっ」 京太郎(偶々足を挫いている場面に出くわして) 京太郎(確か白糸台だったなーなんて思って話かけ) 京太郎(試しにおんぶを提案してみたら、まさか本当にすることになるとは・・・) 京太郎(いやっ、ひにじょーっに役得ではあるけども!!) 京太郎(体全体なんか柔らかくてさっ、スカート越しの太腿も素晴らしい!!) 京太郎(特に背中の お も ち の感触なんてもう!!) 京太郎(・・・でもこの人、なんか邪気が少なすぎて罪悪感がひしひしと・・・)モヤモヤ 尭深(・・・ちょっと、はしたない、かな) 尭深(会って間もない男の人におんぶして貰ってるなんて・・・)カァ 尭深(でも・・・話し掛けられたことは凄く嬉しかったし) 尭深(この人になら大丈夫って思っちゃったんだもん) 尭深(・・・お父さんとは違う背中) 尭深(私よりずっと広くて、頼もしい) 尭深(髪の毛も淡ちゃんと同じ色なのにかっこよく見える・・・)ナンデダロ 尭深(匂いも、ちょっと汗の匂いが混じってるけど、嫌いじゃない)クンクン 尭深(もしかして) 尭深(一目惚れって、やつかな)ギュッ 尭深(だったら―――) 尭深(もっと大胆にならなきゃ、ダメだよね)クス、スリスリ 京太郎(え、ちょ、なんなんだこれ!?) 京太郎(なんだこれっ、もぉぉぉ!!!) ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 香菜「きょーたろーには、この香菜ちゃんをおんぶする権利をあげるんだし!」ビシッ 京太郎「へいへい、ありがとうごぜえます」 香菜「コラ、京太郎! 感謝の気持ちが足りないんだし!」ペチペチ 京太郎「あいたたた、殴るな殴るな!」 香菜「フン。全く京太郎は仕方ないんだし! 麻雀もよわよわだし、頭もキンキンだし、不良っぽいんだし!」 京太郎「うっせー、こいつは地毛だ。香菜こそ、天然の猫耳みたいな髪してるじゃねえか」 香菜「香菜ちゃんは可愛いからいいんだし!」 京太郎「はいはい、香菜ちゃんは世界一可愛いですねー」 香菜「そうだろう、そうだろう。だから京太郎は、香菜ちゃんと結婚するんだし!」 京太郎「あっはっは、まだ早いっつーの!」 香菜「香菜ちゃんが嫁に行ってあげるっていうのに、何の不満があるんだし!」 京太郎「そうだな、無い……と言えば無いのかなあ。よーし、香菜。それじゃあ、結婚するか!」 香菜「やったー! これで京太郎は香菜のものだし!」 香菜「むにゃ……うにゅ……にゅぅ……」 京太郎「ははは、はしゃぎすぎたか。よっと、ただいまー」 華菜「あら、あなた。おかえりなさい、香菜は寝ちゃった?」 京太郎「ああ、おんぶしてたのに大はしゃぎで大変だったよ」 華菜「ふふ、こうしていると昔の私にそっくり」 香菜「むにゃ……」 京太郎「にしても、昔の華菜の口癖なんかどこで覚えてきたんだ」 華菜「血は争えないのかしらねぇ……」クスクス カン ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「………」テクテク 穏乃「あ、きょーたろーじゃん!おーい」フリフリ 京太郎「ん、穏乃か?………ちょい待て。なんで距離を取る」 穏乃「行っくよ~!!?」イチニツイテ 京太郎「いやな予感しかしねぇ!」ヨーイ 穏乃「どんっ!!」バッ 京太郎「でりゃあ!!」ダッ 穏乃「まて~!」ダダダダダ 京太郎「誰が待つかよ!」ドドドドド 穏乃「ひっどぉーい!宥さんに言い付けてやる」 京太郎「ヤメテ!俺のハートが壊れちゃう!」 …。 ……。 …………。 ……………………。 京太郎「なん…とか巻いた、か…」ゼーハーゼーハー 穏乃「あれー?きょーたろーどこー?」 京太郎「なんつー体力してんだよアイツ。山育ちで片付くレベルじゃねぇよ」 京太郎「ま、このまま5分も隠れてりゃなんとかなるか」 穏乃「むむ…山で私に勝負を挑むとは良い度胸だね」ニヤリ 京太郎(なーに言ってんだかあのジャージ娘は) 穏乃「そこだぁ」ガバッ 京太郎「へ?」 穏乃「へへっ♪きょーたろー発見!」ギュー 京太郎「な、なんでここが分かったんだよ」 穏乃「勘!」ニパーッ 京太郎「はぁ…。聞いた俺が間違ってたよ」 穏乃「まあ良いじゃん。勝負は私の勝ちなんだし」 京太郎「なんの勝負だ。なんの」 穏乃「なんだっけ?」 京太郎「なんだそれ」ガクッ 穏乃「てな訳で負けたきょーたろーに罰ゲーム!学校まで私を運んでって」 京太郎「ちょっ!散々ここまで走ったってのに本気かよ!?」 穏乃「逃げたのはきょーたろーの勝手じゃん。良いから場合ゲーム!」 京太郎「トホホ……どうせなら玄先輩が良かったぜ」 穏乃「文句は聞きませ~ん」ギューッ 京太郎「ぐぇ。ちょっ穏乃、首絞まってるから」ペチペチ カンッ! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| ガチャッ !! 洋榎「うなぁー! 外あっついわー!!!」バタンッ!! 恭子「あちゃぁ……来ちゃったよ……」 京太郎「うわぁ……来ちゃいましたね……」 洋榎「おー恭子! なんや死にそうな顔してババみとぉなっとるなぁー!! アハハハハハッ!!!」 恭子「……」 洋榎「おっす京太郎! お前もお前でシケた顔しとんなぁ! 気合出せ気合ー!!アハハハハハッ!!!」 京太郎「……」 恭子「……須賀くん、頼むわ」 京太郎「御意」スッ 京太郎「……」 洋榎「お? どしたんどしたん? なんかくれんのか?」 京太郎「……失礼しますッ」 ガバッ ギュッ 洋榎「ふぇっ」 洋榎「……あっ……?」 洋榎「なっ、やっ、ええっ!? ちょ、ちょちょちょちょおおおお!!? 須賀、おま、なにしとん……」 京太郎「よっと」 グッ 洋榎「ひゃっ」 京太郎「よいしょーっ」 グルンッ 洋榎「きゃっ」 京太郎「どっこいっ」 キュッ ポフンッ 京太郎「あ、洋榎さんむっちゃ軽いっすね」 恭子「お見事っ。流石やね」 京太郎「いえいえ」 洋榎「な、ななななな……!」 洋榎「……なんでウチが須賀におぶさって……」 恭子「どうや主将?」 洋榎「どどど、どうっておま、これ、やっ、あかんて、ほんまっ」 恭子「もっと喜びーや。 夢に見た須賀くんの背中やろ?」 洋榎「す、須賀の…………須賀の……」 洋榎(……須賀の背中……めっちゃ広くて……あったかくて…………) 洋榎「ぁ、アカンよ………こんなん……アカンて…………」 洋榎「……うぅ……//」 京太郎「静まりましたね」 恭子「グッジョブやで、須賀くん。これからも頼むわ」 京太郎「ええ、喜んで」 恭子「後でウチにも頼むわ」 京太郎「えっ」 洋榎「……アカン……アカンよこんなん……//」 ギュッ ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 豊音「あれ?京太郎君、足どうしたの?」 京太郎「いえ…さっきの山道を下りる時に挫いちまったみたいで…」イテテ 豊音「だいじょうぶ?ちゃんと歩ける?」 京太郎「ええ、ゆっくり歩けば何とか…つっ!」 豊音「もうすぐ日も暮れちゃうし…ど、どうしよう…」オロオロ 豊音「あっ、そうだっ!」 ――― ―― ― 京太郎「あの…重くないすか?」 豊音「へーきへーき!重いものは持ち慣れてるんだよー」 京太郎「なんかすいません…姉帯さんに迷惑かけちゃって…」 豊音「め、迷惑なんてちーっとも思ってないよー?」アセアセ 京太郎「…」 豊音「…」 豊音「ご、ごめんね?」 京太郎「ちょ、どうして姉帯さんが謝るんですか!?」 豊音「だって私が山菜採りに行こうなんて言ったから…」ショボン 京太郎「そんな!この足は俺の不注意で…それに山菜採り楽しかったっすよ!」 豊音「ほ、本当に…?」 京太郎「ええ!だって姉帯さんと一緒なんですから!」 豊音「えっ///」 京太郎「あっ…」 豊音「////」 京太郎「////」 京太郎(き、気まずい…) 京太郎(何か話をしないと、間が持たない…) 京太郎(…しかし…あれだよな…) 京太郎(姉帯さん…大きい体がコンプレックスって言ってたけど…) 京太郎「体つきは女性らしいよな…柔らかいし、いい匂いがするし…」 京太郎「髪もすごく艶っぽいし…うなじも白くてキレイだし…」 京太郎「こうやっておんぶされてると…やっぱり恥ずかしいけど…」 京太郎「でも、あったかくて、なんかすごく落ち着く…」 京太郎「おんぶっていいよな…」 豊音「~~~~ッ////」プルプル 京太郎「ど、どうしたんですか姉帯さん!?」 豊音「なんでもない!なんでもないんだよーーっ!!////」ブンブン 豊音(京太郎君の独り言、聞こえてるよーーっ!ちょーはずかしいよー…//////)プルプル ――― ―― ― 京太郎「あのー…姉帯さん?そろそろ降ろしてもらっても…」 豊音「/////」 マァ クスクス ナニアレー 京太郎「えーと、もう町中ですし…その、さすがに人の目が…」 豊音「/////」 ママーアノオニイチャンコドモミタイー 京太郎「」 カン! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「さぁ、菫さん、どうぞ」ニヨニヨ 菫「・・・」 京太郎「菫さーん?」 菫「・・・顔が緩んでるぞ」 京太郎「そんなことありませんよ」キリッ 淡「すみれー、早くしてよー」ニヤニヤ 照「その通り」ニヤニヤ 誠子「王様の言うことは絶対ですよ、先輩」ニヤニヤ 尭深「・・・」ニヤニヤ 菫「うるさいっ、お前ら絶対にグルだろう!?」 照「これは酷い言い掛かり」 淡「証拠出せしょうこー」 菫「ぐ・・・」 京太郎(実は俺は全く関係ないんだけどな)ヤクトクヤクトク 菫(いきなりの王様ゲームがまず不自然) 菫(そしてあからさまなアイコンタクトとおかしなボディーランゲージ) 菫(事前に打ち合わせがあったと考えるのが自然) 菫(・・・というか打ち合わせをしたならもっと上手くやれないのか) 菫(こんなことに乗ってしまった私もどうかと思うが) 菫(そして何より) 菫(理由を付けてお、お、おんぶして貰えるのが嬉しいと感じている私に腹が立つ)カァァ 淡「お ん ぶー」 菫「!?」 照「お ん ぶ」 誠子「お ん ぶー」 尭深「お ん ぶ・・・」 四人「お ん ぶ!! お ん ぶ!!」 菫「・・・っ」プルプル 四人「お ん ぶ!! お ん ぶ!!」ニヤニヤ 菫「」プツン 菫(もう、いい・・・疲れた、私は、あそこで休む)フラフラ 京太郎(流石に気の毒な気がしてきた・・・) 京太郎(お? 菫先輩の目が虚ろに) 菫「京太郎くん」ポソ 京太郎「は、いぃぃ!?」 菫「疲れた、私は。どこか遠く行きたい」ムギュムニュニュ 京太郎「で、では、屋上なんてどうでしょうか!!」 菫「いいな・・・頼む、そこに」ムギュ 京太郎「了解です!!」スタスタスタッ 菫「君は・・・意外に逞しいんだな」サワサワ 京太郎「うえっ!? ま、まぁ鍛えてますからねっ」 ソウカ・・・タクマシイノハイイコトダ、ワタシハスキダゾ チョ、ホントウニダイジョウブデスカ!? アア、ワタシハダメダ。ダカラマモッテクレ。 ウッ。コリャホケンシツカ? 誠子「少し追い詰め過ぎましたかね」 照「大丈夫、菫は強い子だから」 淡「だいじょぶだいじょぶー」 誠子「無責任な・・・」 尭深「・・・それに、もう先輩の不器用なアプローチを見るのは沢山」 誠子「それは、まぁ・・・」 尭深「むしろ、感謝されてもおかしくない・・・」 誠子「そ、そうかな?」 尭深「きっとそう」 誠子(尭深、結構鬱憤が溜まってたんだね・・・) ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| (俺の彼女は見た目と違って大層子供っぽい。だがそれがいい) 豊音「ねーねー、おんぶ、おんぶ。京太郎くん、おんぶおんぶ」 京太郎「わーかーりーまーしーた」 豊音「えへへ、やったー!」 京太郎「ちぇいさぁっ!」ヒョイ 豊音「わわっ、やったっ!」 京太郎「……うん、これなら何とかなるか」 豊音「えへへー、京太郎くん。ちからもちー」 京太郎「伊達に豊音さんの彼氏じゃないっすよー」 豊音「か、彼氏って。やだなあ、恥ずかしいっ!」 京太郎「じゃ、歩きますねー」 豊音「うんっ!」 京太郎「……」テクテク 豊音「……ねえねえ、京太郎くん」 京太郎「はいはい?」 豊音「本当に私で良かったの?」 京太郎「……」 豊音「だって私でっかいし、ぼっちだし、世間とか知らないし」 豊音……京太郎くんの幼馴染みの、咲ちゃんみたいに小さくないし。それでも、いいの?」 京太郎「…………初めて会ったときさ」 豊音「うん」 京太郎「あ、守ってあげようって思った。豊音さんが辛い想いをするなら、それから守ろうって」 京太郎「笑えるなら、一緒に笑おうって。――君を、一人にしたくなかった」 京太郎「村の掟なんか、糞食らえだ。俺は豊音さんと生きる。一目で惚れて、二目でそう決めた」 京太郎「だから豊音さん。……困ったときは、頼ってくれ。俺は、豊音さんだけの英雄になるから」 豊音「……うんっ!」 カ―― 豊音「ところでさ、京太郎くん」ヒソヒソ 京太郎「わ、耳くすぐったいっ!」 豊音「えへへ。今日なんだけどさ。……泊まっていっても、いい?」 京太郎「え、あ、う……」 豊音「……だめかな?」 京太郎「オールオッケー! 今夜は寝かさないぞぅ!」 豊音「きゃーっ! もー、京太郎くんのえっちー!」 カン! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 衣「きょーたろー、衣をおんぶしてくれ。」 京太郎「はい? なんでまた……?」 衣「以前きょーたろーに負ぶさった時非常に乗り心地がよかったのでな。」 京太郎「あれ? そのとき衣さん寝てましたよね?」 衣「衣は途中で起きたぞ、夢寐にも忘れぬ心地だった。」 京太郎「そうなんですか。」 衣「兎にも角にもおんぶしろー!」 京太郎「はいはい、わかりましたよ衣お嬢様。」 衣「うむ! それでいい! それでは全速前進だ!」 ハギヨシ「須賀君が来てから衣様が明るくなられましたね、おんぶのおかげでしょうか。」 透華「あら……ならこちらもしてもらおうかしら……ハギヨシ。」 ハギヨシ「はい、透華お嬢様。」 透華「こちらは安全運転でお願いしますわ。」 ハギヨシ「かしこまりました。」 透華「……たまにはこういうのも良いかもしれませんわね。」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 「……すっかり秋ですね。」 「うん。」 バイクでゆっくり走りながら私たちは町並みを眺める。 京ちゃんが運転して側車には私が乗っている。 木々が色付く季節になり、町の並木にも風情が感じられる。 若しくは京ちゃんと一緒にいるからかもしれないけど。 家まで辿り着いてバイクが止まった。 ただ、まだ少し京ちゃんと一緒に居たいから駄々をこねる。 「京ちゃん、もうちょっと町を回らない?」 「良いですけど、バイクは置いていっていいですか?」 「うん、散歩しよっか。」 「いえいえ、今度は側車じゃなくて俺の背中に乗ってください。」 「……いいの?」 「ええ、照さんおんぶするくらい、軽いものですよ。」 大きくて落ち着く背中が肌寒い木枯らしから私を護ってくれる。 バイクを走らせてきて冷たくなった肌が少しずつ暖まる。 京ちゃんの足が止まる、目線を辿ると自販機があった。 「照さん、身体冷えたでしょ? 何か温かい物でも飲みますか?」 「ううん、別に良いよ。」 「あー……じゃあ、俺の分買っても良いですか?」 「うん。」 京ちゃんが器用に自販機から暖かいお茶を買っていた。 それを私に寄越して言う。 「俺今手が塞がってるんで持っててください。」 「わかった。」 温かいお茶を持って私の手が暖かくなる、私の手が冷たくなっていたのに気付いて気を使ってくれたのだろう。 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 玉子「進むのだ馬よ!」 京太郎「暑い…」 花子「おー玉子、いい乗りモン乗ってんじゃねーか」 玉子「花子、いつもの原付はどうしたのだ」 花子「いやーとうとう史織と2ケツで登校してるのバレてさー」 史織「花子ちゃんがぁ無茶して大通り通るから~…」 玉子「それは不運だったな、明日からこの馬を貸してやろう」 京太郎「マジっすか…」 花子「そりゃいいな」 史織「おんぶとか久しぶり~」 京太郎「…」 史織「?」ボイン 京太郎「…アリですね」 史織「キモーイ」 京太郎「ヒドーイ」 京太郎「…」ホッコリ 花子「幸せそうな顔だなあ」 玉子「下心満載であるな」 史織「私も花子ちゃんに肩車してもらいた~い」 花子「えー、史織はおっぱいの分重いからなあ」 玉子「何気に余をバカにしておるだろう」 京太郎「なーに言ってるんですか浅見さん、おっぱいには夢が詰まってるんですよ」 京太郎「即ちおっぱいが重いということは抱いた夢の重さが云々」 史織「本格的にキモいんですけどぉ」 花子「ブレないなあ…どれ、ちょっと私にも乗らせろよ」 史織「えっ…」 花子「え?ダメ?」 史織「い、いや…どうぞぉ」 花子「あぁ…冗談冗談乗ってけ乗ってけ、史織も女の子だなー」ニヤ 史織「~~~!」ゲシッ 京太郎「何故蹴った!?」 おわり 越谷流行れ ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 憧「……ぅ…」ボーッ 「お、気が付いたか?いきなり倒れたからびっくりしたぜ」 憧(この声は、須賀?ああそっか私部活中に倒れたんだっけ) 京太郎「先生の話だと体調不良と軽い熱中症が重なっただけみたいだからしばらく休んどけってさ」 憧(まさか部室で熱中症になるなんてね。いや、結構多いらしいけど) 憧(………カッコ悪いとこ見せちゃったなぁ)シュン 京太郎「みんなも心配してたんだぞ?特に穏乃なんかはテンパり過ぎてさ――」 憧(……………ん?なんか可笑しいわね) 京太郎「赤土さんなんて冷静装ってたけど冷や汗がヤバくってさ。宥さんに注意されてたんだぜ?」 憧「……んぅ…」パチクリ 京太郎「どうかしたか?」on his back 憧「………ヒッ…」サァーッ 京太郎「まさかまた気分悪くなったとか?ならすぐに家まで送ってってやるからな!」オロオロ 憧「………ふきゅぅぅ…」クラクラ ポスン カンッ! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 泉「うぁ~…あっつぅ~…汗ぐっちょりで不快感がMAXやわ…」グデー 京太郎「なら足くじいてんじゃねえよ、阿呆娘」 京太郎「このクソ暑い中、おんぶしてるんだからぼやくなよ」 泉「そんなん言うても仕方ないやん」 泉「…というか…京太郎のシャツもグショグショやし…ちょっと汗臭いし…」スンスン 京太郎「…え?…マジ?…」 泉「ホンマホンマ」スンスン 泉「ちょっと制汗剤の匂いもするで。ほとんど汗の臭いだけど」スンスン 京太郎「おい、嗅ぐな!恥ずかしいだろ!」 泉「ほらアレや…くっさい靴下嗅いだらもう一度嗅いでしまうアレやで」スンスン 京太郎「今の俺、靴下並かよ!?」 京太郎「ホテル帰ったらシャワーあびよ…」 泉「…浴びんでええやん」ギュ 京太郎「…は?」 泉「…ウチはこの(京太郎の)匂い好きやで」スンスン 京太郎「…今すぐ降りろ、匂いフェチ」ドンビキ 泉「ちゃうわ!察しろや、この鈍感!」ムキー! カン ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 賢姉様:おんぶなう 俺:いちいちそういうの拡散しなくていいから とー子:ちょっと淡さん!?どういうことですの!? 賢姉様:んー?どういうことって、そういうことだよー 賢姉様:今、愚弟の背中におんぶされてるのー アコ丸:またアホ姉弟がベタベタしてると聞いて シ ズ:仲良いよね。京太郎と淡 のどか:けど正直16にもなってこれはどうかと思います 巨従士:あやしい… とー子:ハギヨシ!今すぐ白糸台に向かいますわよ! 執事:かしこまりました。お嬢様 片目:ハギヨシ様、私もお供いたします 執事:ありがとうございます。美穂子さん 賢姉様:トーカ、うちに来るの?じゃあお土産よろしくね! てるる:お菓子が良いと判断できます。――以上 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| シロ「あ゛ー……」 京太郎「……」 シロ「……ダッル……」グデー 京太郎「なら離れてくださいよ……暑いんスよいい加減……」 シロ「離れるのもダルい……」 京太郎「こちとら暑いわ重いわでそろそろ倒れそうなんスけど」 シロ「……」 ギュウウウウ 京太郎「ぎゃあ」 シロ「女子に向かって重いだなんて失礼……」 京太郎「重くしてるのはシロさんでしょうが……うわ、足絡ませてきたっ」 ペロッ 京太郎「おわぁ!」 シロ「ふふっ……しょっぱい……」 京太郎「……人に勝手におぶさったり足絡ませたり首筋舐めたり……もうヤダこの人……」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「俺が花田先輩を背中合わせに背負って!」 煌「私が背中合わせに須賀君の背中の上に乗っかって!」 京太郎「俺が目標に向かって全力疾走!」 煌「私は何もしない!」 京太郎「そして体当たり!」 煌「私は何も以下略!」 「「ロングホーン・トレイン!!」」 優希「あの二人、何やってるんだじぇ・・・?」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 高一最強が足首捻ったそうです 京太郎「文化系の部活で足首捻って転ぶやつなんて初めて見たぞ」 泉「うぅ……ありえへん、こんなん何かの間違いやて」 京太郎「残念ながら現実だ……あー、なんか長野に置いてきた幼馴染み思い出してきた」 泉「ん?京太郎って幼馴染みとかいたん?」 京太郎「ああ、これがまたどんくさいやつでさ……なんかほっとけないやつなんだよなー」 泉「そう、なんや……」ズキッ 京太郎「いっつも本ばっかり読んでてさ、京ちゃん京ちゃん言いながら世話やいてくるんだよ……」 京太郎「そういえば、あんな事もあってさ!」ペラペラ 泉(……その幼馴染みの子、ずっと須賀くんと一緒にいてたんやろな、だから気兼ね無く隣にいれてたんや) 泉(……なんか、うらやましいな)ギュッ 京太郎「でもまぁ、こっちに引っ越してから寂しくなるんだろうな……って思ってたけど、そんな事無かったんだよな」 京太郎「今は泉がいるし、退屈になることなんか全然ないからな」 泉「……え?」ドキッ 泉(それって……長野の幼馴染みと同じくらいに見られてるってことなんかな?) 泉(あ、いやでも私ってけっこー自意識過剰っぽいみたいやし!船久保先輩とかにも釘刺されてるし!!勘違いに決まってる……) 泉(あ、いやでも万が一……そういう風に見られてるってことも……あーもう、なんなんやろこの感じ……!)ドキドキ 京太郎「……泉、心臓の鼓動早くなってんな」 泉「ふへっ!?」ドキッ 泉(あ、せや……体くっつけてたからモロバレやないですか……は、恥ずかしくなってきた///)カァァ 京太郎「泉、おまえ……」 泉「……!///」ゴクリッ 京太郎「胸無いから余計に分かりやすいのな」 泉「」ドスッ 京太郎「……はっ!?、その理屈で言ったら清水谷先輩の胸の鼓動は感じられないって事か!?」 京太郎「クソッ!!なんてこった!妄想は結局妄想でしかありえないって事なのか!!」 泉「……」ガシッ 京太郎「おい泉、首に腕回してどうしふぐぅぅっ!!?」ギュゥゥゥ 泉「さぁどうしてですかねぇぇぇ?」ギリギリギリ 京太郎「あぎぎ!ちょ、ちょーくすりーぱーはなばいって、しぬって、あぶないって!!!」ギギギギ 泉「落とされたくなかったらはよ保健室に連れてってくださいね、須賀くん?」ニコッ 京太郎「ぐぅおぉぉぉぉァァ!!!!?」ギリギリギリ カンッ ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| ひろえ「おかんおんぶしてやー!」ピョン きぬえ「じゃあおとんはうちをおんぶして?」 雅枝「こら!急に飛びつくやない!」ゴン ひろえ「うえーん!おかんがぶった!このぼうりょくま!」 京太郎「そんなこといわないの…ひろえは言葉使いと行動を女の子なんだから考えるんだよ?」メッ きぬえ「そうやでおねえちゃん!おんなのこはおしとやかにするっていわれとるやろ?」 雅枝「そうや…言われたことは守らないと悪い子になってまうで?」 ひろえ「…ごめんなさい」グスッ 雅枝「よし!ちゃんとごめんなさいできたな…ええ子やな…」 京太郎「じゃあそろそろ帰りますか…ほらきぬえこっちにおいで、おんぶしてあげるから」 雅枝「ひろえもごめんなさいできたからおんぶしたるで?」 きぬえ&ひろえ「はーい!」 雅枝「でも荷物もあってこの子達おんぶするのはちょっと重いな…」 京太郎「でもそれが幸せの重さですかね…」 雅枝「そうやなぁ…京太郎と結婚して子供もできて…幸せやなぁ…」 京太郎「久しぶりに手でもつないで帰りますか?」スッ 雅枝「まるで新婚みたいやな?」ギュッ 京太郎「俺の気分はいつでも新婚ですよ…なんなら今夜証明しましょうか?」 雅枝「あら…夜が楽しみやな?」 ひろえ「おかんもおとんもなかよしやな!」 きぬえ「うちらはかぞくやもん!とうぜんやで!」 雅枝「せやね…これからも家族みんなで仲良くがんばっていくでっ!」 みんな『おーっ!』 カン! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「あれ?」 和「つうっ……」 京太郎「お、おいどうしたんだよ和!」 和「あっ、須賀君……足をくじいてしまいまして。立とうとしてるんですけど痛みが走ってなかなか……」 京太郎「無理はしない方がいいって!親御さんに迎えに来てもらうとか出来ないのか?」 和「父も母も今日は深夜まで帰らないんです……」 京太郎「うーん、そうか……そりゃ困ったな。よし、それなら……」 和「須賀君?」 京太郎「家まで送ってく。ほら、背中に乗った乗った」 和「いえ、そんな、そこまでしてもらうわけには……」 京太郎「いいっていいって。それとも暗くなるまでここでうずくまってるつもりなのか?」 和「それは……」 京太郎「こんな時くらい頼ってくれよ、な?」 和「そ、それじゃあ……失礼しますね」ギュッ 京太郎「ちゃんと掴まったな?よし、行くぞ!」 和「きゃっ!?」 京太郎「あっ、悪い、痛かったか!?」 和「ち、違います。少し驚いてしまっただけなので……」 京太郎「ふぅ、それならよかった。じゃあ改めて行くとしますか」 ―― 京太郎「……」 和「……」 和(誰かにこうして背負われるなんていつ以来でしょうか……幼い頃父に背負われて帰った日を思い出します……)ギュッ 京太郎「和?」 和「えっ?」 京太郎「いや、なんか抱きつく力が強くなったからさ。どうかしたのかなって……」 和「す、すいません。昔の事を思い出したらつい父に背負われているような気がしてしまって……」 京太郎「お父さんか……なあ、やっぱり寂しかったりするのか?」 和「そう、ですね……全く寂しさを感じないと言えば嘘になります」 京太郎「……」 和「あっ、けど、今は寂しさより楽しさを感じる事の方が多いんですよ?」 和「ゆーきや咲さん、部長や染谷先輩、麻雀部のみんながいますから」 京太郎(そこに俺はいないのね……いや、わかってたけどさ) 京太郎(元々俺は雑用くらいしかできない麻雀部にとってもいくらでも換えがきく存在だし……) 和「もちろん須賀君もその一人ですよ?」 京太郎「……」 和「須賀君?」 京太郎「和って実はエスパーだろ?」 和「な、なんですかいきなり、そんなオカルトありえません!」 ―― 京太郎「本当にここでいいのか?」 和「えぇ、ここまで来たら後は一人でも大丈夫なので。さすがにこれ以上須賀君が帰るのを遅くするわけにもいきませんし……」 京太郎「ははっ、気遣ってくれてサンキュー」 和「須賀君」 京太郎「んっ?」 和「今日はありがとうございました」 京太郎「おいおい、お礼ならさっきも言われたぜ?」 京太郎(それにお礼なら正直色々堪能させてもらった俺の方が言いたいし……) 京太郎(いや、途中から話に集中してなんかうやむやになっちまったけど) 和「いえ、それだけではなくて……久しぶりに背負われて、少しあの頃の気持ちを思い出せましたから」 和(それに須賀君の背中が意外に大きい事もわかりましたし……って私は何を考えてるんですか!?) 京太郎「なんかよくわかんないけど……」 京太郎(まあ、和が嬉しそうだからいっか) カン! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「何やってんだか」 憧「あははは……」 京太郎「穏乃と遊ぶならカラオケとかにでも行けよ。アイツの山(テリトリー)に入ってねんざするとか」 憧「面目無い」 京太郎「ほら、背負ってやるから乗れよ」 憧「う、うん」ギュッ 京太郎「うわっ、軽っ!!ちゃんとしメシ食ってんのか」ヒョイ 憧「うるさい!!女の体重について触れんな!!」ポコン 京太郎「いってえ!!『軽い』って言ってんのに駄目なのかよ!!」 憧「まったく……そんなんだから女の子にモテないのよ」ギュ 京太郎「うるせぇ」 憧「(京太郎の背中、意外と大きい……ヘタレだと思ってたけどやっぱり男の子なんだなぁ)ドキドキ」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 友香「脚が痛いで~」 京太郎「一日歩くつってんのに和服に草履なんかで来るから…」 友香「和服は日本の良き文化でぇ~」 京太郎「はいはい」 友香「面目ないで~」 京太郎「まーいいんだけどさ、役得だし」 友香「スケベだ!太ももばっか触られるで~」 京太郎「うっせ!うっせ!どこ持ちゃいいんだよ、触らせろ!」 友香「で~~」 梢「何でお尻丸出しなんでしょうか」 澄子「和服なんで手繰り上げないとおぶされないそうです」 莉子「友香ちゃんが露出狂になっていく…」 美幸「外で何やってるのもー!」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 緋菜「たかいし!」 菜沙「そろそろおりるし!」 城菜「菜沙はさっき乗ったからつぎはあたしだし!」 華菜「お前らいい加減しろ須賀が死にかけてるし!」 菜沙「まだまだ乗るし!」 城菜「乗り足りないし!」 華菜「昼寝しない子にはおやつあげないぞ」 緋菜・菜沙・城菜「おやすみだし!」 華菜「はーーやっと寝た。大丈夫か須賀?」 京太郎「子供だと思って油断してました。まさか3時間も乗り続けられるとは……」 華菜「あれくらいの子供は一回やると次々来てとまらないからねー」 京太郎「ずっと中腰でいたから膝と腰が痛い……」 華菜「お茶入れてくるから少し横になってろ」 京太郎「ありがとうございます……」 華菜「お茶入れてきたぞって……寝てるし」 京太郎「寝てませんよ」 華菜「ならついでに持ってきたアイスも食べて休んでろ」 京太郎「池田さんはどうするんですか?」 華菜「あいつらが寝てる間に家事済ませちゃうし」 京太郎「手伝いますよ」 華菜「良いから寝て早く回復させてろ」 京太郎「何が目的ですか?」 華菜「べ、別にチビ達が羨ましかったなんてことは無いし!」 華菜「回復してもらえば華菜ちゃんも1回くらいやってもらえるかもとか思ってないし!」 京太郎「……」 華菜「早く回復するのは別に悪いことじゃないからな!だから須賀は休んでるし!」 京太郎「……」 華菜「おい……須賀?どうした?」 京太郎「……zzz……」 華菜「……疲れてるのはわかるけど話の途中で寝られると予想以上に腹立つな」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 初美「きょうたろー!さっさと走るのですよー!」 京太郎「はいはい、やればいいんでしょ、やれば」 初美「境内一周してくるのですよー!」 京太郎「あーもう面倒くせえ!」タッタッ 京太郎「霞さんならまだしもなんではっちゃんなんだよ……」 初美「何か言いましたかー?」グイッ 京太郎「痛っ!背中つねんなよ!」タッタッ タッタッタ...... ......コソコソ 小蒔「」ジーッ 春「」ジーッ 巴「あー、あの二人まだやってるんですねー」 小蒔「巴ちゃん!はっちゃんはどうして須賀さんにおんぶしてもらっているんですか!」 春「」コクコク 春「羨ましい」 巴(ああ、二人とも正直だなー) 巴「須賀くんがはっちゃんのお菓子をつまみ食いしちゃったのでその罰、らしいですよ」 小蒔・春「「」」ピクッ 小蒔「お菓子……」 春「……つまみ食い」 小蒔・春「「!!」」ピコーン 小蒔・春「「ふっふっふっ……」」コソコソ 巴(なんか面白そうだから見守ろう) <コラー、マダオシオキハオワッテナイノデスヨー! 京太郎「ふぃー、小っちゃい先輩の世話は疲れるなー……っと、お?」 黒糖「」 ぽたぽた焼き「」 京太郎「なんで小蒔さんと春の好物がこんなところに置いてあるんだ?」 黒糖―【春】 ぽたぽた焼き―【私のです!】 京太郎(思いっきり二人の字だし……) 小蒔「」ジーッ 春「」ジーッ 京太郎(視線も感じるし……) 京太郎(何やってんだあの二人) <キョウタロー! 京太郎「今行きますよー、カルピスと麦茶どっちがいいですかー?」 <カルピスー! 京太郎(放っておこう)トタトタ 小蒔「」ウルウル 春「」ウルウル 巴「あのー……二人とも?」 小蒔「須賀さんがおせんべいを食べてくれないです……」シュン 春「黒糖、おいしいのに……」シュン 小蒔「須賀さんがおせんべいを食べたところで突撃しておしおきとしておんぶをしてもらおうと思ったのに……」 春「……」コクッ 巴(予想はできてましたよ、はい) 巴「姫様、春ちゃん、いいですか?」 小蒔「何ですか……?」 巴「そんな回りくどいやり方をしなくても、須賀くんはおんぶをしてくれますよ」 巴「正直に、正面から言えばいいんですよ」 小蒔「でも、そんなのはしたないです……」 巴「そうかもしれないですね、ですけど、たまにはそんな姫様でもいいんじゃないでしょうか」 巴「「おんぶをしてください」って頼めば大丈夫ですよ」 小蒔「巴ちゃん……」キラキラ 小蒔「巴ちゃんの言うとおりです、頑張りましょうね、春ちゃん!」 ポツーン 小蒔「……あれ?」 京太郎「えー、今度は春かよ」 春「……だめ?」 京太郎「いや、いいよ。ほれ」 春「ん……」ギュッ 春「……」スリスリ 京太郎「んじゃ、京太郎号出発だー!」 タッタッタ...... 小蒔「先を越されましたー!」ウェェン 巴「よしよし」ナデナデ カン! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 優希「おい犬!」 京太郎「あん?」 優希「私をおんぶしろ!タコスパワーが切れて歩けなくなったのだ」 京太郎「は?何甘えてんだ、自分で歩け自分で――ってか、さっきタコス食ってただろお前」 優希「えーい、だまれだまれだまれ!早く私を食堂までつれてけー!」 優希「おりゃ!」ピョン 京太郎「ぐはっ!」 京太郎「おい、頭を掴むんじゃねえ!」 優希「おんぶして運んでくれるまでこのままだじぇ」 京太郎「わ、わかったから!おんぶするから、せめて肩につかまってくれ!」 優希「ふふん、最初から私に従えばいいんだじぇ」 京太郎(とほほ……) 京太郎「……」 優希「おりゃ!」 京太郎「…………」 優希「うりゃりゃりゃりゃ!」 京太郎「……………………」 優希「これでもか!これでもか!」 京太郎「……あのさぁ」 優希「なんだ」 京太郎「さっきから何やってんのお前?暴れられるとおんぶしづらいんだけど」 優希「当ててやってんのよ!」 京太郎「は?」 優希「漫画でよくある胸を押しつけるあれをやってるんだじぇ。京太郎も私のダイナマイトボディにメロメロだな!」 京太郎「あの……」 優希「ん?」 京太郎「まったくその感触が背中に伝わらないんですが」 優希「な、何っ……!」 京太郎「それ以上しょーもないことやったら本気で降ろすぞ?」 優希「うるさいバカ犬!それがレディーに対する言葉か!死ね死ね死ね死ね!」ジタバタ 京太郎「お、おい!今階段降りてるんだぞ!そんなに暴れると――」 ズルッ 京太郎「うわっ!」 優希「きゃっ!」 二人「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 ズッテンコロリンドンガラガッシャーン! ………………………… …………… …… 優希「いたたたた……」 優希「こら、犬!足を踏み外すでない!もう少しで大怪我するところだったじぇ!」 京太郎「」 優希「……京太郎?」 京太郎「」 優希「お、おい!しっかりするじょ!だ、誰か、誰かああああああああああ!!」 咲「……優希ちゃん?」 優希「さ、咲ちゃん!京太郎が、京太郎が返事をしないんだじぇ!」 咲「う、嘘!?とりあえず誰か呼ばないと……!!」アワアワ 優希「きょうたろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」 ――― ―― ― 病院 ドアハアアアアア゙ンッ! 咲「京ちゃん!」 優希「大丈夫か京太郎!?」 憩「……須賀さんのお知り合いの方ですか?」 咲「は、はい!それで京ちゃんは!!京ちゃんはどうなったんですか!?」 優希「――えっ」 そこには顔に白い布をかけられた京太郎の姿があった 憩「…残念ですが、須賀さんは先程息を引き取りました……」 咲「そ、そんな……」ヘナヘナ 優希「う、嘘だじぇ……だって、京太郎はさっきまで私としゃべって――」 憩「……」ハァ 優希「私が……私が、京太郎を……?」 優希「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 清澄部室 咲「ツモ、四暗刻です!」 優希「ぎゃー!また咲ちゃんに飛ばされたじょ!!」 咲「えへへ、麻雀って楽しいよね、一緒に楽しもうよ!」 優希「咲ちゃんばっかり和了るからちっとも楽しくないじぇ!」 久「はいはい、今日の部活はこれまでー。各自忘れ物しないよう気をつけるように」 和「もうこんな時間ですか。あっという間でしたね」 京太郎「俺、今日焼きとりばっかだったんですけど……」 咲「あれ、染谷先輩の姿が見当たらないよ。どこにいったんだろう……」 久「ああ、まこなら仮眠室で一日中寝てたわよ」 咲「え?」 久「どうやらメイド雀荘でお疲れみたい」 まこ「ぐごおおおおおおおおおおおお……ふんがああああああああああ」 優希(ひどいいびきだじぇ……) 久「まこー、起きなさい。今日の部活は終了よー」 まこ「んん……わしはまだまだ寝足りんのじゃ……んごごごご」zzz 久「あらあら」 和「……起きませんね」 久「んー、仕方ない。須賀君!」 京太郎「はい」 久「まこをおぶって家まで送ってもらえないかしら?」 京太郎「……はい?」 久「"はい"って言ったわね?じゃあ、お願いね!」 京太郎「ちょ、待って下さい!今のは違いますよ!」 久「あら、男に二言はないわよ!ほら、かついだかついだ!」 京太郎(とほほ……) (泣) 咲「頑張ってね、京ちゃん!」 和「まさかとは思いますが、女子高生をおんぶできることにうれし泣きしてるんじゃないですよね?」 京太郎「違う!!」 京太郎「ってか、俺染谷先輩の家知りませんよ?」 久「大丈夫、私が一緒についてあげるわ」 京太郎(あ、部長と一緒に帰れるしそれならしいいかも……)デローン 優希「むっ、貴様なに鼻の下を伸ばしてるんだじぇ!」 優希「まさか染谷先輩でいやらしいことを考えたな!?」 和「須賀君、最低ですね」 咲「見損なったよ、京ちゃん……」 京太郎「だああああああっ!違うわ!ほら、染谷先輩をおんぶするんで早く帰りましょう!!」 久「須賀君もこういってることだし、みんな部室から出た出た!」 優希「はーい」 久「じゃあ須賀君、まこをお願いね」 京太郎「あ、はい……よっこらしょ」 まこ「ん」 京太郎(うわっ、女の子ってこんなに軽いんだな) 京太郎(染谷先輩、いつも早弁したり、部活中ワカメラーメンとか食べてるからそれなりに重いと思ってたけど……意外だな) 久「どう?女の子をおんぶした感想は」 京太郎「いや、染谷先輩もなんだかんだ女の子なんだなぁって」 久「それまこが聞いてたら殴られるわよ」 京太郎「え」 京太郎「じゃ、じゃあフローラルな香りがします……」 久「……ふーん」ニヤニヤ 優希「早く帰ろうじぇー!私はもうお腹ぺこぺこで待ちきれないのだ」 久「今行くわー!」 帰り道 久「私と須賀君はまこを送り届けるから3人とはここでお別れね」 和「そうですね」 優希「タッコス~♪タッコス~♪タッコスが私を呼んでいる~」 咲「お疲れさまでした。京ちゃん、また明日ね」 京太郎「おう!」 タコスダーッシュダジェ! ユーキ、ソンナニイソグトコロビマスヨ! ギャアアアアアアア! ホラ、イワンコッチャナイ…… アハハハハ…… 久「あの子たちは部活が終わっても元気ねぇ……それじゃ、私達も行きましょうか」 京太郎「了解でっす」 京太郎「……」 久「……」 京太郎「…………」 久「…………」 京太郎(うわっ、なんか急に咲達がいなくなったから気まずくなったぞ……!) まこ「すぅすぅ……」 京太郎(しかもこんな時だけ染谷先輩いびきかかねえし……) 久「……ねえ、須賀君」 京太郎「は、はい」 久「須賀君って中学時代に運動系の部活でもやってたの?」 京太郎「え?」 久「だって長時間女の子をおんぶするのって疲れない?私だったら5分でギブアップするわ」 京太郎「えっ、いや、別に大丈夫っすよ?染谷先輩すっげー軽いんで」 久「ふーん、そうなんだ……」 京太郎「まあ、男子高校生ならこれくらい余裕のよっちゃんですよ」 久「………………」 京太郎(やべっ、完全に滑った!めっちゃ恥ずかしい!!) 久「……えいっ」 京太郎「へ?」 久「へー、男の子の体ってやっぱりゴツゴツしてるのね」モミモミ 京太郎「ちょ、いきなりどこ触ってるんですか部長!」 久「あら、いいじゃないちょっとくらい。えいえいえいっ!」ツンツン 京太郎「それ以上腕を刺激すると染谷先輩落っこちちゃいますよ!」 久「んふふ、頑張りなさい。ほれほれほれ!」サワサワ 京太郎「んほっ……あっ///」 久「あ」 まこ「むにゃむにゃ……ん?」 ズッテンコロリンドンガラガッシャーン!! まこ「ぎゃーす!!」 京太郎「うわっ」 久「やば」 京太郎(染谷先輩、尻から落下していったぞ……!) 久(ちょ、ちょっと須賀君!男の子ならもうちょっと耐えなさいよ!)コソコソ 京太郎(部長に何度もやめてくださいって言ったでしょ!)ボソボソ まこ「いたたたた……おい!何してくれるんじゃ、アンタら!」ギロリッ 京太郎「す、すんません染谷先輩!」 久「逃げるわよ、須賀君!」 京太郎「えっ、えっ?」 久「ほら、急いで!」スタコラサッサ まこ「待たんかいお前らあああああああああああああああああああ!!」ドドド ―――――――― ―――― ―― 久「はぁはぁ……どうやら逃げ切れたみたいね」 京太郎「染谷先輩、鬼の形相でしたよ……明日雷くらいますよ、俺達」 久「ま、まあその時はその時よ。アハハハハ」 京太郎「この人はまったくもう……」 久「ねえ、須賀君」 京太郎「何ですか、もうこういうお役は御免ですよ」 久「私、疲れちゃった。おんぶしてよ」 京太郎「へ?」 久「ほら、男の子ならまだまだ体力持つでしょ?だからおんぶして!」 京太郎「いや、流石にさっき全速力で染谷先輩から逃げたからキツイっすよ」 久「大丈夫、大丈夫!それ、捕まえた!」ガシッ 京太郎「ちょ、捕まえたじゃないですよ!肩を?まえないでください」 久「だーめ。だって私もう歩けないもん。はやく私をおんぶしないと帰れないわよ~?」ニヤニヤ 京太郎「はぁ、ほんとにこの人は自由人なんだから……」ヨイショ 久「じゃあ私の家までお願いね、レッツゴー須賀君!」 京太郎「はいはい」 ――― ―― ― それから俺は無事部長を家まで送り届け帰宅した 部長の方が染谷先輩より軽かったから比較的楽に感じたのはいうまでもない まったく、この人にはかなわないぜ ……でも、たまにはおんぶってのも、いいもんだな 美穂子「こんなこと起きていいわけがない、こんなこと起きていいわけがない……!!」 池田「キャプテン、はやくベッドで眠りにつくし!!」 おわり ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| エイスリン「キバセン!」フンス つ【足軽】 京太郎「違いますって。ただのおんぶですから。それに絵も間違ってます」 エイスリン「ソナノ?」 京太郎「騎馬戦ってのはだいたい四人一組でやるもんですよ」 京太郎「やるなら小瀬川先輩は除外するとして、ウィッシュアート先輩、臼沢先輩、姉帯先輩、鹿倉先輩の四人でやらないと」 エイスリン「デモソレダト上ニナレナイヨ?」 京太郎「……鹿倉先輩が聞いたら怒るだろうなぁ」 エイスリン「折角ダカラ“ブショー”ニナリタイナ」 京太郎「武将って、なんとまあ外国の人らしい呼び方を」 エイスリン「ポニーデ我慢スルカラコノママデモ良イ?」 京太郎「トホホ……俺ってポニー扱いなのか…」 エイスリン「ポニー可愛イヨ?キョウタロ嫌ダッタ?」 京太郎「俺だってこれでも男なんですから可愛い扱いはちょっと、ね」 エイスリン「ゴメンナサイ」シュン 京太郎「いや、あのですね。そりゃ姉帯先輩と比べたら小さいですよ?うん。そうだ俺ちっちぇっす!」 京太郎「そう考えたらポニーって呼ばれるのも当然ですよ。俺が間違ってましたごめんなさい」 エイスリン「ウウン。ワタシモゴメンナサイ」ペッコリン ムニュン 京太郎(いゃっふぅ~いっ!!頭を下げた拍子に形を変えるおもち頂きましたぁ!おっし頂きました!) エイスリン「ドシタノ?」キョトン 京太郎「………」 エイスリン「What s happened??」 京太郎「汚れた心で……ごめんなさい……」ゴフッ カンッ! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 良子「~♫」フフーン 京太郎(すげぇ・・・体温高くて、柔らかくて、えろい)ゴクリ 咏「」ウギギ はやり「」ゴゴゴ 健夜「」オロオロ 理沙「」プン・・・プン・・・ 京太郎「・・・」 京太郎「あ、あのー、次はカラオケ・・・でいいんですよね?」 良子「えぇ、いぐざくとりー、ですよ。京太郎」ムギュ 京太郎(柔けぇぇぇ!!!) 咏「・・・!!」ピコーン はやり「・・・」 咏「それよりさー京太郎」 京太郎「はい?」 咏「流石にこの時間連れ回すのも気が引けるしそろそろ帰っt」 はやり「そうだねー☆ どうせだし今夜はオールナイトでフィーバーしちゃおっか☆」ガシッ 咏「!?」モゴモゴ はやり「迂闊だよ、咏ちゃんっ。」ヒソ 咏「・・・どういうことっすか」ヒソ はやり「今帰らせようとなんてしたら、良子ちゃんも帰るとか言い出しちゃうに決まってるんだよ☆」ヒソ 咏「まじっすか」ヒソ はやり「それで人のいい京太郎くんは良子ちゃんを送って言って・・・」ヒソソ 咏「・・・」ゴクリ はやり「なんやかんやで○○になって△△しちゃってから□□でゴールインしちゃうんだから☆」ヒソッ 咏「ゴールイン(結婚)!?」ヒソォ はやて「そうだよ★」ギリッ 健夜「・・・」チラ 理沙「・・・」チラプン 良子「京太郎京太郎」 京太郎「・・・何ですか?」 良子「当ててるんですよ」ムニニ 京太郎「ちょ、止め、ぐぉぉ・・・」 良子「これでもスタイルはいい方だと思うのですが?」フゥ 京太郎(あ、やべ)ムクムク 良子「ねぇ、京太郎・・・?」ギュッ すこはやりさうた「・・・」ゴゴゴゴゴッ 京太郎(oh・・・これは死んだわ) ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 玄「ふんふーん♪」 京太郎「ずいぶんご機嫌ですね」 玄「おや、京太郎君。私の下でなにをしているですか?」 京太郎「なにしてんでしょーね」 京太郎「はしゃいでずっこけるって、アホですかあなたは」 玄「えへへ」ギュゥ 京太郎「あの、当たってますよ」 玄「当ててるんですのだ!」 京太郎「ちょ、なにやってんすか!」 玄「京太郎君は志を同じくする者だけど……」 玄「あんまり他の娘のおもちに見とれてちゃイヤだよ」ボソッ 京太郎「っ…………!///」 京太郎「とっくに」 玄「ん?」 京太郎「とっくに玄さんのことしか見えてませんよ」 玄「ほうほう、ほほう~」ニマニマ 京太郎「なんですかその顔は、鬱陶しい」 玄「いやいや。そんなことないですよ」 京太郎「じゃあ松実先輩は元気そうなのでここらへんで降りてもらって……」 玄「あれ~なんだか親愛度レベル2くらい下がってない?」 玄「あ、京太郎君あっち! あっちから帰ろう!」 京太郎「ええ、そっち遠回り……まぁ良いか」 玄「えへへ、もうちょっとだけこのままでも良いよね」ギュウ 京太郎「はいはい、お任せあれ」 玄「もーそれ私のセリフーっ!」 カン ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「ん? 別におもくねーよ」 京太郎「もうちょっとでつくから、それまで俺の背中で我慢してな」 京太郎「ついた。よし、おろすぞ」 京太郎「それより、あいつら本当に乱暴だよな! お前が足挫くぐらいバンバンやりやがって……」 京太郎「別にいいって、いいわけないだろ! お前は、その、あの……」 京太郎「あ、先生呼んで来なくちゃな! じ、じゃあちょっと行ってくるわ!」 京太郎「おとなしくしてろよ」 雀卓「……」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 宥「穏乃ちゃんや憧ちゃん、それに菫ちゃんのお話もあって、オムニバス形式ってとってもあったか~い」 宥「そろそろ、私も京太郎くんや菫ちゃんにおんぶしてもらえるあったか~いSSが投下されてる頃だよね」 宥「わあ、玄ちゃんのもきてる。じゃあいよいよ私のも///」 宥「……」ドキドキ 宥「えっ?」 宥「あったかくない……。」 玄「おねーちゃんが寒がってるのです! 行くのですボクたち!」 京太郎「合点承知! 行こうぜ俺達!」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 史織「須賀君…重ぉい…」ブルブル 花子「だははは、生まれたての小鹿みたいになってるぞー」 玉子「乗り心地はどうなのだ」 京太郎「めっちゃいい匂いします!」 史織「ちょっとぉ何嗅いでるのぉ…」ブルブル 花子「引くわードン引きだわー」 玉子「京太郎!余が許すぞー!」 京太郎「あいさー!」モミモミ 史織「きゃっ…」グシャッ 花子「あーやっちまった」 京太郎「す、すまん」 史織「痛ぁい立てなぁい、部室までおぶってぇ」 京太郎「おう…悪いな、怪我ないか?」 史織「全身骨折よぉ、死ねばかぁ、ぼけぇ」ゲシゲシ 京太郎「痛い痛い」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| カピー「キュー」ネエネエ 京太郎「んっ?どうしたカピー?」 カピー「キュキュ?」コノマエオンナノコオンブシテタヨネ? 京太郎「あー、和のやつが転んで足くじいちゃったから仕方なく…」 カピー「キュー!キューキュキュ!」ズルイ!ボクモオンブシテホシイ! 京太郎「でもお前60kgくらいあるし重いんだよな…」 カピー「キュー!キュー!キュー!」オンブシテクレナイトコンヤモフモフサセテアゲナイ! 京太郎「なんだって!お前をもふもふしできなきゃ疲れも取れないし安眠できないんだぞ!」 カピー「キュ!キュー!」ナラチョットサービスシテヨゴシュジン! 京太郎「仕方ないな…ほらこいよ…」 カピー「キュー!キュ…」アリガトウ!ヨイショ… 京太郎「どんな感じだ?」 カピー「キュー…キュキュ…」オオ…タカイタカイ… 京太郎「気に入ったか?」 カピー「キュ!キューキュー!」モチロン!コノママオソトニイキタイ! 京太郎「仕方ないなぁ…じゃあ公園まで散歩するか」 カピー「キュー!」オウ! 京太郎「だけど帰りは歩いて帰るんだぞ…運動しないとな?」 カピー「キューッ…」エーッ… 京太郎「今日はちょっといいご飯だから運動しないと食べさせないぞ?」 カピー「キュ!キューキュー!」ホントニ!ゴシュジンダイスキ! カン ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 和「元々、おんぶという意味の言葉は『おぶう』という言葉がなまったものだと言われています」 京太郎「ほー」 和「そして『おぶう』という意味の言葉にはおんぶに近い意味はなかったという説もあります」 和「その場合、『おぶさる』という言葉と意味が混同されたと言われていますね」 京太郎「へー」 和「『背負う』の負うという字から派生して、『おぶう』『おぶさる』という能動と受動の言葉として確立された、とのことです」 京太郎「なるほど」 京太郎「それはともかくおぶさせてくれ和。もしくはおぶわれてくれ和」 和「そんな言葉はありません。おんぶの件は検討しておきますね」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 智葉「……すぅ」 ネリー「あー!サトハが寝てるよー!」 メガン「サトハは昨日深夜3時までワタシとラーメン談義をしていましたカラネ」 京太郎「談義じゃなくて一方的なスピーチじゃないっすか……やめてあげましょうよ」 慧宇「それで、どう部長を帰しましょうか?」 明華「起こすのは忍びないですよね……」ウーン ネリー「鼻をクワガタに噛ませて起こすっていうのはどうかな!」 メガン「斬られマスネ」 明華「血が出ますね」 慧宇「痛いですね」 京太郎「殺されるな」 ネリー「だよねー……」 京太郎「よいしょ、っと」 京太郎「どうしてこんなことになるんですか……」 智葉「すぅ……」 メガン「キョウタローは家が近いからネ」 明華「それに、重いものを持つのは得意そうですものね」 京太郎「部長に聞かれたら斬られますよ?」 慧宇「サラシが無いから男の子としても損は無いと思いますけど」 京太郎「そりゃあ確かにそうなんだが」 ネリー「私も乗る!」ピョン 京太郎「危ないから乗るなバカ!」ヒョイ ネリー「あべしっ」コケッ ネリー「うぅぅ……痛ぁーい!」 ネリー「痛いよー!これはおんぶをしてもらわないと治まらないタイプの痛みだよー!」 ネリー「誰か背が高い人におんぶしてもらわないと痛すぎて痛いよー!」 京太郎「うぜぇ……」 メガン「ジャアネリーは私の背中に乗ってクダサイ」 ネリー「やったー!」 京太郎「んじゃ、俺たちこっちの方なんで」 明華「お疲れ様でした」 慧宇「また明日、です」 ネリー「バイバーイ!」ブンブン メガン「あまり背中で暴れないでクダサイ」 京太郎「慧宇、後で宿題のこととか聞くからよろしくな」 慧宇「はい、待っていますね」 ネリー「ねー、ネリーは?」 京太郎「授業すら聞いてないやつに何を聞くというんだ」 ネリー「寝てるんじゃないよ、マンガ読んでるんだよ!」 京太郎「それも悪いわ!」 ネリー「じゃあ明日からは寝る!」 京太郎「だからダメだ!」 智葉(…………) 京太郎(また部長の家に行くのか……親戚のおじさん?とかたくさんいて恐いんだよな、ドスも置いてあるし) 京太郎(ひょっとして俺が部長を連れて行ったらボコボコにされるんじゃないか……)タラー 京太郎(やべーよこえーよどうしよう) 京太郎(……まあ、こうやって部長の胸を堪能できるんだから役得だな)プイッ 智葉「……」 京太郎(やっぱり綺麗だなぁ……) 智葉(はぁ……) 智葉(つくづく自分が嫌になるな) 智葉(こんな演技でもしなければ甘えられない、なんて) 智葉(なんだかんだで私が男の背中に乗るのは初めて、か) 智葉(案外に心地がいいものなんだな……)ギュッ 京太郎「?」 京太郎(なんか力がかかった気がする?) 京太郎「んしょ、っと」トンッ 京太郎「あとちょっとなんで我慢しててくださいねー」 京太郎「ま、聞こえてないだろうけど」 智葉「……聞こえてるよ」 京太郎「のわっ!?」ビクッ 智葉「すまないな、わざわざこんなことをさせてしまって」 京太郎「いいっすよ、むしろこんな帰り道もアリかなって思ってました」 智葉「うむ……そうか」 京太郎「あっ!あそこの駄菓子屋でアイス買っていきましょうか!」 智葉「いや、私はいいよ」 智葉(待てよ、確かあそこは……) 京太郎「俺が奢りますよ!ハーゲンダッツでもなんでも!」 京太郎「すっみませーん!」タッタッ 京太郎「アイスくっださーい!」ガララ 京太郎「……あ」 顔に傷のついた人「あ゙あ゙ん?」ゴゴゴゴ 小指が無い人「……テメエ、お嬢に何してやがる」ズゥゥン 髪が無い人「覚悟はできてんだろうなぁ?」ボキコキ 京太郎「えっ、あ、あー……」 智葉「はぁ……」 京太郎「に、逃げろー!」 「「「待てゴラァー!!!」」」 ―――翌日 ネリー「キョウタロー、大丈夫?」 京太郎「ああ、大丈夫だよ……ははっ」ボロボロ 慧宇「どうしてもそうは思えないんだけど……」 カン! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「麻雀強くなりてぇ、どうすりゃいいんだ……」 優希「私にいい考えがあるじぇ!」 京太郎「知っているのか優希!」 咲「私も居るよ」 京太郎「咲!」 和「コーホー」 京太郎「和まで……!」 まこ「こ、これが友情パワーか」 京太郎「俺が優希、咲、和の中から相手に合わせて相性のいい奴をチョイスしておんぶ!」 京太郎「背後からそいつの指示を受けつつの闘牌!」 京太郎「おんぶドッキングで魔物並みの闘牌が可能!」 「「「「ゆゆうじょうぱぱわー!」」」」 久「何? おでん食べるギャグでもやるつもりなの貴方達?」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「地震警報で飛び出して怪我するってどんだけポンコツなんですか姉さんは」 健夜「ごめんね、不甲斐ないお姉ちゃんで」 京太郎「これからは気をつけてくださいね」 健夜「京太郎君に甘えられるならずっとこのままでもいっか」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 美幸「自分で歩けるってもー!」 京太郎「思いっきりくじいてましたから」トコトコ 美幸「行けるって…重くない?」 京太郎「めっちゃ軽いッス、麻雀牌ぐらい軽いっス」 美幸「ふざけないでよもー」 アハハハ モー モー 友香「…」 梢「…」 友梢「ドナドナドーナードーナー」♪ 美幸「牛じゃないわよもー!」プンプン 京太郎「うわっこれは暴れ牛だ!」 美幸「ちょっと!」 京太郎「はいはい暴れない暴れない、怪我が悪化しますよ」 美幸「…もー」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 照「京ちゃん迷惑かけてごめんね」 京太郎「困ったときはお互い様ですよ、照さん」 照(京ちゃん昔からかわらないなぁ)ギュッ 和(京太郎様は私よりあのチャンピオンの方がいいんでしょうか?) 和「どうしてあんなに鼻の下を伸ばしてたんですか?」 京太郎「別に鼻の下を伸ばしてはなかっただろう?」 和「どうなんでしょうね」 和(寂しくなる気持ちも察してほしいです…) 京太郎「俺にはお前しかしないんだからさ」ギュッ 和「あ…」 京太郎「俺ならこうしておんぶしてやれるからさ、いつでも頼ってくれ」 和「あ、ありがとうございます」 京太郎「少なくとも俺がこうしてる間は寂しくないだろう?」 和「はい///」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 宥「あったかくない…くすん」タンコブ 京太郎「なんで地震速報があったのに温室から出ようとしないんですかあなたは…」 京太郎「植木鉢が倒れてきてからじゃ遅いんですから。ホントに…それくらいの怪我で済んで良かったですね」 宥「……温室の植物が気になっちゃって」 京太郎「温室なら学校が修復しますってば」 宥「それもそうだよね。あはは」 京太郎「そうです。―んしょっと」グッ 宥「わわっ?!」 京太郎「あ、すいません。驚かせちゃいましたか」 宥「う、うん。ちょっとだけ…」アッタカクナーイ 京太郎「しっかし先輩。ホースに足とられ転けーの、転けた拍子に頭打ちーの、マフラー濡れーので散々な一日でしたね」 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 京太郎「照さんって年々高見沢に似てきてますよね」 照「って、言われたのでギター買ってきた」 照「音楽界でも頂点を目指す」 京太郎「俺はベース」 深堀「私がド(ラ)ム」 咲「けい おんぶっ!?」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6998.html
h80-01 京竜怜 h80-02 京淡 h80-03 京・清澄 h80-04 京霞(霞in清澄) h80-05 京咲 h80-06 京咲 h80-07 京真佑子 h80-08 京睦 h80-09 京和 h80-10 京霞(霞in清澄) h80-11 京恭 h80-12 京・宮守+葵 h80-13 京優 h80-14 京塞 h80-15 複数 h80-16 複数 h80-17 複数 h80-18 複数 h80-19 京裕 h80-20 京裕 h80-21 京・阿知賀 h80-22 京咏 h80-23 京・清澄 h80-24 複数 h80-25 京恒 h80-26 京咲照 h80-27 京淡 h80-28 複数 h80-29 複数 h80-30 京塞 h80-31 京和咲優 h80-32 京照 h80-33 複数 h80-34 京霞(in清澄) h80-35 京霞(in清澄) h80-36 京・白糸台 h80-37 京美穂 h80-38 京穏憧 h80-39 京穏 h80-40 京・阿知賀 h80-41 京和咲優 h80-42 京智葉 h80-43 京霞(in清澄) h80-44 複数 h80-45 京・白糸台 h80-46 京・清澄 h80-47 京淡 h80-48 京照 h80-49 京菫 h80-50 複数 h80-51 京照菫 h80-52 京和 h80-53 京咲 h80-54 京和 h80-55 京咏 h80-56 京久 h80-57 京・白糸台 h80-58 不明 h80-59 京久 h80-60 京・臨海 h80-61 京和 h80-62 京霞(in清澄) h80-63 京恭 h80-64 京久(京太郎三年設定) h80-65 京・宮守 h80-66 京・清澄 h80-67 京淡 h80-68 複数 h80-69 京霞 h80-70 京・龍門渕 h80-71 不明 h80-72 京霞(in清澄) h80-73 京照 h80-74 京・白糸台 h80-75 京照 h80-76 京照 h80-77 京照 h80-78 京桃 h80-79 京咲 h80-80 不明 h80-81 京蒔 h80-82 京・清澄+桃子 h80-83 京桃 h80-84 京はやり h80-85 京憧 h80-86 京・清澄 h80-87 京菫 h80-88 京華菜 h80-89 京・清澄 h80-90 京霞(in清澄) h80-91 不明
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3427.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1375789615/ 白糸台には王者としての責任と矜持がある。 大会が近づくに連れて練習内容はより濃密に、より加熱していくようになる。 大会出場者ではない京太郎であったが、だからといって練習をしなくていいわけではない。 むしろ周りが加熱していっているのに当てられて、京太郎も自然と練習に熱が入っていく。 気がつけば日も暮れて、菫の合図とともに意識を帰宅に向けると、思った以上の疲労が全身に積もっているのが分かった。 京太郎「あー、今日は疲れたなー」 淡「あーもー、どうしてこの私がここまで練習しなきゃいけないのよー」 京太郎「うるさいぞ一年生。そんなこと言いながら楽しんでいたじゃないか」 淡「100年生ですー。麻雀は好きだけど練習は嫌いなのー」 この場合どう違うんだと京太郎は思ったが、雀卓に突っ伏してぶーたれている淡を見ていると 突っ込むのも無粋だろうと思ってそのままにした。 疲労感で頭が重い。京太郎も淡に倣って机に突っ伏したくなったが みっともないし怒られそうだから我慢して帰宅の準備をする。 菫「おい、大星。グダグダしてないで帰る支度をしろ、遅くなっちゃうぞ」 淡「うにゅー、スミレがこんな時間までするからでしょー」 菫「まぁ、それは仕方ないと思ってくれ」 京太郎「全く、淡は。ほら、鞄持ってきたぞ」 淡「おー、くるしゅーないぞきょーたろ。ついでにお菓子なぁい?」 京太郎「ねぇよ」 菫「疲労時の糖分摂取は確かに悪くない。うん。悪くない。疲れてるし、うん、仕方ないよな……」 京「持ってませんよ?」 菫「そうか……」 淡「テルーから貰ってきてよー」 京太郎「えー、くれるかな? てか淡が行けよ」 菫「いいアイディアだ。大丈夫、須賀ならいける。私達よりも須賀が行けば確実だ」 京太郎「ちょ、照さんそこまでケチじゃないですよ?」 菫「それは分かってる、だが私や大星が行けば少ししかくれない。須賀が行けば袋ごとくれる」 照「多分私は今ひどい侮辱を受けている」 京太郎「あ、照さん」 照「あげるから。言ってくれればちゃんとあげるから」 そう言うと照は鞄からポッキーの箱を取り出し、封を開けると、 二袋入っている片方を菫に渡し、残った方を開けてポリポリと噛りだした。 菫「ありがとう照。照様」 淡「私にもちょーだいよ~」 照「菫に分けてもらって。で、はい、京ちゃん」 京太郎「ありがとうございます……って、え?」 差し出されるポッキーを受け取ろうとしたら照はなぜかそれをさせないように手を引っ込めた。 京太郎が戸惑っていると、中途半端に伸びた京太郎の腕を避けるように、ポッキーが眼前に再び差し出された。 照「ん」 京太郎「て、照さん……」 照「早く。手、疲れる。ん」 京太郎「えっとー。はい、ありがとうございます」 急かされ、仕方なく京太郎は差し出されたポッキーを口にする。 さり気なく淡の方を確認してみると、先程までダラダラしていたのはどうしたのか、 ガタンと音を立てて立ち上がり、照に食って掛かった。 淡「テル! 何してるの!」 照「? お菓子あげただけ」 淡「フツーに手渡せばいいでしょっ。きょーたろは私の彼氏なんだよっ?」 照「知ってる。ごめん、ついやっちゃった」 淡「や、やっちゃったって……」 照「昔の。長野にいた頃の癖で」 ただの癖だから気にすることはない。 そう言われてしまうと淡としても何も言えなくなる。 照と淡では京太郎に対する年季が違う。 そうやって昔の名残まで束縛するのは淡としても本意ではないし、相手を締め付けるような恋愛はしたくない。 だが照はそれを分かっているのかいないのか、時折こうして容赦なくそこを突いてくる。 京太郎には淡という恋人がいるし、私自身気にしていないんだけどーという態度を取りつつ、 京太郎にアプローチという他ない行為をするのだ。 淡の髪がふわりと浮いてきた。何か言い返したいけど何も言い返せず、 鬱屈が溜まっているんだろうな、と京太郎は察した。いつものことだ。 京太郎が照に対してもっと線引をするべきなのだろうが、 困ったことに京太郎もあまり深く考えずに照のことを受け入れているので始末に負えない。 何はともあれ何もしない訳にはいかない。 京太郎「うっし、とりあえず帰ろうぜ淡」 淡「うー。でもぉ」 京太郎「さっさとしないと置いてくぞー」 淡「あ、待ってよきょーたろ~」 京太郎が淡の鞄も持って出てしまったので必然、淡も京太郎についていくしかない。 一瞬照に恨みがましい目を向けたが、京太郎に駆け寄って追いつくと、 その腕に抱きついてぶら下がるように身を寄せて歩いて行った。 菫「……修羅場に置かれる身にもなってくれ」 照「…淡が気にしすぎ」 菫「そうかぁ? 照も遠慮が無さすぎだろう」 照「昔からやってきたことなのに邪推するのはおかしい。淡が京ちゃんが信じきれてない証拠」 照「京ちゃんが淡をフォローしきれてない証拠」 菫「ほぅ、恋愛未経験者だと思っていたが、照からそんな言葉を聞けるとは」 照「経験ならある」 菫「なんだと!?」 照「たくさん読んできたから」 菫「さて、帰るか……」 一方、帰り道を歩いている京太郎と淡。相変わらず淡は京太郎の左腕にぶら下がるように抱きついて離れない。 京太郎は淡に選ばれたと思っている。淡は見た目は可愛いし、不遜な態度も見方によっては愛嬌がある。 基本的に人懐っこいし、そのくせ麻雀の腕は恐ろしく強いのだから、相当モテただろうと思っている。 そんな雲の上の相手が凡夫極まりない自分と恋人なので、京太郎は「選ばれた」と思っている。 対して淡は、京太郎という難攻不落の要塞を陥としたとは全く思っていない。その防壁にようやく指をかけた、 程度にしか思っていない。淡はモテるか? 区分するならモテる方になるが、京太郎が思うほどではない。 それよりも京太郎のほうがよっぽどモテる。高倍率の競争をかいくぐって淡は京太郎の彼女の座を手にしたのだ。 淡の目から見れば京太郎は選り取り見取りの摘み放題なのだ。強く出すぎて機嫌を損ねるようなことは、絶対にしたくない。 京太郎「淡ー、いい加減ちょっと重い」 淡「重いってゆーなー」 そう言いつつ淡は素直に京太郎から身を離す。腕は組む程度にとどまり、二人は並んで歩いている。 淡「ねぇ、きょーたろ。私、重いかなぁ?」 京太郎「え? いや別に重くないんじゃないか。そりゃ片腕で支え続けるには辛いけど、それが出来る時点でむしろ軽いと思う」 淡「いや、そういうわけじゃないんだけど……」 淡と京太郎では重いのニュアンスが違うようだ。 察せなかった京太郎に対して淡はこれ以上話を続けるかどうか悩むのに対し、 言い淀んでいる淡を見て京太郎は何を考えたのか、淡の前に進み出て背を見せてしゃがみこんだ。 淡「へ?」 京太郎「重くねーから。ほら、おぶされ」 淡「え? へ? なんでそうなんの?」 京太郎「いや、淡が気にしてるみたいだし」 淡「だからそういう意味じゃ……ていうか何でおんぶなの? 恥ずかしいよっ」 京太郎「う、そうか。いや、さっきからなんだか疲れてるみたいだしさー」 淡「それはそうだけど、おんぶはないよ」 選択肢を間違ったか。いくら何でも突飛すぎたかなと後悔する京太郎。 しかし体重を気にしてる淡に対して他にフォローが思い浮かばなかったのだった。 京太郎は立ち上がり、バツが悪そうに適当に言い訳をする。 京太郎「そか、悪いな。へへ、慣れないことはするもんじゃないね」 淡「……テルーにも」 京太郎「ん?」 淡「テルーにも、こういうことするの? その、昔みたいに」 京太郎「しないしない。そりゃ怪我とかしたんなら話は別だけど……その……淡だからするんだよ」 思いがけず。 思いがけず、淡が聞きたい言葉をスラっと出す。 淡だから。 トクン、と一つ高鳴りとともに淡は思わず一つ、前に踏み出した。 淡「じゃあ、して」 京太郎「え?」 淡「おんぶ、して?」 京太郎「いいのか?」 淡「うん……してほしい。きょーたろ、だから」 お返しとばかりに淡も言う。 相手の存在そのものを動機とするその言葉、なるほど中々心にクルなと、京太郎は胸の高鳴りを自覚する。 背中に相手の重みを感じ、両手に足が乗ったのを感じて京太郎はスックと立ち上がった。 京太郎「うわ、軽いな淡」 淡「そ、そう?」 京太郎「もっと食べたほうがいいんじゃないか?」 と、おもわず京太郎は淡のほっそりとした太腿を撫で回した。 それは暑さによるものかそれとも緊張によるものなのか、少しだけ湿っているようなそんな摩擦があった。 淡「ふっきゃう! きょ、きょーたろ、なにしてんのよ!」 京太郎「ごめん! つ、つい……」 淡「もう、いいよ……。あの、きょーたろは、もう少し、もちもちしたほうが好き?」 京太郎「え?もちもち?あ、あぁ、その、好きか嫌いか以前に、淡は痩せ過ぎじゃないかなって思っただけだ」 京太郎「太ってるかどうかは関係ない」 淡「そう……。きょーたろは、がっちりしてるね」 京太郎「まぁ、男だしな」 淡「鍛えてるの?」 京「運動が嫌いなわけじゃないけど、特別なことはしてないなぁ」 淡「そっかぁ」 女所帯の麻雀部に居続けたせいか、あまり異性と深く交流のなかった淡にとって、やはり男の体は物珍しい。 軽々と自分を持ち上げられたことも、この思った以上に大きくてたくましい背中も。短いこのお揃いの金髪も、ほのかに香る体臭も。 知らなかった。 京太郎のこの感触も匂いも普段何しているかも好きも嫌いも。 全く恋人らしい会話をしてきていなかった。 淡も京太郎も、互いのパーソナルを把握していなかった。 それがわかると、淡は喉から切ないものが込み上がってくるのを感じた。 淡「きょーたろ~」 京太郎「なんだ~」 淡「好きぃ……」 京太郎「…………」 淡「大好き……」 京太郎「俺も、大好きだよ淡」 淡は京太郎の首に回している腕を少しきゅっと強めに抱きしめた。背中に顔を埋め、声が自然と涙声になる。 こんなに相手のことを知らないのに、どんどん気持ちが溢れてくる。情けないのに愛おしくてしょうがない。 京太郎もまるで哀願するかのような淡の切ない告白を聞いて、自分を殴りたくなっていた。 淡から選ばれた? 雲の上の相手? そう思い続けて煮え切らない態度をして、 挙げ句の果て淡を差し置いて他の女ともなぁなぁの付き合いをして。 淡と付き合ったのはどうしてだ? 告白されたから? 違うだろう、好きだから恋人になったんじゃないのか? 俺は、今まで淡に恋人らしいことをしてきたか? 遠慮ばかりして、淡は今までずっと待っていたんじゃないのか? 京太郎「淡ー」 淡「なによぅ」 踏み出さなければならない。自分の気持を。 きちんと、もっと誠意を込めて応えなければならない。淡の気持ちに。 京太郎「顔、上げろよ」 淡「むー」 心臓がバクバク暴れまわってうるさくて仕方ない。心臓に、ジャマをするなと言いたい、少しは静かにしろと。 淡を支えている手が湿り気を帯びてきているのが分かる。口の中がどんどん乾いてきて、瞬きも急速に増えてきている。 行け、行くんだよ、意気地なし野郎。女を泣かせて恋人気取り、まったくもってふざけるんじゃねェ。 京太郎「キス、してぇ」 淡「ふぇ」 京太郎は立ち止まる。淡に向かって振り返る。今までかけられなかった言葉の何倍の気持ちを込めて、ひたむきに彼女を見つめる。 淡は驚く。ぼうっと京太郎を見つめる。微かに感じる彼の震えやその緊張した面持ちを見て本気なのだと実感する。 淡は肩に乗せている手をぐいっと押し付け、京太郎の手に乗せている足も踏ん張って、身を乗り出して京太郎に顔を近づける。 吸い込まれるように、二人の唇が触れ合う。 京太郎「ん」 淡「ふ。んっ」 数秒。そして離れ合う。至近に迫った互いの瞳がそこにある。 京太郎の目には淡しか映っていないし、淡の目にも京太郎しか映っていない。 歓喜が膨れ上がる。 京太郎「もっと」 淡「きょーたろーーっ」 位置関係の都合上、京太郎から淡に迫れないのがもどかしい。京太郎は淡に催促しか出来ない。 だがその催促こそが淡を堪らなくさせる。今まで閉じきっていた城門が誘うように開かれているのだ。 淡は重心を上の方へずらす。おぶさると言うよりはのしかかるように、 京太郎の腰に重心を置く。すると淡は腰から上の動作範囲が大きく広がる。 肩においていた手を、まるで抱きかかえるかのように京太郎の頭に回す。 もう二度と逃さないとばかりに、強く抱きしめ、それ以上の気持ちを込めて京太郎の口に吸い付く。 京太郎「ん、ぷ、むぅ、ふぅ」 淡「むぅ、うー、あむ、まむ」 甘噛するように何度も互いの唇を啄む。もどかしさばかりが募っていた今までを払拭するが如く。 京太郎「ちゅ、は、むぅ、れろ、ちゅる、あぅる、れう」 淡「ん、む、はぁ、るる、ぅる、くちゅ、りゅる」 高まる気持ちを満足させ続けていれば、互いの口が開き、舌の交換が始まるのは当然の事だった。 唾液の交換は想いの交換であると言わんばかりに、二人の舌は躍動し、口内を蹂躙し合った。 京太郎「んー………むー………」 淡「ちゅ………ん………」 そしていつしか二人は唇を半開きのままピタとくっつけあい、空気すら漏れないその密室の中、静かに互いの舌を舐め合うようなった。 それを、いつまで続けただろうか。時間を忘れた代償は、淡の疲労だった。 乗り出す姿勢に疲れ、淡は「ごめん」と呟いて残念そうに口を離して、京太郎に身体を預けなおした。 興奮冷めやらぬ二人。しばし荒い息のまま立ち尽くすと、京太郎は歩きはじめた。背中に淡の鼓動を感じる。 京太郎「俺さ」 淡「うん」 京太郎「もっと大事にするから」 淡「…うん」 京太郎「ホント……」 淡「……」 京太郎「淡のこと、好きなんだよなぁ」 淡「……私も、だよ?」 まったく。まったくこの男は。 どこまで胸を切なくさせればいいのか。 唇が寂しい。この鬱積した思いを伝えきるのに、あの程度のキスではまだまだ足りない。 淡は、せめてとばかりに京太郎の項に唇を這わした。 淡「きょーたろ~……」 京太郎「くすぐってぇ」 京太郎はそうは言うものの、その声の響きに喜色が滲んでいるのは隠しようがない。 淡はそれに気を良くして唇だけでなく、歯を使って齧ったりしてみる。 淡「あむ、あむ」 京太郎「なんですかー淡さんは甘いさんでしたかー」 淡「かぷかぷ。ふふ、どーだろーね」 京太郎「それともあわニャンですかー。いや、ゴロが悪いな。あわワン。うん、淡って犬っぽいし、あわわんの方がいいかな」 淡「どこが犬っぽいよ」 京太郎「うーん。強いて言うなら……髪?」 淡「髪?」 京太郎「あぁ。さっきから腕に巻きついたりうねうねしたり、動きが激しい。どうなってんのこれ?」 淡「うぇぇ!? ばっ、どこ見てんのよ!」 京太郎「ぃって」 感情がそこに現れてるとは思いもしなかった淡。照れ隠しに強めに噛んでしまった。 とはいえまだ甘噛の範疇だ。ただ不意打ち気味になってしまっただけで、京太郎としては驚いてしまっただけである。 しかし淡はそうは取らなかったようだった。 淡「あ、ごめん! きょーたろ……痛かった? ごめんね……ん」 一転、しおらしく謝って、痛みを紛らわそうとしているのか、噛み付いた部分をペロペロと舌で舐めはじめた。 京太郎「いや、別に大して痛くないんだけど……」 淡「ん。れも、ごへんね」 京太郎「ちょ、ちょっと、淡」 しつこいくらいに肌を舐めていた淡だが、彼女の中で昂ぶるものがあったのか、だんだんその範囲が広がってきていた。 首筋を集中的に舐めていたのが、項、背中と来て、鎖骨まで行き、今では耳を咥えられている。 京太郎の耳に、直接。淡の艶めかしい舌の動きが、その粘ついた音が、伝わる。 京太郎「う、く。淡、やばいって」 淡「んー。はにが?」 京太郎「その……やばいんだって」 この刺激によってもたらされる昂ぶりは、女にとって危険なものだ。 事実、京太郎は腰が熱くて疼いて、段々臨戦態勢を整えつつあるのを自覚している。 先ほど大事にしたいと誓ったのに。 京太郎「このままじゃ……淡を大事にできなくなる」 淡「んー? ほーゆーほとなのかなー?」 京太郎は耐えようとしているが、淡はすでに完全に恍惚として、京太郎を味わうことに余念がない。 気の抜けた淡の言葉に、京太郎の抑圧感も抜けて出て行く。 頭がボゥっとする。少し投げやりな気分だ。 このまま突っ走ってもいいのか? いいだろう、淡はもう突っ走ってる。 弱い思考でそう言い訳し、京太郎は淡の足を支えている手を、その腿の内側内側へと這わせていく。 淡「ん、あ、その、きょーたろ?」 敏感な部分に手を添えられ、流石に淡も口を離して反応せずにはいられなくなる。 淡「きょー、そこは、あ、えっと」 戸惑う淡をよそに、京太郎の手はついに淡のパンツの縁に触れる。 この奥、数センチの先に。淡の、禁断の領域がある。 それを思うと、いよいよ京太郎の頭と腰に、静止の効かない暴熱が宿る。 少し止める。いいのかな? と思う。しかし触れたことに対して淡はリアクションをしたが、 止めたことにリアクションをしないので、このままいいか、と判断する。 淡「あ、んっ……!」 下着の下に指を潜り込ませると、真っ先に感じたのは信じられないくらいの熱さと、ぬめりだった。 ぬめり。ぬめり? 湿り気というべきか。少し指を動かしてみる。 淡「んにゅ、ふっ……」 淡が気の抜けた喘ぎを上げる。動かした指はヌルヌルと抵抗らしい抵抗もなく下着の中を動いた。 汗だったらこういう感触はしないだろう。となると、まさか失禁したということもないだろうし、残りは……。 淡「あ、きょーたろ、そ、そこは、はぁっ」 淡「や、指、爪がひっかかって、あぁ、撫でて……!」 淡「ひ、ぃ、速いよ、もと、もっと、ゆっくり、ひぃぁ」 淡「え……い、入れてる……?」 淡「あ、や、あ、ん、ふ、ふぅ、ふうぅ、は、や、とめ、て、ぇ」 淡「はぁー、はぁー、い、いつまで、指入れて……あ、動かさな、い、で……」 淡「あ、あぁ、あああぁぁぁぁ広げて……いやぁ」 淡「っ!! だ、だめ! きょーたろ、もうぅやめてぇ!!」 夢中になって淡の中心を弄り回していた京太郎は淡の悲痛な叫びを耳にして、ようやく我に返った。 淡は京太郎の肩を強く掴み、小刻みに震えて荒く息を付いている。 淡「もう、やめてきょーたろ……うぅ」 京太郎「あ、う、ごめん、淡……」 淡「あ……」 詫びとともに指を引き抜くと、淡からどこか切なげな声が漏れる。 京太郎の中は今罪悪感の暴風雨だ。やってしまった、一気にやってしまった。 つい先程ファーストキスを済ませたばかりというのに、興奮と情欲のままに淡を汚しかけた。 いや、もう汚したと言ってもいいかもしれない。少なくとも、 掴まられている肩の痛みと背中から伝わる震えは、十分に淡の恐怖を代弁するものだった。 精神的に追い詰めてしまったのは、間違いない。 京太郎は、今すぐ淡を放り出して逃げてしまいたい衝動に駆られた。 それを、唇を血が出るほどに噛み締めて押し殺し、絞りだすような声で、 京太郎「……ごめん、淡。本当に…」 京太郎「ホントに、申し訳ない……もう、しないから……」 淡「そんな……」 先に止まらなくなったのは淡だ。調子に乗って相手を弄んだのは自分が先ではないか。 京太郎は事前に警告した分、非はないはずだ。 それよりも何よりも、自分の制止の声で、京太郎がビクリと身を震わせ、 今にも罪悪感で潰されそうな京太郎の謝罪の声を聞くほうが、淡いには堪えた。 淡「あの、嫌じゃなかったから……」 京太郎「え?」 淡「その、びっくりしただけだから」 淡は再び京太郎の首に手を回し、ぎゅっとしがみついた。 仕切りなおした形になってはいるが、淡いの中に灯った熱が失せたわけではない。 ここから先はもう止められなくなる。否、そもそも自分には止める気がないのだと、淡は自覚している。 京太郎の耳に呟く。 淡「ここじゃ、嫌」 淡「ねぇ、京太郎……たしか、アパートに下宿してるんだよね……」 京太郎「あ、あぁ。そうだけど」 淡「……泊めて、よ」 淡は京太郎が息を呑んだのを感じた。 京太郎も、淡の覚悟を感じた。ならば、それに答えるのが男だ。 京太郎「今度こそ、大事にするからな……」 淡「ううん」 京太郎「少し、乱暴にするかも」 淡「うん。よろしく、おねがいします……」 夜の道を二人は歩いて行く。所々にある街灯が二人を照らすと、互いの金色の髪が混ざり合って一つになるようだ。 京太郎が後ろを見遣る。淡と目があって、彼女は顔を赤くしながらはにかむ。 京太郎は淡を抱え直し、もう絶対に不安にさせるものかと決心した。 淡「あー疲れたー。ふぃ~~お疲れ様ー」 菫「ほら、大星だらけるな。後片付けが残ってるんだから」 淡「あいあいー」 大会は間近だ。今日も今日とて白糸台麻雀部は夜遅くまで練習に励む。 全身が心地よい疲労感に包まれている。一仕事終えたときに感じるあの特有のかったるさだ。 ふと京太郎の方を見ると、機材を片付けながら照にお菓子を餌付けされているのが見えた。 淡(器用だなー) ぽてぽてと京太郎の方へ歩む。腹が減っているのは淡も同じなので、 淡「テルー、私にもひょーらい」 照「ん? ん」 大口開けた淡に、照は淡々とクッキーを入れた。 淡「むふふ、あまーい。もっともっとー」 照「ん。淡を餌付けしてるみたい」 淡「あわわんだよ! にゃー」 京「どっちだよ」 淡「あ、きょーたろ。終わったの?」 京「おー。帰るか」 淡「むふふ。今日はおんぶして欲しい気分かも」 京「……はいよ。俺は、毎日でもおんぶしてやりたいくらいだけどな」 淡「も、もー。そんなんじゃ私の身がもたないよー」 という会話をしながら二人は腕を組み合って部室を出て行った。 照「淡は身体が弱いのかな。最近よくおんぶされて帰ってるよね」 菫「運動不足かもしれないな」 尭「え、いや、あれは多分……」 誠「えー、想像ですが、多分『運動』はしてるんじゃないですかね……」 照「? まぁ、とにかく……仲良くなってよかった」 夜の帰り道、重なりあった二つの金色がある。 長い金色が短い金色の上に乗っかって陶酔している。 「ふふ。ねぇ」 「どうした?」 「おんぶっていいね」 「うん。おんぶっていいよな」 カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3869.html
京太郎が白糸台に居て、全国優勝した後です 白糸台高校 「優勝おめでとうございます!」 「目線お願いします!」 「何か一言!」 照「はい。私も目指していた…」 照(面倒くさい……やっと学校に帰ってきたのに……優勝したの京ちゃんに褒めてほしいのに) 部室 照「やっと終わった……もう遅いし誰もいないよね」 京太郎「あ、照さん」 照「京ちゃん?もう誰もいないのに……」 京太郎「他の人は遅くなりそうだったんで先に帰ってもらいましたけど、照さんだけ残して帰れませんって」 照「京ちゃん……」 京太郎「ちょっとこっち来てもらえます?」 照「?」 照「これ……」 手作りケーキ 京太郎「新作のお菓子です。優勝記念に大きいの作るつもりだったんですけど、照さん試食ということで」 照「いいの?」 京太郎「頑張ったご褒美ですよ。決勝も個人戦も、すごかったですよ」 照「……ありがとう。うん、美味しい」 京太郎「良かった。やっぱりこういうはっきりしたご褒美があるっていう方がうれしいですよね」 照「うん……京ちゃん」 京太郎「はい?」 チュッ 照「ありがとう、大好き」 照の優勝賞品は京太郎だったとか カンッ!!